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断罪の鍵


 相変わらず王の手の上で転がされている。

 しかも、知らずのうちに他人の命運まで背負わされてた。


「……俺が権力行使したら解決するもんなのかな」


 最悪のケースに備えて、俺が使える権限を確認する。



「……公権介入規程を改められれば、だが――無理そうだな」


 そう言うリゼルファは、一瞬で置き去りになった俺を一瞥して、憐れんだ表情を見せる。

 悔しいがその反応は正しい。




 頭を抱えたところへ、文官が帳面の束を抱えて戻ってきた。

 どさりと机に積み、紙と煤の匂いが舞い上がる。



「オルセオン王子殿下、走り書きになりますが追加分になります。

 これで一通り、身元が割れた者は揃いました」



 目が泳ぐ文官を不審に思いながらも、黙って分類された種類に目を通す。



 ――数が合わない。



 違和感の正体が、ようやく形になった。



 あの夜、俺は《帰標(きひょう)》の反応が消えていくたびに――救えなかった人たちを忘れないために、数だけは覚えていた。


 死者と、身元の割れている行方不明者。

 そこに載っている人数は、その記憶とほぼ一致していた。



 だが行方不明者名簿だけ、空白が多すぎる。

 名前も、住所も、所属もない。




「……この空白は何だ。記載のない行方不明者は、どこから出てきた?」



 俺の問いに、文官は何とも歯切れ悪く喋り出す。



「あ、えー……従業員の身元は全て分かったのですが、日雇い労働者の名簿が元から薄く……その――」



「日雇い労働者であれば賃金保障制度の――救血(きゅうけつ)窓口に寄るはずです。

 金銭の受け渡しがある以上、行方が分からない、はあり得ないのでは?」



 セオが助け舟を出すように、被せ気味に言い放つ。



「私もそう思ったのですが……それがあの夜、ドルバン王子とその私兵なる者たちが、窓口に勤めを無理に交代させたようです」


「理由は?」


「申し訳ございません、そこまでは……。ただ、交代後でも出納帳は正しく記載されており、行方不明者との数と一致しております」


 文官は慌てて束の一つを差し出し、見せつける。



「……承知した。もう下がってよい」


 俺からの赦しを心待ちにしていたのか、文官は礼節を素早く済ませ、逃げるように退室した。




「――日雇い労働者に空印筐(くういんきょう)に関する作業を従事させていた、ないし見られては困るものを見られた、ということだろうな」



 彼らの存在が、ドルバン王子を断罪する鍵だ。

 処理される前に早く見つけ出さないと……!



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