「アレ、陥落。そして兄、覚醒」
その日、事件は起きた。
「兄ぃぃぃぃぃーーーーっ!!!」
朝から響き渡る絶叫に、俺は鍬をほっぽって畑から走り出した。
「なに!? ミーナ、何が——」
「アレがあああああぁぁぁぁっっ!!!」
ミーナが指差した先、そこには……
**見るも無惨に崩れた“グランフィード家のアレ”**があった。
枝は折れ、藁は散乱し、布は引き裂かれている。
近くには野生のケモノの足跡。多分イノシシ系だ。
「うわ……これ、完全にやられてんな……」
「ミーナの……ミーナのひみつきちがぁ……っ!」
ぽろぽろと涙をこぼすミーナ。
「うぅぅぅ、兄といっしょにつくったのにぃ……うぇぇぇぇん……」
その姿を見た瞬間、俺の中で何かがカチッと音を立てて切り替わった。
——これは、ただの秘密基地ではない。
——これは、“妹の夢”だった。
「……ミーナ、もう泣くな」
「兄……?」
「お前の拠点は、今日から——要塞だ」
—
俺は物置から木材と工具をかき集めた。
藁? 使わない。枝? 足りない。
ならば作るまでだ、文明とロマンの融合拠点を!!
「俺は今から、お前のために“ア・バ〇ア・クー”を建てる」
「アバ……あばおく?」
「防衛力を高め、持久力を伸ばし、敵の侵入経路を制限する!この拠点は、お前を泣かせない!!」
「……兄、バカだけど、かっこいい♡」
—
こうして始まった「グランフィード家要塞建設計画」。
・畑の肥料庫から失敬した木材
・おじいちゃんの倉庫から見つけた錆びた釘
・母の裁縫道具から強奪した糸と布
すべてを駆使し、三日三晩、俺は作り続けた。
結果——
「完成したぞ、ミーナ……ミーナ・バ〇ア・クーがッ!!」
「……わぁぁぁぁぁ……」
ミーナは目を輝かせて、それを見上げた。
木の柱に囲まれた二層構造の拠点。雨除けあり、出入口は落とし戸式、なんと見張り台までついている。
小さな旗には「M・B・K(ミーナ・バ〇ア・クー)」の文字。
「これ、ミーナのおうち!? すごいすごいっっ!!」
「不審なケモノが来たら、見張り台から石を投げろ」
「にぃ、なんでそんなに真剣なの……」
「俺の妹が泣いたからだ。これは……復讐建築なんだよ」
「兄、バカかっこいいっ♡」
—
この日から「ミーナ・バ〇ア・クー」は村の子どもたちの聖地となり、
その戦闘的な構造は一部の大人たちにも「ちょっと参考になるな」と評される始末だった。
そしてミーナは今でも、寝る前に一言だけ祈る。
「今日も、あばおく、まもってくれてありがとう♡」