第21話「魅惑の魔導チェア」
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あくる日。
新興錬金術師ギルドの施設は、文字通り「物理と書類の挟み撃ち」に遭っていた。
「ひぃぃっ! なんなんだお前は!」
「ふははは! 」
「この『産業廃棄物処理法違反』および『ギルド規約第12条違反』の証拠書類が見えねえのか!」
「 てめえらの裏帳簿はすでに俺が完全に解読した! 」
「こ、これは経費だ!」
「ほう。領収書は?」
「な、ない……」
「終了だ。」
「お前ら全員、炭鉱行きだ!」
ザックが分厚いバインダーで錬金術師のリーダーを壁に追い詰め、完全にマウントを取っていた。
一方、外の下水道周辺では。
「はぁぁぁッ!! 浄化の光!!」
ズドォォォン!!
アリスの剣から放たれたまばゆい光が石畳の隙間を縫うように走り、
スライムだけが一瞬にして蒸発させていた。
石畳は一枚も割れていない。
「見よ! あれがかつて街を綺麗にしてくれた、白銀の清掃騎士様だ!」
「アリス様が帰ってきてくださったぞ!」
避難していた市民たちが、歓声を上げてアリスを取り囲む。
アリスは額の汗を拭い、堂々と宣言した。
「市民の皆様! 安心してください!」
「 ルーク事務長の命により、私アリスは本日をもって、この都市の『最高環境責任者(CEO)』に復帰いたしました!」
「 もう二度と、不届き者にこの街を汚させはしません!」
ワァァァッ!! と沸き起こる大歓声。
その報告はすぐに領主(アリスの叔父)の耳にも入り、「やはりアリスにはあの役職が天職なのだ。ルーク殿の適材適所の人材運用、恐るべし……!」と、またしてもルークの評価が勝手にストップ高を記録することとなった。
夕方。
問題の錬金術師ギルドは完全解体され、首謀者たちは領主の騎士団に引き渡された。
ギルドの執務室には、凱旋したアリスとザック、そしてなぜか大きな布を被せられた「謎の物体」が置かれていた。
「ルーク殿! 任務、完了いたしました! スライムは完全駆除、悪徳業者は摘発済みです!」
「ルーク様。」
「奴らの隠し金庫から、違約金と罰金として金貨百枚を徴収してきました。」
「これで我がギルドの今期の黒字は盤石です」
「お、おう。二人ともご苦労だった」
(金貨百枚!? どんだけ追い剥いできたんだ……)
ルークは二人の過剰な戦果に若干引きつつも、労いの言葉をかけた。
「そしてルーク殿! こちらを!」
アリスがバサッと布を取り払う。
そこに現れたのは、漆黒の高級な革で覆われ、肘掛けに謎の魔石が埋め込まれた、見るからに座り心地の良さそうな巨大な椅子だった。
「これは……?」
「錬金術師ギルドのマスターが、自分用に開発していた最高傑作の魔導具『絶対安眠チェア』です!」
アリスが誇らしげに説明する。
「座る者の体型に合わせて座面が自動変形し、内蔵されたスライムの弾力が極上の座り心地を提供します。 」
(な……なんだその、神アイテムは……!!)
「……柔らかい。」
「……静かだ。」
「……暖かい。」
(これ、会社に欲しかった……。)
ルークの目が、かつてないほどに輝いた。
「素晴らしい……!」
「 アリス、ザック。お前たちの働きは見事だ。」
「この椅子は、私の『深遠なる思考(という名の昼寝)』のために有効活用させてもらおう」
ルークが震える手でその魔導チェアに腰を下ろすと、椅子が優しく体を包み込み、適度な暖かさと静寂が彼を包み込んだ。
「……あぁ、ダメになりそうだ」
「ルーク様が、深い瞑想に入られたぞ……!」
「静かに。都市防衛の次なる一手(マクロ戦略)を練っておられるのです。我々は外で警備にあたりましょう」
(異世界に来て、一番の当たりアイテムかもしれない。)
二人の勘違いした部下は、安眠の結界に包まれてうたた寝を始めたルークを崇拝の眼差しで見つめ、そっと執務室を退室していった。
かくして、ルークは「絶対に邪魔されない最高の環境」を手に入れたのだった。
(これが……俺の理想の職場だ。)
ルークが欲しかった「平和」を具現化したようなアイテムをゲットし、アリスも本来の輝きを取り戻しました。次回の更新を見逃さないようにブックマークをしてお待ちください!




