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第20話「産業廃棄物(スライム)問題と、プロジェクト・チームの再結成」

王都からアリスが「専属秘書エグゼクティブ・アシスタント」としてギルドにやってきてから数日。

ルークは新たな頭痛の種に悩まされていた。


「アリス。お茶の温度は完璧だが……なぜフルアーマー(全身鎧)で淹れるんだ。カップが割れそうなんだが」

「秘書たるもの、いつ何時、ルーク殿への刺客が現れても即座に物理排除できるよう、常に万全の態勢を整えておくべきかと!」

「ここは平和な田舎のギルドだ。刺客なんて来ない」


王族のエリート騎士を秘書にするという贅沢プレッシャーに胃を痛めつつ、ルークは山積みの書類に目を落とした。

最近、ギルドに持ち込まれる「苦情」の書類が異常に増えていたのだ。


「ザック。この『商業区画での悪臭被害』と『路地裏でのスライム異常繁殖』のクレーム、今週だけで二十件を超えてるぞ。どうなってる?」


ザックが血走った目で資料をめくる。

「はっ! 調査によりますと、最近街の外れにできた『新興錬金術師ギルド』が原因かと。連中、ポーション製造の過程で出た有毒な廃液(産業廃棄物)を、処理費用をケチって下水道に不法投棄しているようです。その廃液を吸ったスライムが凶暴化し、街に溢れ出している状況です」


「……典型的な公害問題(コンプライアンス違反)じゃないか」


ルークはこめかみを揉んだ。

街中がスライムと悪臭に包まれれば、ギルドへの依頼も減り、最終的には領主から「お前らの管理不足だ」と責任を問われるに決まっている。放置すれば、ルークのぬるま湯(平穏なデスクワーク)が汚泥に沈む。


「だが、俺が直談判に行って錬金術師に毒を盛られるのも、スライムの粘液でスーツ(礼服)を汚されるのも絶対に嫌だ」


ルークは前世の「面倒な案件は、やる気のある部下に『プロジェクト』という名目で丸投げする」という必殺技を発動することにした。


「アリス、ザック。ちょっといいか」

「はいっ!」「なんでしょう、ルーク様!」


二人がルークのデスクの前に直立不動で並ぶ。


「この公害問題だが……放置すれば都市経済は完全に麻痺する。そこで、お前たち二人に『都市環境浄化クリーン・デトックス特別タスクフォース』の全権を委任する」


ルークはもっともらしい顔で、立ち上がった。

「ザック。お前は監査担当として、錬金術師ギルドの不正な資金の流れと不法投棄のエビデンスを完璧に押さえろ。一切の言い逃れを許すな」


「はっ! 奴らの帳簿を丸裸にし、書類の不備で地獄の底まで追い詰めてご覧に入れます!」

元チンピラのザックが、凶悪な笑みを浮かべる。


「そしてアリス。お前は実動部隊として、街に溢れた凶暴化スライムを『物理的に清掃』しろ。市民の安全と、清潔な路地裏を取り戻すんだ。……これは、お前がかつて担っていた『あの役職』の再始動を意味する」


アリスの青い瞳が、カッと見開かれた。

「……! かつての私の役職……最高環境責任者(CEO)ですね!?」


「そうだ。王都での政治ゲームなど忘れて、現場のトップとして存分に腕を振るってこい。ただし、街の器物破損は最小限にすること」


「承知いたしました! このアリス、CEOとしての誇りにかけて、街のゴミ(スライムと悪徳業者)を塵一つ残さず浄化してみせます!」


アリスは聖剣を引き抜かんばかりの勢いで敬礼し、ザックと共にギルドを飛び出していった。「ふう……」

ルークは温かいお茶をすすりながら、静かな執務室で一人ほくそ笑んだ。

「これでよし。熱血漢と狂犬のコンビなら、あの程度の問題、今日中に片付けてくれるだろう」


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