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1 私の世界

(この世はクソだ)


夕暮れ時。ペンタはいつものように荒廃した街の隅で、野良犬が落としていった生ごみの屑を拾い集め食べていた。


この街の人間は全員ボロボロでガリガリだ。

怪しい取引をしている奴、虚ろな瞳で壁に話しかけている奴、この街にふらりと寄った物好きな旅人に、金や食い物をせがむ奴。王に捨てられた街なんてこんなものだ。


かつては漁業で潤っていたこの街も、40年前、王の気まぐれで海を荒らされ、その影響で寂れていってしまった。

どこを見ても崩れた家、苔の生えた道や階段、自由に生い茂った草木。もう人が住めるような場所ではない。


それなのに何故ペンタやこの街の住人が外に出ないのかと言うと、この街は”呪われている”から。


この世界で唯一誰にも手の届かない存在。魔王。

だが、1人も王の姿を目にした事はなく、それでもたまに起こる災害や不幸は大体そいつの仕業らしい。

何が目的で動いているのかも分からない。

ただ、王について文句を言ったり、反撃しようものならすぐに抹消されてしまう事だけはこの世の全員が知っている。


実際、ペンタ自身もその現場を目にした事がある。

自分の両親。

ペンタが12歳になる頃、気まぐれに寂れさせた街にまた王は戻ってきた。いや、戻ってきたと言うより、”現れた”と表現した方が正しいだろう。


食事なんてパンと味のしないスープくらいしかなかったけれど、ペンタにとってそんな事はどうでも良かった。優しい母に、いつでも家族を守ってくれた父。自分を愛してくれる家族がいたから食事なんて些細な事だった。


それが、ある朝。

いつもの様にあの控えめなスープの匂いが漂ってきて、ペンタは目を覚ました。

瞼を擦りながら階段を降りる。

「パパ、ママおはよう〜」

いつものおはようの返事が返ってこない。

固まるペンタの目の前には、両親”だった”ものがそこに倒れていた。

萎れた花のように首の垂れた2人は、顔も体もシワシワになって正気が無くなっていた。

まるで、中身が全て吸い取られたような見た目にペンタは恐怖を覚える。


「ママ……?」

ペンタは母親の顔に触れてみるが、冷たい感触に思わず手を離す。

「パパ……!」

父親の方も見たが、同じように息はもうしていなかった。

よく見ると、父親は母親を抱きしめるように腕を伸ばしている。


(何かに襲われた……?)


混乱と恐怖の中、ペンタは何とか自分を抑え落ち着かせようとする。もし、2人を襲った犯人がまだ近くにいるのなら自分も危ないと察したからだ。


(でもこんな魔法、見た事ない)


この世界では、1人1つだけ魔法が使える。

それは、火だったり水、土、毒、風など基本魔法から広がり色んな種類がある。レアな魔法であればある程、その人は強い魔法使いだと言われている。そして血筋などは関係なしに人それぞれ生まれながらの魔法があり、精神の強さによっては複雑な魔法も使えるらしい。

そして、1人ずつ魔法に名前をつける事ができ、その名前を口にすると魔法の威力は倍増する。

しかし、魔力を使いすぎるのと人に名前を知られたくない人が多いという理由で、わざわざ口に出して使う人はいない。

ちなみに、ペンタの父親はエンパイアで母親は水魔法が使えた。この街で唯一の水魔法だった母親は、水源のないこの街ではよく住人に水を求めて頼られていた。が、元々身体の弱い母親には1日に出せる量が限られていた為すぐに限界がきて倒れていた。だから、なるべく力は家族に使いたいと、住人たちに水を与えなくなっていった。


(それが動機か?)


ペンタは水を与えて貰えなくなった住人による犯行だと思った。しかし。


『ペンタ、逃げろ』


(!?)


突然、頭の中に流れ込んでくる映像。

ペンタはこれをよく知っている。

父親のエンパイアだ。

精神を共有する魔法。

エンパイアは基本目の前にいる時にのみ、自分の心の内を相手に共有したり、逆に相手の心を見る事ができる。けれど、父は記憶も共有する事ができた。

幻影魔法と少し似ているが、死んでまで誰かに見せる事のできる力はペンタも聞いた事がなかった。


(死ぬ前に私に残してくれたんだ)


ペンタは脳に焼き付けるように集中する。


いつものようにあのスープを作っている母親、拾ってきた新聞を読んでいる父親。

何も変わらないいつもと同じ朝。


(やばい……)


ペンタは涙が出そうになるのを我慢する。


『見ろよ、また魔王を見たって奴が現れたらしい』


『ほんと、毎日のようにそういう記事が載っているわよね。事実かも分からないのに』


『絶対嘘だな。奴がそんな簡単に現れるはずない』


『……あなた、まだ魔王様を探しているの?』


『その魔王様って呼び方やめろっていつも言っているだろう。あんな奴に様をつける必要はない』


『そんな事言っていると命を取られてしまうわよ?』


『んな訳あるか。こんなに毎日探しているのに奴は全く現れる気配がない。多分、悪口とか関係なしにこの街のように気分で襲ってるんだろう。だから襲われる可能性なんて低い。なんなら現れてくれた方が俺はありがたいんだがな』


(またこの話してたんだ)


父親は魔王が嫌いだった。

生まれ育ったこの街を襲われてから、ずっと目の敵にして探し回っていたのをペンタはよく知っている。

そして、嫌っている理由がもうひとつある事も知っていた。


『それより!もうご飯ができるわよ。美味しいものを食べている時にそんな暗い話はやめておきましょう?ペンタもまた嫌な顔をするわよ』


『……そうだな、悪い』


母親がスープを皿によそう。

父親は、新聞を畳んでペンタを起こそうと立ち上がる。


その瞬間。


チュイン!!!!!


突然、紫色の渦が2人の間に現れた。


『キョウ!』


父親が急いで母親の前に行こうと手を伸ばす。

が、その一瞬で母親はいきなりシワクチャになり倒れてしまう。


(何が起こった!?)


ペンタは渦をしっかり見る。

渦の中に何かがいる。

何かは分からないが、それが危険な存在である事は確かだ。


『エンパイアームス!』


父親が倒れた母親を抱きしめ、魔法倍増の名前を口に出す。

すると、父親までも母親のようにシワだらけになりばたりと倒れてしまった。

あの強く逞しかった父親が呆気なくやられてしまった。ペンタは絶望する。


(魔王……あいつが、あいつがやってきたんだ)


『ペンタ逃げろ……』


そこで父親の見せた映像は終わってしまった。

死んでも記憶を見せる事ができたのは、魔法倍増していたからなんだ……。

あの渦の中。父親が見たあの目。

赤色に光るあの目を見て、母親と父親はやられてしまった。目を見るだけで殺されてしまうなら、反撃のしようがない。

だが、ペンタに余裕は無くなっていた。


「おい!まだいるんだろ!?お前なんか私にとっちゃ赤ん坊と同じだ!ちっとも怖くない!出てこい!」


家中に響く声で叫ぶが、何も反応は無い。

その後も悪口を言い放ったが、結局魔王は現れてはくれなかった。


その後は、両親がいなくなりよりいっそう食事も服もボロくなっていってしまった。

そして、1年後の現在に至る。


(あの時私も死んでいれば良かった)


これはペンタの口癖だった。

父親と母親を一度に亡くしてしまったペンタにとって、この世界で生きる価値など見出せなくなっていた。


「おい、鉄也のとこの坊主。また街を出ようと門まで行ったらしいぞ」


住人の話がペンタの耳に入る。


「そんな事したってまた追い返されるだけなのにな」


そうだ。この街は呪われている。

魔王に襲われた時から、世界はこの街を孤立させる事にした。門を作り、そこからしか出られないようにしたのだ。

その理由は単純。

一度魔王に襲われた事のある住民が他の街に出ると、そこに魔王が現れるんじゃないかと恐れたんだ。

それと、単純にこの街に住む人全員が出て行くと経済面が傾いてしまうから。


門を通れば絶対出られる訳ではない。

20歳を過ぎ、レア魔法が使える人間だけが出る事を許される。そんな訳で、この街はよりいっそう寂れていってしまった。


(私はあと7年待てば出られる)


そう、ペンタはレア魔法が使える。

といっても水やエンパイアのように日常生活で使えるものではない。


星魔法。

ペンタが願えば空の星が流れる。

ただそれだけ。

だから、使うタイミングなんて1人寂しい夜に星を流す程度。それでもペンタは自身の魔法を気に入っていた。


(今日も星を流しに行こう)


ペンタは立ち上がり、いつもの丘へ向かう。

周りに建物などが無く、夜になると夜空が広く見えてペンタにとって絶好の秘密の場所になっていた。

そして、最近寝泊まりしている場所もその丘だ。


誰とも目を合わせないように歩いて行く。

白く汚れた家と、寂れてボロボロと崩れてしまった教会の間。そこに階段がある。

苔だらけの階段を登ると、あの丘に辿り着く。


ペンタは早足で階段を登る。


(暗くなるまで一度寝よう。そうすれば空腹も騙せる)


その時。


「わ、やば!」



教会の壁の上の方から人の声がした。

見上げると、帽子を深く被った人が壁の上にまたがっていた。


「そこ、危ないよ」


ボロッ


「きゃっ!?」


ドスッ!


言った通り。壁が崩れ、その人はペンタの上に落ちてきた。


「いったたた、あ!ごめん!大丈夫?怪我、してない?」


帽子を深く被っていて顔は見えないが、可愛らしい声をしている。


「大丈夫。あなたは、怪我してない?」


「ええ、大丈夫よ!」


「……」


「?……この帽子がどうかした?変、かな?」


「いや、初めて見たから。可愛いと思って」


産まれた時からこの街で生活してきたペンタにとって、帽子は高級品だった。帽子だけではない。ちゃんとしたシャツも、スカートも、靴も。目の前の人が着ているもの全てが珍しく見えた。


「初めて!?」


「……おかしい?」


ペンタの表情を見て、女は話を変える事にした。


「それより!あなた、何処か身を隠せる場所知らない?」


「なにそれ?」


「いやあ。深くは言えないんだけどさ、実は悪い人たちに追われてて今絶賛逃走中なの」


ペンタは手を顎に当て少し悩む。


「……1日だけで良いなら誰にもバレない場所知ってるよ」


「え!?教えて!ていうか私方向音痴だから、案内もしてくれたらすっっごく助かるな?」


女は手を合わせてお願いポーズをする。


「ん〜……」


ペンタは、秘密の場所兼家でもあるあの場所をこんな怪しそうな人に教えて良いのか、悩んでいた。


(悪い人に追われてるっていうのが怪しすぎるな……)


かといって、このまま無視をして後をつけられても困る。ペンタはしょうがない、とため息を吐いて案内する事にした。


「こっち」


「ありがとう!!」


女はとても嬉しそうにしている。


「この階段を上がって行くの?」


「そう。滑ってこけないように気をつけて」


「あなた、優しいのね」


「そんな事ないよ」


ペンタは赤くなる耳を押さえて誤魔化す。

人と話す事自体久しぶり過ぎて褒められると照れて困ってしまう。


「ここ入るよ」


階段を上がった先には、木々で覆われた小さな穴があった。

そこへ気にせず入って行くペンタの後ろを、服を気にしながら女は着いて行く。


「う、このスカートお気に入りだったのに〜」


ツンツンと伸びた枝に引っかかりながら進んでいく。


「ほら、ついた」


「わあ……!!!!!」


穴を抜けると目の前が急に明るくなる。

開けた丘に、目の前にはオレンジ色に光る大きな夕焼けと広大な海が広がっていた。


「ここ、素敵!」


「良いでしょ?私の秘密の丘」


そう言ってペンタは丘の上に寝転がる。


「夕焼けも良いけど、こうやって空を見上げるのが好きなんだ」


「となり、良い?」


「どうぞ」


女もペンタの隣にゴロリと寝転がる。


「さっきまでいた街とは別の場所にいるみたい。空気もおいしいし、風も気持ちいい」


ペンタは一度座り、女の方へ向く。


「ね、貴方誰なの?この街の人ではないでしょ?」


女も同じように座り直し、2人は向き合う。


「んー、もしかしたら名前聞いたら分かるかも?」


「どういう意味?」


女は周りを確認してから帽子を取る。

ふわりと溢れでた白い髪。

後ろに細く二つ結びをしている。

瞳は大きくきらきらと光っていて、顔が小さい。人と関わりの少ないペンタですらこの女が美少女だと分かる。でも……。


「……誰?」


ペンタの問いに女は驚く。


「え!?私の事知らない?うわあー、まだまだ頑張んないと……」


ぺんたは女の顔をじっと見る。


「有名な人なの?名前は?」


すると、女は立ち上がり夕陽に向かって目を閉じる。


〜〜♪


それは、聴いたことのない歌だった。

優しくて強い、この女の生き方を表しているような歌。ペンタは母親の子守唄くらいしか歌を知らない。

そんなペンタでも、”特別”だと感じるほど惹きつけられていた。


〜〜♪


「!?」


ふと足元を見ると、何もなかったはずの丘の上に沢山の花が咲いていた。

色とりどりで種類もバラバラ。

視線を女に戻すと、今度は女の服装が変わっていた。


「可愛い……」


簡単なシャツにスカートだったのが、ふわふわ雲のように柔らかそうなワンピースに変わっている。

そして、女の手にはいつのまにかマイクが握られていた。


「凄い……」


それ以上の言葉をペンタの口からは出せなかった。

今までに感じた事のない感情にペンタは胸が躍る。


〜♪……


歌が終わった。


「どう!?私の事は知らなくてもこの歌は知ってたんじゃない?」


「い、いや。聞いたことない」


「えー!?この街には歌っていう文化がないのかな?」


女は1人ぶつぶつと言っている。


「ねえ、貴方の名前教えてよ」


女は、振り向きながら答える。


「私の名前はサルビアよ!」


よろしくねと手を出される。

慣れない握手に戸惑いながらも手を握るペンタ。


「サルビア、歌上手いね」


ペンタが褒めると、サルビアは腰に手を当て胸を張る。


「ふっふーん!世界の歌姫ですからね!」


「歌姫?何それ?アイドルってやつ?」


「んーとね、なんて言ったら良いんだろ……。まあ、アイドルかな?」


中途半端な答えにペンタはもどかしくなる。

この初めての感情をサルビアに伝えたい。

その気持ちでペンタの心は溢れていた。


「私、サルビアの歌好きだよ。こんなワクワクするような気持ち、初めて知った」


その言葉を聞いてサルビアは嬉しそうにペンタの手を握る。

すると、ペンタの手にマイクが現れた。


「へ!?なに!?」


「ふふっ、君の歌も聴かせてよ!」


突然の事にペンタは困惑する。


確かサルビアが歌っている時にも可笑しな事が起こった。これが、サルビアの魔法なのかな?


「じゃあ、お母さんから受け継いだ子守唄だけど」


「良いじゃない!」


沈む夕陽をバックにペンタは立つ。

その前でサルビアは座って目を閉じている。


ドキドキする。

人に自分の歌声を聴いてもらうだなんて、家族以外で初めてだ。

こんなに緊張するものなんだな。


〜〜♪〜〜♪


歌っている間、サルビアは目を閉じたままペンタの歌声に耳を澄ましている。

不思議と先ほどまでの緊張はどこかへ消えていた。


気持ちいい。

歌うってこんなに楽しい事だっけ。


〜〜♪……


歌い終わると、サルビアが拍手をしてくれた。


「どうだった……?」


「すんっっごく良かったよ!君も歌上手いじゃん!」


「ほんと?」


サルビアは親指を立てる。

それを見てペンタは安心と嬉しさで心が満たされる。


「ありがとう。なんかスッキリしたよ」


「いーえ!私の方こそ、素敵な歌を聴かせてくれてありがとう!」


2人は笑い合ってその場に寝転ぶ。

空はもう暗くなっていた。

てんてんと星が綺麗に輝いて、月も優しく光っている。


「サルビア、さっきのって幻影魔法?」


実はペンタにはあの不思議な魔法に心当たりがあった。


「うん、そうよ。良く分かったね?」


「お爺ちゃんが同じ魔法使ってたから……」


ペンタのお爺ちゃんも幻影魔法が使えた。

お爺ちゃんと母親との関係。

父親から聞いた過去の話の影響で、ペンタはこの魔法を使える人が好きだった。


街で唯一の水魔法使いだったペンタの母親。

普通なら、基本魔法だから水魔法使いはもっといるはずだった。

だが、魔王がこの街を襲った時。

海を荒らしたと同時に、水魔法使いは全員消されてしまった。

その時、お爺ちゃんが幻影魔法を使い自分と母親を入れ替えて見せた。そして代わりにお爺ちゃんが消されてしまったのだ。

その時の話を語る父親の目は魔王への恨みに満ちていた。

それでも、父親の魔法で見せて貰ったお爺ちゃんはいつも楽しそうに幻を見せては母親を笑わせていた。

だから、会った事はないけれどペンタにとってお爺ちゃんは大好きで憧れの存在だった。


「同じ?珍しい!そのお爺ちゃんに会ってみたいかも!」


「あー、それはできないかな。亡くなっちゃったし」


ペンタは父親から教えられた過去と、魔王によって失った両親の事をサルビアに話す。

それを聞いたサルビアはショックを受けたようで、悲しげな顔をしている。


「そんな……」


「でももう大丈夫だよ。1人には慣れてきたし、なんだかんだ生きていけてるから」


「……魔王様の事恨んでないの?」


「んー、恨んでるよ。けど、探したって見つかんないしどうにもできないって感じだね」


それを聞いてサルビアは黙ってしまった。


「どうしたの?」


ペンタは不安になりサルビアの横顔を見る。


「んーん!何でもない!それより、君は名前なんて言うの?」


何だか上手くはぐらかされた気がするが、ペンタは深く聞かない事にした。


「ペンタだよ」


「ペンタ!可愛い名前!魔法は何が使えるの?」


魔法を他人へ教える事を嫌がる人もいるなか、こんなに堂々と聞いてくる人は珍しい。


「星魔法だよ」


「星魔法?初めて聞いた。どんな事ができるの?」


ちょっと待ってねと言ってペンタは手を夜空へ伸ばす。

その時、ひとつの星が夜空を下に流れていった。


「流れ星?」


(ああ、やっぱり。私の魔法地味なのかな)


魔法を見せた事を少し後悔する。


「かっこいいじゃない!お願い事何度も言えるって事よね!???」


「………へ?」


「ちょっと、もう1回流して!お願い!」


ペンタは言われるがまま星を流す。


「自由!自由!自由!」


サルビアは願い事を3回唱える。


「ね!これでお願い叶うかな?」


そう言ってペンタを見るサルビアの目は、星空のようにキラキラ輝いている。


「さあ?した事ないから分かんないや」


「流れ星といったらお願い事でしょ?」


(そうなのかな?)


「ほら、ペンタも!」


サルビアに急かされ、ペンタも星を流しながら手を合わせる。


(………)


「何お願いしたの?」


「分かんなかった」


「なにが?」


「何をお願いしたいのか、分かんなかった」


両親を失ってから、自分も後を追えば良かったと毎晩後悔していたペンタ。

そんなペンタが願う事なんて、たったひとつ。

両親に会いたい。

が、それが叶う訳ない事は分かりきっていた。


(死んだ人を蘇らせるなんて、いくら魔法でもできるはずがない)


「そっか……、じゃあさ!」


サルビアが起き上がりペンタの手を握る。


「アイドルになってよ!」


「はい?」


突然可笑しな事を言うサルビアに、ペンタの口は開いて塞がらない。


「私、ペンタと同じステージで歌ってみたい」


真っ直ぐに目を見て言うサルビアにペンタは押される。


「む、無理だよ。大体、この街から出られるのが7年後だよ?サルビア、そんな先まで待てないでしょ?」


「何言ってんの!世界の歌姫よ?それまでずっと歌って待ってるから、絶対同じステージに立とう」


「でも、そんな簡単になれるものじゃないでしょ?」


「ふふ、それは大丈夫!私の推薦でオーディション受けれるようにしてあげる!」


「そんな事したら他の子が嫌な思いしちゃうよ」


「違うの、今度私のプロデュースでアイドルグループを作る事になってるの。だから、その候補生って事にすれば参加できるよ!期間を伸ばして7年後にして貰えば、ペンタも出られるでしょ?」


「そんな無茶な。7年だよ?急にそんな変更したら怒られちゃうよ」


「それも大丈夫!まだ発表してないから、マネージャーの凛さんに我儘言えば伸ばして貰える!はず!」


(マネージャーの凛さん、可哀想に)


「なんで私なんかの為にそんな無茶してくれるの?」


「笑顔でいて欲しいから!」


会ってから1番と言えるほどの笑顔で答えるサルビア。

ペンタは思わずその笑顔に見惚れてしまう。


「助けて貰ったし、もう友達だし!だからペンタには笑っていて欲しいの」


「……友達?」


「そ!友達!」


今まで友達といえばパン屑を落としてくれる野良犬くらいしかいなかったペンタにとって、その言葉は深く心を動かした。


「分かった、やってみるよ。てか、やってみたい!」


できるできないじゃなくて、もうペンタにとってサルビアは憧れの存在になっていた。

そんなサルビアと同じようになれたなら、生きていて良かったと思えるんじゃないかとペンタは考えた。


「やった!じゃあ、7年後待ってるからね?」


「うん、絶対行くから」


2人はぎゅっと強く手を握る。

会った時はこんな事になるなんて思ってなかった2人は、笑い合う。

そして、夜空を見上げながら2人は眠りにつく。


 

新しい物語が始まりました。

こちらは、日時は決めずに投稿していきます。

感想等お待ちしております!

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