第三話 凶悪サソリ
微妙な空気が流しながら、二人は漸くイーヴィルスコーピオンの棲家と思われる洞穴についた。異様に禍々しいオーラに思わず、テリーは足を震わせる。十代の頃、初めて漁船に乗った時以上の恐怖が彼の脳内に駆け巡る。だが時既に遅く、彼の全身の細胞がSOSを発した時にはイーヴィルスコーピオンが巣の中から飛び出してきた。その姿はブロンズの鎧の様な色の分厚い鱗とまばらにある桃色の斑点、血走っている見る物を突き刺す目、毒々しい緑の液体を滴らせる尻尾の毒針針、強靭そうなイカつい鋏と全ての特徴の見る者を恐怖させる物だった。
「うおっ!なんつー覇気だよ。」
そう言うが、ロイは右腕に青いオーラを纏わせる。オーラ炎の様にメラメラと熱くゆらめいている。
「ギシャア!」
イーヴィルスコーピオンは彼目掛けて尻尾を伸ばした。
「オラァ!弱いな!」
ロイは反撃としてただ殴った。碌に構えもできていない子供の喧嘩殺法でしかない杜撰な鉄拳にオーラをただ乗せただけなのに、いとも容易くイーヴィルスコーピオンの頑丈な鱗を剥がして針に滴っている毒を吹き飛ばした。
「ロイ!強いんだな…お前は。その年齢で能力に目覚めてるとはな。」
テリーは彼の強さを目の当たりにして、少し顔を引き攣らせていた。
「当たり前ですよ。聖騎士になるにはこれ位の強さは最低限なくちゃ。」
ロイはご機嫌な顔で振り返る。並大抵の大人ですらも震える強さを持ちながらも、純粋無垢な子供の姿がそこにはあった。
イーヴィルスコーピオンは尻尾を自己再生した後に酸を泥と草だらけの地面に向けて発射し、溶かしてできた穴に勢いよく入る。腐ったタマゴみたいな強烈な匂いが充満し、2人の鼻が刺激される。
「ヤツは逃げるつもりなのか!?」
「いえ、そうではありません。完全にオレらをマークし、地面から奇襲攻撃を狙っています。モグラやミミズと違ってサソリは穴掘りのスペシャリストじゃないから分かりやすい。」
ロイの返答が答えである事を示す様に、強烈な匂いは増すばかりだ。テリーは彼の知識と洞察力に感心したが、自身の死が脅かされる恐怖が何よりも勝っている為に素直に褒める事はしなかった。
「イーヴィルスコーピオンの毒特有の腐ったタマゴみたいな独特な匂いというのは〜〜〜〜〜〜で出来ていて〜〜〜」
ロイはそんな事に薄々気付きつつも、知識自慢をしたかったので長々と解説をし始める。おおよそ魔物の討伐をしにきた者の立ち振る舞いとは到底思えない。
「ほらね?さっきのオレの推測合ってましたよね?」
「オレの能力〈蒼焔牙〉は青い炎を生み出す能力。お前の様なオレの前に立ちはだかる全ての敵を滅殺する為の物さ。」
サソリの恐怖を掻き立てる為に左足を燃え上がらせている。熱気はさっきの右腕のパンチの比ではない。桁違いに熱い事の証拠にイーヴィルスコーピオンの鱗がドロドロと溶けている。
「バーニングメテオ!!!」
強烈な踵落としをロイは繰り出し、イーヴィルスコーピオンを倒した。
「オレは聖騎士になる者、こんな所で足止めくらってたらワケねぇぜ。」
ロイは安心し、ため息をついてぼやいた。




