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賭け


『賭け方は変わらずだ。客席下部にいる黒服の者に、予想を書いた紙を渡したまえ。どちらが勝つか、どれくらい持つか――おっと、今回からは何人残るかも書くと良い!』



「棒立ちでは目立ちすぎる。そこに座り、状況を探る」


 リゼルファに促されるまま着席する。



『ハハハ、皆悩んでいるかね。約束ごとの再確認でもしようか? 予想と結果が近い者から順に取り分は多くなる。ただし、私の予想を下回る者の取り分はナシだ!』



 そんな説明の最中、客席下部から大量の武器がアリーナに投げ込まれる。

 刃が砂を噛む音が遅れて広がり、錆びた鉄の匂いが風に乗って客席まで上がってくる。



『準備が着々と進んでいるようだな。そうだ、新参者には手引きをくれてやろう。

 これまでの経験上、平民の中にも愉しませてくれる者は数名いた。そして今回の挑戦者(・・・)は過去最大だ。

 ……つまり数回は勝ってくれると、私は確信している』



 何が挑戦者だ。強制しておいてよくそんな事が言える。

 それに経験上って……もう何回もこんなことをやっているというのか。




 俺の憤りを肯定するかのように、手慣れた様子で貴族の従者たちが客席下部にいる黒服と手続きを終わらせる。

 従者は紙片を二つ折りにし、蝋で封をして渡した。黒服は中身を見ず、箱へ落とす。



「行動の開始は、次の賭けが始まってからだ。セオ隊士が目線を奪ってくれるだろう。

 物証を押さえるにあたって作戦を伝えるが、まずは構造の把握に努めるがいい」



 リゼルファの言葉に辺りを見渡す。

 客席の更に上を覆い被さる形で張り出した、上階席が目に入る。

 おそらくVIP用の部屋なのだろう。


 縁に垂れた布幕が厚く、下からは影しか見えない。笑い声だけが、上から落ちてくる。



「あそこってどうやって行くんだ?」


 上階席を指さしてリゼルファに確認する。



「一般的にだが、貴賓とその他の入り口は分かられている。上に飛行船が見えたことから……おそらくは空から出入りするのだろう」


「ええ……あそこに物証があるなら、押さえにいけないし、持ち逃げされたら終わりなんじゃ」



「持ち逃げの可能性があるのは帳簿だけだ。

 黙獣入りの空印筐(くういんきょう)は危険だからな。そっちは地下のどこかにあるはずだ」



 にわかに周りの様子が騒がしくなる。新たな催しに浮ついた気配が波のように広がる。



「そろそろだな。では作戦を伝える」




 そうして、リゼルファからこの後の動きを伝えられる。

 だが、聞かされた内容には素直に同意はできないものであった。



「うーん……後半、運要素多くない?」


「性格を鑑みた上でだ。……賭け、と言われれば同意せざるを得ないがな」




『ようし、賭けは締切だ! ――これより命を賭けた戦いの幕開けだ。

 挑戦者たちには惜しまない拍手を!』



 その言葉を合図に、どこかで鉄の閂が外れる音がした。



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