「猫たちのいたずら料理大作戦」
ある晴れた午後。
畑の草むしりを終え、ルークが涼みに戻ってくると、ミーナと猫たちの姿が見当たらなかった。
「……あれ? どこ行ったんだ?」
台所を覗いた瞬間、ルークの鼻を突いたのは、なにやら混沌とした香りだった。
「な、なんだこの匂い……!? カレー?いや、甘い?いや、魚っぽい……!?」
その場にいたのは、ミーナと、猫たち。
しかも、全員がエプロン(のような何か)を着ていた。
「お兄! 見ないで!」
ミーナがあわてて鍋をかくす。
だが、すでにルークの視線は、床に落ちた“干し魚とチョコレートらしきものが同居した具材”に釘付けだった。
「……まさか、猫たちが?」
「うんっ、ティノが“この魚うまいにゃ”ってもってきて……それで、シエルが“甘いの足すにゃ”って言うから……」
猫たちが誇らしげに「ニャッ」と鳴いた。
──どうやらミーナと猫たちは、“独自の味覚”で料理をしていたようだ。
「これは……新しいな」
ルークは笑うしかなかった。
◆試食タイム(恐怖)
「はいっ、お兄、できたよ!」
ミーナが両手で差し出したのは、カレーともシチューともつかない謎の液体が入った皿。
しかも上には、いちごジャムとパセリが乗っている。
「これは……何料理なんだ……?」
「猫たちといっしょに作った、“ミーナ特製にゃんにゃんごはん”だよ!」
名前がすでに不穏だった。
だが、ルークは勇敢にスプーンを手に取る。
「……いただきます!」
ひと口。
「……!!!」
甘い。辛い。酸っぱい。しょっぱい。
そして魚。
「……これは……新しい世界だ……」
ミーナが不安そうに見つめる中、ルークは涙目になりながらスプーンを動かす。
「お、おいしいぞ……うん……うまい……!!」
「ほんと!? やったぁ〜!!」
ルークの背中で、猫たちがドヤ顔をしていた。
◆母の助け舟、ふたたび
その後、台所に現れたレイナが惨状を目の当たりにし、くすりと笑った。
「今度は……お魚とお肉、ちゃんと分けて調理してみようか、ミーナ?」
「うんっ! 猫たちは……見てるだけにしてもらう!」
「にゃっ!?」と、ティノ。
こうしてふたたび、母レイナの料理指導が始まった。
今度は魚の下処理、香り付け、火加減……基本をひとつひとつ丁寧に。
ミーナは真剣な眼差しで学び、猫たちは静かに見守った(たぶん)。
◆リベンジ・ディナー
数日後の夕食どき。
「今日のスープ、やけに澄んでるな」
「この魚、焼き加減ちょうどいい……って、おい、これまさか……」
ミーナが胸をそらしながら、にっこり笑った。
「ミーナと猫たちで作った、ほんとの“にゃんにゃんごはん”です!」
今回は、味もしっかり整っている。
塩加減もちょうどよく、香草もほんのり香る。
「うまいぞ、ミーナ……!猫たち……お前ら、よく我慢した!」
「にゃー!(誇らしげ)」
◆そして、ミーナは宣言する
「次はね、お菓子作り、やってみたいの!」
「お菓子!? また猫たちと一緒か……?」
「うんっ! 今度は“あまくてふわふわで、ちょっと不思議”なの作るよ!」
「……不安しかない!」
笑い声がキッチンに響く。
こうして、猫たちとの新たな料理修行が始まるのであった。
ミーナの料理旅路、猫たちとともにますます加速中──!




