「謎の祭壇」
午後、森の奥へ捜索を再開した一行は、木々の密集を抜けて広がる一画にたどり着いた。そこは、まるで森がぽっかりと穴を開けたような開けた場所。中央には古びた岩でできた苔むした祭壇のような構造物が鎮座していた。
「リリアーナ!!」
セレナが叫ぶ。見ると、岩の上にはあのリリアーナ嬢が横たわっていた。
「近づくな!」
アベルが鋭く声を上げる。周囲を警戒した彼の目が木々の異変を捉えた。
「……木が、枯れてきている」
「やっぱり結界が破れつつあるのね」
レイナの顔に険しい影が差す。
「どうすりゃいいんだよ、こんなの……」
ルークが焦りの声を漏らす。猫たちはおろおろとルークの足元を駆け回り、ミーナはセレナのスカートにしがみついた。
そのとき、岩の裏手から複数の巨体がぬっと現れた。
「おいおい、デカいじゃねーか」
アベルがニヤリと笑いながら剣を構える。
「くまさんかしら?」
レイナは無邪気なようで、目は獲物を見据える鋭さに満ちていた。
「おにぃぃぃ、うしろぉぉ!!」
ミーナの叫び声に振り向くと、背後から小型の魔物たちがわらわらと現れた。
「団体様ですね。……イイでしょう」
それまで静かだった執事が、ふわりとマントを翻して一歩踏み出す。徒手空拳――何も持たぬその手で魔物の一体に突進。
寸分の無駄もない動き。魔物の攻撃をひらりとかわし、掌底で一撃。地面に叩きつけられた魔物がピクリとも動かなくなる。
続けざまに、蹴り、肘打ち、体捌きの全てが芸術のようだった。
「すげーぇぇぇぇ……」
一同が見惚れる中、ミーナは目をキラキラとさせ、猫たちと一緒に「しゅびっ!」「とりゃぁっ!」とパンチやキックの真似を始めた。……が、それは完全に猫パンチである。
「行くわよ、アベル!」
「おうよ!!」
レイナが火球を掌に灯し、アベルの剣撃と共に魔物をなぎ払っていく。魔法の光が空を切り、剣の軌跡が風を裂く。
しかし、魔物は次々に現れる。キリがない。
「ルーク!! 祭壇へ行ってリリアーナ嬢を助けなさい!」
レイナの声に、ハッと我に返るルーク。
「サンキュー母さん!!」
レイナの放った魔法が地面を裂き、魔物の合間に道を開く。その隙間を縫って、ルークは全速力で駆けだした。
祭壇に駆け上がり、リリアーナの元へたどり着く。
「……生きてるよな……?」
胸の上下にわずかな動きを見て、ルークはほっと安堵の声を上げる。
「大丈夫そうだ!!」
その声に、セレナも涙ぐみながら頷いた。
だが、周囲の森は一層早く枯れ始めている。
「ルーーーーーク!! お前の力で祭壇に……封印を、なんとかできないかぁぁぁ!!」
アベルが魔物を斬り伏せながら叫ぶ。
「くまさん多いわねぇ」
「いや、母さん、それ魔物だって!」
「ていうか、封印って……どぉぉぉすりゃいいんだよぉぉぉ!!」
「お前が毎日畑でやっているように……土壌を豊かに、だ!周りの森を見てみろ、枯れてきてるだろ!あれを何とかするんだ!」
「よくわかんねーけど、やってみるよっ!!」
ルークは祭壇に両手をつき、深く念じる。
『――フォースを信じよぉぉぉ!』
いやいや、そうじゃない!! チャラいスーツの男の笑顔を思い出して、首を振る。
「……ちょっとだけボーナスで、なんとかしてくれぇぇぇ!!」
叫ぶように心をこめ、ルークは自分の中の“力”を森へと放とうとする――。
(続く)




