役所に電話してみる。
蛙主は、側溝の中に隠れるようにしていた。
「何この蛙?」
ブルドッグは蛙を不思議そうに見ている。
蛙主は犬に見つめられて、全く動かなくなった。
「蛙さんは、蛙主さんと言って、ここらへんの偉い化け物さんなのです。」
「あらそうなの。私、外の化け物事情には疎いの。」
蛙主はまだ、動けない。
「どうしたんですか?蛙さん?何もしゃべらないけど。」
「その犬が怖いのじゃ。」
「あら、失礼ね。こんなカワイイのに。あんたみたいなまずそうなの、襲って食べたりしないわよ。」
「ここの上に犬はワシを食べようとしたぞ。信じられるか。」
「あいつは、あいつ、私は私。あんな下品そうな犬と一緒にしてもらっては困るわ。」
朋は犬を道路に下ろし、蛙主を捕まえ、頭に乗せる。
「これなら、大丈夫でしょ。犬さんは歩いてくださいね。」
「仕方無いわね。感謝しなさい。この私が歩くのですから。」
「なんじゃ。このお高く留まっている犬は。」
「さあ。ところで、蛙さんは、何をしてるんですか?」
「ここの坂道の上に犬が、化け物の通行を妨害しているとクレームがあってなぁあ。何とかしてくれと要請があって、話し合いにきたのじゃが、問答無用で食われかけて、ここまで逃げて来たのじゃ。」
「役に立たない化け物ね。」
「お主が何とかしてくれるなら、お主でもかまわんのだぞ?」
「私があんな凶暴そうな犬に勝てると思って?」
「ブルドッグは、元々、格闘犬じゃろ。」
「幾ら格闘犬として品種改良されたとはいえ、限度があります。」
「ところで、どうするつもりなんですか?」
「そうじゃなぁあ。今思案中じゃ。」
「思案中ですか。」
「戦力を集めれば、倒せない事はないんじゃろうが。あれは普通の犬なんでなぁあ。下手に我々が倒すと人間が化け物退治をはじめる可能性があるからのう。そうは言っても、ここは化け物達にとっては山と街を繋ぐ重要な道じゃから、このままにも出来んし。」
「あのー。役所に電話してみるのはどうでしょ?」
「人間に頼るの?」
「ただの野良犬がうろついて危険な場合、役所が何とかしてくれるって聞きました。」
「まあ、それしかないかのう。」
朋は携帯電話を持ってないので、学園まで行き、学園内にある公衆電話の処までいき、役所に電話をかける。
「あのー役所でしょうか?野良犬がうろついてとても危険なので何とか。あ、ハイ。保健所の方にですね。」
朋は公衆電話の受話器を下ろす。
「どうじゃった?」
「直接、保健所の方にかけなおせだそうです。」
朋は保健所に電話をする。
「あのー。保健所でしょうか?はい、野良犬がうろついていて危険なので、ええ。そこです。はいはい。」
朋は受話器を下ろした。
「今度はどうだったの?」
「朝から、電話があって、一度行ったそうですが。その時は犬が見当たらなかったって。明日もう一度来るそうです。」
「ええ。だったら、私はどうなるの?」
「ここで、野宿でもすればどうじゃ?」
「イヤよ。野宿なんて。」