「けもの道の発見と罠の成功」
数日後、ルークは森の奥で、地面にうっすらと踏み跡が連なる場所を見つけた。
「……これは、けもの道か?」
草が倒れ、木の根が踏まれている。
何度も通ったような跡がはっきりと見える。
「ここなら……いける!」
今回は慎重に、ティノが寝転がる前に罠を設置した。
ミーナも真剣な表情で手伝ってくれる。
猫たちも、なぜか緊張感を感じ取っているのか、無駄に騒がない。
その翌朝。
ルークが昨日の罠を確認しに森へ向かうと、一本の縄が明らかに重そうに引きずられていた。
「……これは……!」
近づいていくと、罠には、まさに夜の間にかかったと思われる中型のイノシシが暴れていた。
「来たっ……!? 嘘、マジで……うおおおおおお!?」
罠にかかっていたのは、丸々と太った中型のイノシシだった。
(ブルでもドスでもねぇ普通のだ、よかったぁぁ~)
◆はしゃぐ猫、当たらぬクロスボウ
「し、しずかにっ……落ち着け、俺……」
ルークはクロスボウを構えた。
猫たちはイノシシの周りをぐるぐると回り、ミーナは少し後ろで息を呑んでいる。
狙いを定め――放つ!
──スカッ。
矢は外れて木に刺さった。
「うおぉぉぉ!? くそっ、もう一発……!」
その間にもイノシシは暴れ、罠が軋み始める。
焦るルーク。
「ミーナ! 父さん呼んできてくれ!」
「う、うんっ!!」
ミーナは振り返って全力疾走。
◆父、登場す
数分後、アベルが肩で息をしながら現れた。
「おいルーク! お前、本当にかけたのか!? ……うわ、マジでイノシシじゃねぇか」
「な? でも、俺じゃ仕留められなくて……」
「任せとけ!」
アベルは一瞬で状況を把握すると、矢継ぎ早に縄を締め直し、体重をかけてイノシシを安定させ、短剣で素早く止めを刺した。
「ふぅ……久々だが、腕は鈍ってねぇな」
◆父子とイノシシ、川へ
「これじゃ家まで運ぶの大変だ。ルーク、手伝え。川のそばで捌くぞ」
「は、はいっ!」
アベルはイノシシを肩に担ぎ、そのまま川へと向かう。
ルークも後を追いながら、何度か転びそうになりつつも必死に付いていった。
川べりに着くと、アベルは手際よくナイフを取り出し、動物の体を開いていく。
内臓の処理、血抜き、肉の切り分け――まるで職人のような手さばきだった。
「お前も見て覚えとけ。今後はお前の仕事になるかもしれん」
「……うん!」
その間、ミーナと猫たちは川ではしゃいでいた。
水しぶきを上げながら、ティノとシエルが水面を追いかけ、ミーナの笑い声が響いていた。
「キャー! つめたいーっ!」
「ニャー!」
その光景に、ルークは思わず笑みをこぼした。
◆肉の日の宴
「今日はお肉パーティーだな」
アベルの一言に、ミーナが飛び跳ねた。
「ぱーてぃー! パーティー! お肉いっぱいーっ!!」
その晩、グランフィード家ではイノシシの焼き肉、ロースト、骨付きスープがテーブルいっぱいに並んだ。
「……うまいな」
「ほんとだね、お兄~!」
ミーナがにこにこしながら肉をほおばる。
猫たちにも小皿が用意され、三匹揃って幸せそうに寝転んでいる。
ルークは静かに肉をかみしめながら、胸に誓った。
(次は……俺一人で、絶対に仕留めてみせる!)
すると、ミーナがふわりと微笑んで言った。
「お肉もおいしいけど……やっぱりお兄の畑のお野菜がいちばん好きかも♪」
ルークは、その言葉に照れながらも、胸がいっぱいになるのを感じた。
狩猟と畑、両方を極める、最高のスローライフを目指して――
ルークの冒険は、まだまだ続く。




