パーティメンバーが決まった
前回のあらすじ
俺をずっとイラつかせていたあの女、モニモニ。
正体は「男か!?」と一瞬期待させておいて、やっぱり女。しかも、ただの女じゃなく――俺に“光の道”を示す女神様だった。
こうして俺は決意した。次のターゲットは、調子に乗った転生者たち。
――世界で唯一、合法的に男ばかり狩れる最高の冒険が、今始まる。
「というわけで、ルーズリール、お前は追放だ。」
俺は瓶の中でトカゲ姿になったルーズリールにそう告げた。
「安心しろ。転職先は優しいシスター――チルラーだ。」
するとルーズリールは瓶の中で暴れ出す。
「嫌だぁぁぁ!!誰が“イカレシスター”と名高いあの化け物の飼い犬になんてなるもんか!!」
隣でハイドルが平然と突っ込む。
「飼い犬じゃなくてトカゲじゃん。」
「違う!そういう問題じゃない!!どうせ私は一瞬で天に召されるんだぁぁ!!」
そんな中、チルラーからの手紙が届いた。
『勇者様へ』
ルーズリールの扱いは私にお任せください。簡単に殺したりはしません。
こんなおもちゃを譲ってくださるなんて、勇者様は本当に優しい方です。
なお、1年に一回だけ「中身入りブドウ」を一粒与える予定です。
勇者様が転生者狩りに集中できるよう、私たち4人も尽力いたします。
俺は手紙を読み、素直にうれしくなった。
「さすが、俺の仲間。しっかり気遣ってくれる。」
しかし瓶の中からは悲鳴が響く。
「いやぁぁぁぁ!!死にたくない!!“中身入りブドウ”って何だよぉぉ!!」
ーーーー
ルーズリールは必死に叫んだ。
「お願いします!荷物持ちでも雑用でもいいから、私をここで働かせてください!」
だが、俺は首を横に振る。
「嫌だ。俺は男以外メンバーに入れない。――転生してからずっと、男には“すかしてる”って理由で拒まれて、女にしか好かれない日々を送ってきたんだ。もう二度と、そんなのごめんだ。」
ルーズリールは諦めきれず、声を震わせながら語り出した。
「私の人生は、いつも壁ばかりだった……そう、あの頃みたいに。私は魔界で俺の悪の環境ターベルにいた。何も信じられなかったけれど、唯一の宝は妹のロネルで――」
俺はすぐさま遮る。
「おい!“かわいそうな過去”匂わせたって俺の意思は揺るがねぇよ! それにお前、ハイドルにうつつ抜かしてただろうが!」
「うるさい!うるさい!うるさい再々!私はブドウ一粒以下の、よくわかんないものなんか食べたくない!!」
瓶の中で暴れるルーズリール。
――だが、俺の決意は微動だにしなかった。
ーーーー
ハイドルが珍しく真剣な顔で口を開いた。
「なんだかんだ、こいつと少ししか話してないけどさ……このまま悪魔より恐ろしいチルラーに渡すのは、さすがにかわいそうだろ」
俺は腕を組んで考える。
確かに――レックスに女装させたり、勝手に儀式を始めたり、俺の身体を乗っ取ろうとしたり……やってることを並べると、こいつは十分やばい。いや、むしろ笑えないくらいの悪行だ。
それでもハイドルは必死だった。
「頼む! 同じ悪魔だからさ、あんまり苦しむところ見たくないんだよ」
……そんな目で言われたら、俺だって揺らぐ。
「しょうがないな。特別に俺のパーティに――」
その瞬間、瓶の中から騒々しい声が響いた。
「ねえねえねえねえねえ!聞いた!?ハイドルが私のこと心配してるのよ!!なにこれ最高のご褒美!エルルカに即報告しなきゃ!」
俺とハイドルとレックス、全員の心が一瞬で一つになった。
――もうお前、帰れ。
ーーーー
ルーズリールは必死の形相で訴えてきた。
「それに、私がいないと困ることも多いのよ!」
俺は腕を組んで疑問を投げる。
「例えば?」
ルーズリールは自信ありげに胸を張った。
「例えば念力!私は10トン以上のものを動かせる!」
ハイドルは目を丸くして俺に耳打ちする。
「確かにそれは便利だ!荷物運びも楽になるし、戦いでも役に立ちそうじゃん!」
俺は申し訳なさそうに首をかしげた。
「……実を言うと、俺は100トン動かせるんだ」
場の空気が一瞬で静まり返る。
それでもルーズリールは諦めずに続けた。
「じゃ、じゃあ……私の割れないウロコ!これは防御系の中でも――」
「ごめん、防御系スキル38持ってるから、たぶん俺の方が硬い」
「じゃ、じゃあ睡眠魔法!」
「それも持ってるし。てか別に使わなくても勝てる」
ルーズリールは小さく唇を噛みしめ、最後に小声でつぶやいた。
「……もう後は透視ぐらいしか……」
俺はその言葉を聞いた瞬間、即答した。
「よし!仲間に入れよう」
「なんで!? アンタ持ってるんじゃないの!?」
俺は視線を逸らしながら曖昧に答える。
「……まあ、その理由は話せば長くなるから、あとでいいや」