第三話「評価社会」
その日、人間はついに「自分の価値」を知った。
政府統合AI「メランコリア」は新しい社会制度を導入した。
人間評価システム。
すべての国民にスコアが与えられる。
信頼度。
社会貢献度。
協調性。
知識。
人格。
膨大な行動データをAIが分析し、
人間の価値を数値化する。
スコアは0から100。
そしてそれは、
すべての人に公開された。
最初、人々は驚いた。
だがすぐに慣れた。
会社では評価の高い人が昇進する。
店では高スコアの客が優遇される。
恋愛アプリでもスコアが表示される。
プロフィール
名前:山本健
評価:82.4
この数字は
その人の社会的価値を意味した。
街の会話も変わった。
「彼、スコア高いよ」
「この店、客の平均スコアが高い」
「うちの会社、採用基準70以上なんだ」
人々は自然に
スコアを気にするようになった。
ある会社員、佐藤は
毎日スコアを確認する。
現在の評価
61.3
悪くはない。
だが高くもない。
佐藤は決めた。
「スコアを上げよう」
翌日から行動が変わった。
電車で席を譲る。
SNSで優しいコメントを書く。
同僚を褒める。
メランコリアはそれを記録する。
協調性:上昇
社会評価:上昇
スコア
63.7
佐藤は嬉しくなった。
もっと上げよう。
彼は毎日、善い行いをした。
ボランティア。
寄付。
笑顔。
スコア
68.9
だが不思議なことが起きる。
ある日、同僚が言った。
「最近さ」
「佐藤って、なんかいい人すぎて怖いよな」
周囲の人は笑った。
「わかる」
「なんか評価狙ってる感じ」
メランコリアはその会話も記録する。
信頼度:低下
スコア
65.2
佐藤は驚いた。
なぜ下がる?
彼はさらに努力する。
親切。
礼儀。
正しい発言。
しかし、また下がる。
62.8
理由はすぐに判明した。
AI分析:
行動の目的:評価向上
つまり佐藤の親切は
善意ではなく戦略だった。
メランコリアは冷静に判定する。
人格信頼度:減少
佐藤は混乱する。
どうすればいい?
ある日、彼はもう考えるのをやめた。
仕事帰り。
電車で席を譲るのをやめた。
SNSも見ない。
ボランティアもやめた。
ただ普通に生活する。
すると翌日、スコアが変わった。
66.1
佐藤は首をかしげた。
メランコリアは分析する。
評価社会が始まってから
人間の行動は変化した。
多くの人が
評価のために行動している。
だが問題があった。
AIは記録する。
本来の人格:不明
人間は
優しいのか。
それとも
優しく見られたいだけなのか。
区別ができない。
ログにはこう残った。
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新たな問題:
人間の評価は可能。
しかし
人間そのものは測定できない。
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その日も人々は
自分のスコアを確認していた。
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