「スイーツは村を救う?!」
神殿から帰還した翌日、ルークたちは古代レシピで作ったスイーツを携えて、自分たちの村へと戻ってきた。
「ただいまーっ!」
ミーナが満面の笑顔で門をくぐると、待ちわびていた村の子どもたちが「ミーナちゃーん!」と駆け寄ってくる。
「おにぃ、配ろうよ! あのすっごくおいしかったお菓子っ!」
ミーナは、手提げ袋からラッピングされた菓子を大事そうに取り出し、一人一人に手渡していく。
「これはね、特別な場所で見つけた“記憶のスイーツ”なんだよ。ゆっくり食べてね!」
一口食べた子どもたちは、途端に目を輝かせる。
「すっごい……あったかい味がするー!」
「お母さんの作ってくれるお菓子みたい!」
その様子を見て、大人たちも次々に菓子を口にし、自然と笑みがこぼれていく。
──この冬、村は例年以上に厳しい寒さに見舞われていた。
貯蔵食料は底をつき始め、土も凍てつき、暖を取るための薪も節約が続いていた。どこか皆の表情はこわばり、言葉少なに日々を過ごしていた。
だが、ミーナの持ち帰ったその一口のスイーツが、冷えきった空気を、そして人々の心をやさしくほぐしていく。
「……まさか、甘い菓子ひとつでこんなに雰囲気が変わるとはな」
ルークが驚き混じりに呟くと、セレナが微笑む。
「“味”は記憶を呼び覚まし、人の心を癒す力があるのよ。だからこそ、古代人はそれを守り、封じたのでしょうね」
ギャリソンも真剣な面持ちで言葉を継いだ。
「このお菓子が古代の遺跡以外でも作れるようになれば……冬の保存食や配給物資としても重宝されるでしょう。王都の食糧管理局にも報告すべきかと」
「それなら、もっとレシピを研究して、うちの畑でも再現できるようにしなきゃね!」
ミーナは頬を膨らませながら、拳をぎゅっと握る。
「わたし、もっと作る! おにぃと一緒にいっぱい練習して、次は村の広場でお店ひらきたいっ!」
「お店?」
「うんっ! 子どもたちが寒い日に来て、甘いお菓子食べて、ぽかぽかできるお店っ!」
ミーナの目がきらきらと輝く。
「……それも、悪くないな」
ルークは小さく笑いながら、妹の頭をぽんぽんと撫でた。
猫たちが足元をくるくる回りながら、(次はなに作るにゃ?)とでも言いたげに見上げている。
その日の夕方、村の広場には甘い香りが立ち込め、人々の笑い声と湯気がほのかに立ち上る焚き火の灯りが重なって、まるで冬の夜を彩る祭りのようだった。
古代の“記憶”は、確かに今も生きている。
そして、そのひとくちの幸せが、小さな村をそっと救っていくのだった。




