勝利の女神 〜真の乱数調整というものを教えよう〜
宗教に無頓着でお馴染み日本人。
しかし、お正月にお参り&お餅もちもちしては、陽キャにだけ許されたハロウィン謎仮装パーティをおっぱじめ、これまた陽キャにだけ許された聖夜クリスマスを堪能する。
異文化の闇鍋こと日本文化のネタは、テレビだのYouTubeだの多くのメディアで擦りに擦られたものだ。
時に、徳という人間特有のエゴがある。
何か良いことをしたら、あたかも己に帰ってくるだろうという希望的観測を胸に、いざ運気が回って来て欲しい時にだけゴットの存在を信じるエセ信者。
その数ある偽善者の銀河系に泳ぐ星が、私だ。
徳をかき集めようが、徳銀行から引き出そうとも、神は気まぐれ。
ランダムで人類に徳を振り分けられるのが世も末だ。
ブラッシュアップライフで事前勉強したので、徳の痛さは大いに知っているつもりである。
それでもわたしゃ信じるぜ神!
勝利の女神よ、今この時だけでも、どうか私に運を分けてくれ……!
つまり何が言いたいかと言うと、
ガチャである。
日本人には宗教に無頓着でお馴染みと言ったが、ソシャゲという名の課金沼に笑顔で泳ぎまくる異端者でもまた、お馴染み。
コンビニの買い物では50円引きになった握り飯をひとつ握るばかりだが、ソシャゲのガチャになった途端、福澤諭吉を何枚も握り出すのだ。
あぁ、このガチャ戦国時代は諭吉から渋沢栄一にバトンタッチしても尚続くのだろう。銀行の神、栄一よ、運でも金でも恵んでくんろ……
だが私は、徳なんぞに頼っては痛い目を見ると知っている賢い子なのだ。
SNSで爆死ツイートポストしている敗北者とはレベルが違う。私が信じるのはガチャ神とこれ。
全ては乱数調整、これに掛かっている!!
乱数調整、それはガチャの確率を少しでも上げようとする廃人達の足掻きである。
ある者は緑のドラゴンの腕をひたすら寸止め捻りを繰り返し、またある者はガチャホーム画面に映る受付美少女の頭を画面越しになでなでする。
これは神社のお守りと通づるものがあり、他人には決して見られたくない部類の儀式を、勝負前にどうしてもプライドを犠牲に買わなくてはならないのだ。
さて、その乱数調整というものはソシャゲそれぞれに特色が異なるのだが……
今回、女神に捧げる乱数調整の場となるゲームは、オープンワールド系のゲーム。
大きく広がる世界を、自由に冒険出来る探索ものだ。
勝利の女神やら神々やら言っていたものだから、あたかも尻に魂を売った美少女銃撃戦ゲームに情けと金を注ぎ込むのかと勘違いされそうだが、幸いにも私はSiriに魂を狩られてはいない。
きっと私は、タッパ云々が好きな呪術師と超親友になれることは無いだろう。
話は戻り、私のプレイするオープンワールドでのガチャには、所謂プレイアブルキャラ……ゲーム上で己の代わりに動かせる可愛いorイケメチョキャラを獲得出来るものがある。
そしてレアリティの一番高いキャラの内、その開催されているガチャ内でしか排出されない限定キャラと言うものをゲットだぜするのが目標だ。
そそるぜ~これは~。
そんな限定キャラを出す為に行われる哀れな行為、乱数調整は、聖地巡礼である。
聖地巡礼は、映画やドラマ、アニメの題材になった場所やシーンで使用された場所を巡る行為を指す。
有名な漫画家の生まれ故郷でも、観光客収集を目標に町おこし運動をすることも珍しくは無い。
さらにはテレビ番組などで店に訪れた著名人が座った椅子目当てに、遠くからせっせと足を運ぶマニアもいる。
店主はその椅子を掃除する度に、綺麗にしていいものかとジレンマに襲われているだろう。
アイドル握手会の理論である。
かくして人間を狂わせる聖地巡礼は、ソシャゲ、オープンワールドで乱数調整の為にも行われる。
ガチャで狙うプレイアブルキャラが活躍した、あるいはそのテーマに沿った場所にわざわざ訪れ、最善の準備を整えてからガチャを回す。
ゲームストーリー内でそのキャラが座った椅子に、社長のようにドカンと座るその風貌、現実世界で椅子を求めるマニアとは比べ物にならない程の狂人っぷりを発揮するのだ。
しかし果たして、聖地巡礼して勝利の女神が微笑むと言ったらどうだろうか?
ガチャの為にその無駄な労力を浪費する哀れな個体に、神は微笑みを向けるどころか、嘲笑して煽り散らかし屈伸運動を仕掛けてくるだろう。
それじゃあダメだ。
ならばどうするか、、、
ただ普通に引く!
逆張り、これが真の乱数調整なのだ。
ガチャを引く前に、お祈り儀式をする、心拍数を上げ、そこから降りかかる不幸は実に滑稽だろう。
神はそんな膝から崩れ落ちる生命で米を食っているに違いない。
逆に、
「あ~、偶然ガチャを引いてしまったー」
「あ~~っ、引くつもりは微塵も無かったが、ついついひとガチャしてしもうたぁー」
「あ~、あ~~っ、、偶然~~!!!」
と、あたかもガチャなんぞに欲を掻き立てるなど、獣のすることだと言わんばりな態度を取ってみる。
するとどうだろうか?
乱数調整を必死にする者より、偶然あ~者に不幸を配るのは少々面白みが欠けるじゃないか!
そう、ガチャ運の勝負は既に始まっている。
頭の煩悩たる煩悩をかき消し、ガチャの『ガ』の文字すら浮かばない綺麗な脳みそを維持。
SNSのミュートするキーワードに『ガチャ』『神引き』『爆死』を設け。
最後に通勤中等のどうでもないタイミングに引く。そして今、その時が来た。
時を戻して序盤。
勝利の女神よ、今この時だけでも、どうか私に運を分けてくれ……!
ガチャを引く指の動きは、阿修羅のごとく残像が。
しかし心は無に等しく 、ただ勝利の女神を思うのみ。
この純粋たる心に、女神が振り向く。
画面に映るガチャ10連の流れる10個の星々。
そして、最高レアリティ確定演出、煌びやか光り輝く星がひとつ。
さぁ来たれよ、勝利の女神!!!
ところで、すり抜けという現象をご存知だろうか。
ピックアップ外の同レアリティキャラが、ピックアップキャラを差し置いて、滑り込むようにして我々の前に躍り出る現象である。
限定キャラとはすなわち、『限定』ではない『恒常』キャラというものがあるわけで、、、
私の画面には、まるで躍り狂う屈伸女神。恒常キャラが嘲笑するかのように映し出されていた。




