「ミーナの料理チャレンジ」
その“お肉パーティー”の翌朝。
ルークは朝の畑作業をしながら、まだ満腹感の余韻にひたっていた。
「いやー……昨日の肉、最高だったな……。まさか罠にかかるとは……」
そんな折、ミーナが腕を組みながら現れた。
なぜか自信たっぷりで、後ろには猫たちを従えている。
「お兄、ミーナ、きめたの!」
「ん? 何を?」
「ミーナも、料理する!」
「えっ、まじで!?」
ルークは目を輝かせた。
妹の成長の兆し。こんな嬉しいことがあっていいのか。
「すっごくおいしいお料理、つくるからねっ!」
ミーナは言い放つと、猫たちを引き連れて台所へと駆けていった。
後ろから「ニャア」と頼もしい鳴き声が響く。
◆はじめての料理(猫つき)
――数時間後。
「お兄〜! できたよぉ〜!」
ルークは呼ばれて食卓へ。
そこには、色とりどりの……何かが盛られた皿が並んでいた。
「これ、なに?」
「お野菜いっぱいサラダと、お肉ミックスと、スパイシー炒めだよ!」
スパイシー……炒め?
正確には、細かく刻んだ野菜と肉が雑然と皿に盛られている。
炒め、というより“切って盛った”に近い。
調味料は……ほとんど使われていないようだ。
スパイシーとは…!?、ミーナはスパイシーと言ってみたかっただけであった。
猫たちもテーブル脇で期待に満ちた目をしている。
(……これは……)
「ミーナ、天才だっ!!」
ルークは笑顔でスプーンを取り、ためらいなく口へ運んだ。
「う、うまい! いや、ほんとに! この素朴な味が……こう、なんかこう……!!」
──素材の味そのまま、というか味がしないというか。
だがルークは、ミーナの努力とそのかわいさだけで食べ切った。
「ごちそうさまっ!!」
「ほんと!? えへへ〜!」
◆母のまなざし
それを台所から見ていたレイナは、ふんわりと微笑んだ。
「ミーナ、今度は一緒にスープ作ってみる?」
「ほんと!? やるやる!」
そこから、母レイナによる“やさしい料理教室”が始まった。
包丁の使い方、火加減、味見……。
ミーナは何もかもが新鮮で、目を輝かせながら学んでいった。
猫たちも、なぜか一緒に鍋をのぞいていた。
◆第二の試練、父への料理
数日後。
「今日は、ミーナが作ったおかずだってさ」
と、ルークが目を輝かせる。
アベルは「おっ」と頷きながら、皿を見た。
そこには焼かれた肉の切り身と、にんじん、ハーブ……だが、何かが“多すぎる”。
「……ミーナ、これ何味?」
「おいしくなるように! いろんなスパイスとおしょうゆと、おさとうと、塩もたっぷり!」
「……なるほど」
アベルは静かにひと口、そしてもうひと口。
「……うぐっ」
青ざめた顔で口を押さえると、静かに立ち上がり、奥の部屋へと姿を消した。
「……父さん?」
その場に残された猫たちは、なぜか一斉に同じ顔をしていた。
──チベットスナギツネ。
「……なんでそんな目するの、ティノ……」
◆数日後の夜
そして、しばらく後のある夕食どき。
ルークとアベルは、スープを口にして顔を見合わせた。
「……ん? なんか今日のスープ、違う?」
「うん、だが悪くない。むしろ……うまいな」
レイナはふふっと微笑んで、言葉は何も言わない。
そのとき、ミーナが胸を張って宣言した。
「そのスープね、ミーナが作ったんだよ!!」
「おおっ!? ほんとに!?」
猫たちまでが揃って胸を張るようなポーズ。
「……器用だなお前ら」
「すごいぞ、ミーナ!! おかわり!」
ルークは何度もおかわりをし、アベルも頷きながらスープを飲み干す。
「……うん、ちゃんとした味になってる」
「えっへん!!」
その日、ミーナは誇らしげに笑っていた。
──そしてその夜、彼女はこっそりとルークの耳元でささやく。
「次はね……お肉料理、がんばるんだ!」
ルークは笑いながら、力強く頷いた。
「任せろ、材料なら俺が最高のを仕入れてくる!」
こうして、ミーナの“料理の旅”が始まった。
次なる目標は、“みんなが笑顔になるお料理”!
果たしてその味は……!? 乞うご期待!




