↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

嗜好

作者: 嚙草
掲載日:2026/10/04

ポツッ、ポツン、ポツッ、


あ、これ? 何食べてるか、気になる?


どうしようかな、話そうかな、


まあでも、君に聞かれても構わないか、


えっと、これね、家内の爪。


甘辛く煮たの、生姜醤油で。ちょっと香ばしくて美味しいよ。


え、他人の爪食べて、気持ち悪いって?


でもね、これって個人の嗜好の範囲だと思うんだよね。


だって、他人の爪、食べちゃいけないって法律、どこにも無いの。


これ、調べたから確か。


いや、そりゃ、私だってね、最初からこんなゲテモノ好きだったわけじゃなくて。


でもね、ある時、どうしても食べなきゃいけないものができちゃって、


それから毎日、肉、肉、肉。


肉ばかり食べる羽目になって、さ。


だって家にある冷蔵庫じゃ入りきれなくて、でもどんどん痛んでいくし。


こっちも必死だったんですよ。


まあでも、熟成肉ってあるでしょ、ちょっとその味が、わかったかもです。


しかしそうは言っても、毎日肉続きなのは変わらなくて、少々飽きてしまったのね。


だから焼肉の通がこう、ホルモンとかタンとかにこだわるようになる気持ち、よくわかった。


あのホルモンのね、裏に脂肪がみっちりとついてるやつを、フライパンでこう炙るとね、


自分の脂でじゅわっと揚がってね、端がカリッと焦げて、でも身はムチムチみずみずしい歯ごたえを残していて、


噛むとこう、肉汁の旨みが口中に広がって。


でもまあ、これも楽しいのは最初だけ。知ってる? 小腸って長いの。全然食べ終わらなくて。


でもとにかく、食べに食べた。おかげでしばらく、肉も内臓も見たくなくなったね。


でも最後に残った。皮とか骨とか歯とか、食べにくいところが。


いや、食べた、食べましたよ。


だってこうなってくると、残しちゃ悪いじゃない。バチが当たりそう。


だからいっときはずっと噛んでた、皮をね。家でも、仕事中も、くちゃくちゃ。


おかげで顎が張って仕方がなかった。


でも骨と歯はさすがに無理。


だからほろほろに砕けるくらいになるまで煮込んだの、3日くらい。そうしてスープにして飲んじゃった。


あとはグズグズに潰して、海に撒いたの。夜明けに堤防に行って、釣りするふりして、コマセ(撒き餌)代わりにして、ね。


それが面白いの、結構アジが釣れちゃって。だからその夜はアジフライ三昧。肉ばかりだったから美味しかったのなんの(笑)。


え、髪? いやあ、髪はさすがに食べられなかったよ。


口に入れた時の感触、あれ最悪だよ?


だから客の髪に混ぜて処分しちゃった。


まあ、美容師の夫に髪整えてもらった、って考えればいいんじゃない?


え? 今僕が話したこと、誰かに知られたらって?


いやもう何も残ってないから、大丈夫。


でもね、ようやく全部食べ終わったのに、そうなってみると、なんかこう、物足りなくてね。


こう、口さびしいというか、物足りないっていうか。


だからなんだよね、君。


いやさあ、最初君を担当した時から思ってたんだけど、


君って家内にちょっと似てて、


頭の匂いも、首筋の匂いも似てて、


だからさあ、味も似てるんじゃないかって、


そう思ったらもうなんか我慢できなくて、


それで今日、こうしてうちに来てもらったってわけ。


いや、そんなに暴れなくてもいいよ、そのゴムバンド丈夫だし切れないし。


大丈夫、最初は痛くないよ。


だって爪、爪切るだけだし。


(終)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。