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「光る壁と、怪しい通路」

雪に覆われた東の森の奥深く。古代遺跡の入り口を抜けた先は、想像以上に広大な地下空間だった。

 

セレナ、イザベル、ルーク、ミーナ、そして猫たちに加え、イザベルの執事ギャリソンも同行していた。通路は自然の洞窟ではなく、明らかに人の手によって造られたものだった。石の床には幾何学模様のモザイクが埋め込まれ、壁面にはほのかに淡い青の光が流れていた。


「わぁ……綺麗……」


ミーナが目を輝かせて見上げる。壁を這う光はどこか水の流れのようで、時折脈打つように瞬いた。


「これは魔力で維持された照明ですね。年代的には……王家初期、いえ、それ以前かもしれません」


ギャリソンが壁面に指をすべらせ、慎重に観察する。


「執事なのに詳しすぎない?」とルークが感心したように呟く。


「執事として当然でございます」


きっぱりと、そして誇らしげに答えるギャリソンに、ルークは「マジで?」と小さく笑った。



◆罠にかかる猫たち!?


進んでいくと、空気が少しずつ冷たく、湿っぽくなってきた。


猫の一匹が床の浮き彫りに気付き、鼻を寄せた。

(にゃっ、床に何かあるにゃ……)


カチッ。


(にゃわぁっ!)


石板が沈み、上から小さな水滴が降り注いだ。水……かと思いきや、それは粘性のある透明な液体だった。


(うわっ、べとべとするにゃ……何これ……)


「触っちゃダメ!」とセレナが警告する。


「幸い毒ではなさそうですね」とギャリソンが冷静に観察しながら、懐から小瓶を取り出して液体を採取する。


「ま、まだあるよ! おにぃ、こっちも床が変!」


ミーナが指差した先には、わずかに浮き上がった石が。猫たちが興味本位で飛び跳ねた途端、左右の壁がギィィ……と動き、矢が突き出す。


「伏せて!」


ギャリソンが瞬時にミーナを抱き寄せ、猫たちを片手で押さえ、身を翻して避けた。


「ギャリソンすげー……」とルークが目を丸くする。


「執事として当然でございます」


またも変わらぬ冷静な返答。セレナは呆れたように微笑み、イザベルは楽しげに拍手を送った。



◆進路封鎖と、謎のツタ


通路はやがて緩やかな下り坂となり、苔むした空間へと繋がっていた。


天井は高く、ところどころ崩れているものの、中央にはまだ何かが機能している気配がある。


「……おや? あれは……」


ギャリソンが立ち止まった先、通路の先を巨大な根のような、ツタのようなものが塞いでいた。


無数の木の根が絡み合い、まるで呼吸するように蠢いている。


「生きてる……?」「植物じゃないよね……?」「魔物の一部だったりしない?」


「違う。これ、魔力に反応して動いてる」


ルークが地面に手を当てて、土の気配を探る。


「なにかが……ここを守ってる。けど、悪意はない」


「どうするの?」とミーナが聞くと、ギャリソンが静かに答える。


「……ルーク様。ここは、あなたに触れていただきたい」


「え、なんで俺?」


「これは生きた土です。農を司る者であれば……あるいは」


ルークは苦笑しながら、一歩前へ出た。


「まったく……いつもこうだよな」


手を差し出し、ツタのような根にそっと触れる。


すると――


シュゥゥゥ……


まるで雪が溶けるように、それらは静かに形を崩し、左右に分かれて通路を開いた。


「えええええぇぇぇーーー!!」


ミーナの叫びが響き渡る。セレナもイザベルも、猫たちすらも目を丸くして立ち尽くした。


ただ一人、ギャリソンだけが冷静に頷いた。


「やはり、ルーク様でございましたか」


「おまえなぁ……!」とルークは頭をかきながらも、なぜか満更でもなさそうだった。


その先にあるものは


再び通路は続く。

だが、どれだけ進んでもモンスターの影はない。

罠も鳴りを潜め、ただ静寂だけが支配する。


「変だな……もう宝物の一つや二つあってもよさそうなのに」


「……あるいは、本当に“何か”があった跡なのかもね」


イザベルが壁の装飾を指でなぞる。そこにはかすれた文字と、溶けかけた砂糖細工のような文様があった。


「……甘い匂いがする」


ミーナが鼻をひくひくさせた。確かに、かすかに蜂蜜のような香りが風に乗って漂ってくる。


「おにぃ! この先にスイーツあるよ、絶対あるよっ!」


「いやいや、どうして断言できるんだよ……」


それでも、ミーナの興奮は止まらない。

スコップを握りしめ、ゴーグルを猫たちに装着させて、彼女は準備万端である。


「行こう! おにぃ、セレナさん、イザベルさん、ギャリソンさん! お菓子の遺跡を発掘するのだーっ!」


「ほんとに……どこに向かってるんだ、俺たち……」


ルークがぼやきながらも、その足はしっかりと前を向いていた。

光の通路はまだ続いている。かすかな甘い風とともに――。




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