鍵の行方(1/3)
「証人を消す以外に、まだ裏がありそうだな」
リゼルファが唐突に口を開く。
「これだけの火災を起こした上に、新王国と白誓院の介入。
目を逸らすには十分すぎるくらいだが、何を隠そうとしている……」
半ば独り言のように提示された難問に頭を捻る。
「そうですね……日雇い労働者の安否は、事件の筋だけ見れば、後回しにされる立場です。
彼らを火事と共に消すのでなく、他に使い潰せる用途があるのでしょう」
セオの言葉に思わず空を見上げる。
(ドルバン王子の後を追えればなあー。空に逃げられちゃどうしようもない)
アホ面が目に浮かぶようだ。
妙な苛立ちを覚えたところで、先ほど逃げるように退室した文官が恐る恐る現れる。
「オルセオン王子殿下、お手数ですが避難所まで出てきていただけないでしょうか。
その……白誓院が出張ってきておりまして。相手が相手で、現場の者が口を挟めず」
◆◇◆
「これより白誓院主導での鎮魂及び祈祷を執り行います。
犠牲に遭われた方のお名前が分かる方はお教えいただきますよう、よろしくお願いします」
避難所に来てみれば、場にそぐわぬほど整った白装束に身を包んだ集団が取り仕切っていた。
現場は乱れ、人が波打っていた。
港の黙性汚染を聞いた近隣住民たちが不安に駆られて押し寄せたようで、避難所は人で溢れていた。
「申し訳ございません、殿下。
白誓院の救済が目立つほど、民心は国から離れます故。
そして、介入の足掛かりを作られては、主権も削られてしまいまして――」
聞いてもない理由を文官がダラダラと述べる。
振り払うように集団へ歩み出て、声を張る。
「聞け。我が名はオルセオン。
この国の継承序列一位の王子である。
白誓院の使節に礼を言う。ただし“主導”は不要だ。
祈りは正式に受け入れるが、避難所の運営は王国が行う。
名の聞き取りも名簿の集約も、領務監督局を通せ」
その声に民衆からどよめきが広がり、奥の方で――あの夜助けた者たちの歓声が上がる。
その歓声は主導を握るのに一役買ったようだ。
しかし、群衆がこちらに雪崩れ込みそうな雰囲気を感じる。
慌てて、安全なルート確保のために《帰標》を発動させる。
民衆から各々方角が出たところで、違和感が生じる。
あらためて《帰標》を発動し直すと、視界が狭まるような強烈な耳鳴りが生じた。
そこで俺の意識はプツリと切れた。




