番外編① 格付け
ドルバン王子を追って港へ向かう馬車の中。
ただの雑談でも全てが新しく、この世界の見識は勝手に広がっていく。
「セオが今まで見た中で、一番強い黙獣ってどんなのだった?」
「……そうですね。私が子供の頃に見たものが一番強いでしょうね。
火を噴きながら空を飛び、隣国の領地を焼き尽くしていました」
「こわ……よく無事だったね」
「隣国でしたからね。――不謹慎ですが、上位三群で相当に珍しく、見届けるよう命じられて、見ていました」
「あー……黙獣のその分類、未だに分かってないんだよね。
今後のためにも教えてもらっていいかな?」
「はい、勿論です。殿下」
セオは少し考えるように、ゆっくりと瞬きをした後、口を開く。
「まず基準は三つです。上位・中位・下位。
最悪の場合に“どこまで壊れるか”で決められています。
上位は国家、中位は都市、下位は村――の規模ですね」
「そのうえで、一群から五群までに振り分けます。
数字が小さいほど被害が大きくなります。
一群が滅亡、二群が壊滅、三群が甚大。
四群が大、五群が中〜軽微――これが目安になります」
「ええ……隣国は大丈夫だったの?」
「復興はしていますが、国力は戻り切っていません。
特に産業が甚大で、今も外部に頼る状況が続いています」
対処しないと多くの人が苦しむことになる。
歴史から学ばなければ、と強く感じる。
「その空飛ぶ黙獣は結局、倒せたの?」
「いいえ、通り過ぎるのを待つだけでした。
契導支舎で白評価を受けた者を、国が抱えていなかったので為す術もなく……」
「ごめん、その評価もよく分かってない」
「白誓院が認定する、白従者の格付けです。
上から――透明、白、青、緑、黄、赤、紫、黒、になります。
最上が透明、最下が黒。そう覚えれば困りません」
「へえ……でも高評価されると有事に召集かけられて大変そう」
「そうですね。ただ得るものの方が多いんですよ。
国は安全な戦力を欲していますので、通行や越境の手続きが簡略化されたり……白評価以上は、半ば王族に準じた扱いになるのだとか……」
我が身を思う。
王族並みの待遇って何にも良いところ無くないか?
眉間に皺を寄せる俺を見たセオが、慌てて話題を逸らす。
「もっとも、白評価を取ろうと思えば、禍祈廊で会敵したネブリオス――あれすら単騎で即殺できる実力が必要になるので、我々には関係ありませんね」
(そのうち異世界チートを地でいく奴と会ったりするんだろうか)
不安を抱えたまま、馬車は揺れ続けた。
【2026/02/18】タイトル変更




