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「サロンにて」

案内された部屋は清潔で明るく、カーテンの隙間からは湖の光が差し込んでいた。ミーナは部屋に入るなり「ひゃっほぉぉいっ!」と叫んで走り回り、ベッドに飛び乗って跳ねはじめる。


「ミーナ、ベッドは跳ねるもんじゃねぇぞ……」


 苦笑しながらルークが注意するが、ミーナは「ふかふかぁぁ〜」と笑って転がるだけだった。猫たちもそれに続き、ベッドの上で丸まったり跳ねたりと大騒ぎだ。


 優しく見守るメイドが「元気なお嬢様ですね」と微笑む。


 荷物を置くと、「それでは、サロンへご案内いたします」とメイドが言い、一行は再び廊下へと出た。


 サロンは広々としていて、天井が高く、壁には繊細な花の模様が描かれている。大きな窓からは湖が一望でき、日差しがふんわりと差し込んで、室内を暖かな光で包んでいた。高級な紅茶の香りと、焼き菓子の甘い匂いが漂っていた。


 サロンにはすでにイザベルとセレナが待っており、微笑みながら二人を迎えた。


「お待たせしました。ごめんなさい、少し遅れました」


 ルークが軽く頭を下げると、ミーナも「ごめんなさぁぁぁいっ」とぴょこっと頭を下げた。その仕草に、イザベルもセレナも思わずくすくすと笑みをこぼす。


「ううん、気にしないで。さぁ、座って」


 二人が席に着くと、メイドたちが手際よくお茶の準備を始めた。ティーカップに注がれる音、銀のスプーンが触れ合う音が、心地よいリズムで部屋に響く。


 ミーナは椅子にちょこんと座りながら、足をぶらぶらさせてメイドたちの動きをじーっと観察している。


「すごーい……おしゃけ……くるくるまわしてるぅ……」


 その呟きに、隣にいたイザベルが笑みを浮かべてミーナに話しかけた。


「ねえ、ミーナちゃん。ベルナンのことや、あの赤い宝石のこと、少し聞いてもいいかしら?」


「うんっ、ミーナね、ピカーってなって、キラキラってして、それで、にゃんこが守ってくれたの!」


 嬉しそうに話すミーナに、セレナとルークが補足を交えて、できる範囲でその時の出来事を話す。


 話題がミーナの作ったジュースやスイーツに移ると、ミーナはますますご機嫌に。


「とまとジュース、あっまくて、ちょっとひえひえで、おねーちゃんたち、のんでくれたよね!」


「もちろん。とってもおいしかったわ」


 イザベルが微笑むと、ミーナはふにゃぁととろけた笑顔を見せた。


 サロンの大きな窓の向こうでは、猫たちが芝生の上で跳ね回っていた。小鳥のさえずりとともに、平和で穏やかな時間が流れていく。


(……いい旅だな。本当に)


 ルークは紅茶をひとくち飲みながら、そんなことを静かに思った。



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