「翌朝、サロンにて」
――翌朝。
朝日が射し込むサロンには、暖かな光が満ちていた。天井にはシャンデリアがきらめき、窓の向こうには昨日までとは違う、瑞々しい森の緑が広がっている。
大きな丸テーブルを囲み、一同は揃って椅子に腰掛けていた。
テーブルの上には、メイドたちが用意した色とりどりの茶菓子と、香り高いハーブティーが並ぶ。銀のポットから注がれる蒸気に、どこかほっとした気持ちになる。
「さて……」と、最初に口を開いたのはルークだった。
「封印って……結局どうなったんだ?」
アベルが腕を組みながら唸るように答える。
「……ああ、実際どうなっていたのかもよく分からん。ただ、あの状況からして……ヤバい状態だったのは間違いないな」
「ええ。あれだけの魔物たちが出てきていたのよ? 危機一髪じゃないかしら?」と、レイナが紅茶を口にしながら答える。
(……その割に母さん、ちょっと楽しんでたようにも見えたけどな)
ルークは内心でつっこむも、それは声には出さなかった。
「でさ、魔物が全部消えたってことは、封印は戻ったと見ていいのか?」
「……どうかしらねぇ。祭壇が綺麗になってたし、いまのところは落ち着いてるけど、まだ様子見が必要かもね」
「誰が様子見るんだよ……」
そのとき、ギャリソンが静かに一礼しながら歩み出る。
「その件につきましては、わたくしめが責任をもって監視いたします」
「うん、あなたなら任せても大丈夫ね」
レイナがにっこりと笑う。
「確かにすごかったよな、この執事……。でもギャリソン……どこかで聞いたような……? うーん?」
ルークは首をひねるが、思い出せない。
すると、セレナがリリアーナにそっと尋ねた。
「ねぇ、リリアーナ? 昨日のこと……何があったの?」
「うーん……よく覚えてないのだけれど……久しぶりの自由時間がうれしくて、夜、外を見ていたの。そしたら猫たちが楽しそうにしてるのが見えて……わたしも出ちゃったのよね……でも、そのあと……猫さんたちと……遊んでないわね? あれ? ……思い出せない!?」
「つまり、外に出た時点で『森を喰らう魔獣』の影響を受け始めてたってことかもな」
と、アベルがまとめる。
「で、『森を喰らう魔獣』ってなんなんだよ、そもそも」
ルークが問いかけると、レイナが肩をすくめる。
「簡単に言えば……この地方の古い言い伝え。でも、正体は……よくわかってないわね、私たちも(笑)」
「わかんなぁぁぁい!」
ミーナが勢いよく両手を挙げる。
「にゃーん」
猫たちも同意している。
「で、ミーナが光ってたのは……」
「そりゃあもちろん!」
ルークが立ち上がって胸を張る。
「可愛いからだ!!!」
「もぉ……そうしておきましょ(笑)」
レイナが苦笑する。
「そうね、ミーナちゃん可愛いから♪」と、セレナ。
「そーよそーよ、天使なんでしょおぉぉ?」
リリアーナまで調子を合わせる。
「えへへっ……ミーナ、天使?」
ミーナは嬉しそうにくるくる回り、猫たちもその周りを追いかけながら跳ね回る。
その様子を、窓辺に控えたメイドたちがにこやかに見守っていた。
おかわりの紅茶をそっと差し出す一人のメイド。
「お疲れのところ、どうぞ温まってくださいませ」
「ありがとう」
ルークは受け取りながら、静かにほほ笑んだ。
まるで、昨日の戦いが嘘のような穏やかな空気が流れていた。
けれども、森の奥深くには、まだ知られざる何かが眠っている気配があった――。




