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そして森へ

──翌朝──


「おはよう」


朝日が窓から差し込み、まだひんやりとした空気の中、亮が静かに声をかける。


「おぉ、亮か……おはよう。眠れたかい?」


ルークが眠たげに目をこすりながら、大きく伸びをした。木の床がみしりと鳴る。


「おはようございます」


レイナがやわらかな笑みを浮かべて現れ、木製のカップを静かにテーブルへ並べる。その中には香ばしいハーブ茶が注がれていた。


「あっ、おはようございます。亮です」


亮も立ち上がり、丁寧に頭を下げる。ふと気づいたようにあたりを見回す。


「……ん? 美月は?」


「ミーナたちはまだ寝てるよ(笑)」


ルークが肩をすくめて笑い、指先でカップをくるりと回す。


そのとき、レイナがふわりと立ち上がった。


「猫さんたちぃ、起こしてきてくれるかしらぁぁ」


「にゃあにゃあ」


何匹かの猫たちが、返事をするように小さく鳴きながら、軽やかに階段を駆け上がっていく。


(……ふしぎなねこだなぁ、おい)


亮が思わず心の中でつぶやいたそのとき、


「おにぃぃぃぃ、おはよぉぉぉ!!」


階段の上から勢いよく飛び出してきたミーナが、笑顔いっぱいでルークに抱きついた。


「おはよう、ミーナ」


ルークは小さな体を優しく受け止め、頭をなでてやる。


「せんぱぁぁい、おそようございまぁす」


「何言ってんだよ、お前は……」


亮が目元を緩めながらも、あきれたように頭をかいた。


「みんな、顔洗ってきなさぁぁい。ご飯にしますよ〜」


レイナの声がキッチンから響き、家の朝が一斉に動き出す。



「先輩、昨日の夕食の時も思ったんですけど……お野菜がとてもおいしいんです」


美月が木製のスプーンですくった温かい野菜スープをふぅふぅと冷ましながら口に運ぶ。


「ああ、めちゃくちゃうまいよな、ここの野菜」


亮も木のフォークで根菜を刺し、しみじみと頷いた。


「お野菜はねぇ、おにぃが育ててるからおいしいんだよぉ」


ミーナが自慢げに胸を張る。


「そんなこと言ったらお父さんがすねちゃうわよぉ」


レイナがくすくすと笑いながら、食器を拭きはじめる。


「あれ? 旦那さんは?」


亮がきょろきょろと辺りを見回す。


「アベルなら、もう畑に行ってるわ」


「流石、農家ですねぇ」


美月が感心したように微笑む。



「母さん、今日はこの人たちとちょっと森まで行ってくるよ」


ルークが背負い袋を整えながら言う。袋の中には木製の水筒と手作りの弁当、冷たい麦茶の小瓶が詰まっている。


「もぐもぐ、ミーナもぉ……もごご」


「ちゃんと飲み込んでから話しなさい」


レイナが優しくたしなめ、ミーナはぺろっと舌を出して頷いた。


「はぁぁい!」


「気をつけていってらっしゃいね。……後片付け手伝ってちょうだい」


「うん、母さんありがとう」


「おにぃぃ、とまと持ってくぅ〜」


ミーナが元気よく立ち上がり、小さな籠を手に取る。


「うんうん、今日もミーナは天使だなぁ」


ルークが微笑みながらその頭をぽんぽんと撫でた。


「じゃあ、行こうか」


「ミーナねぇ……あの場所……覚えてない……」


少し不安げに俯くミーナ。


「大丈夫、大体の場所はおにぃが覚えてるから」


その言葉に、ミーナの顔がぱっと明るくなる。



朝の森。


木々の梢から差し込む光が、地面の露に濡れた草を金色に染める。

やわらかな風が葉を揺らし、さわさわと涼やかな音を奏でる。


ルーク、ミーナ、亮、美月、そして猫たちが、けもの道を一列になって歩いていく。


「とりあえず、危険な動物はいない感じだなぁ……」


ルークが周囲を見渡しながら小声で呟く。


「先輩、きっとフォースですよ、フォースで感じてるんですよ!」


「お前はいつも楽しそうで羨ましいよ(笑)」


亮が苦笑しながら、目の前の景色に視線を馳せる。


鳥のさえずり、木々の香り、湿った土の匂い。

あらゆる感覚が、静かに彼らを包み込んでいた。


やがて、小高い丘の上にたどり着く。


そこから見渡す森は、朝の静けさをそのままに、やわらかな陽光に包まれていた。


「……あったかいな、ここの朝」


亮がふと呟く。


その言葉に、誰もが足を止めた。


一陣の風が頬を撫で、鳥の羽ばたきが空を横切る。


「ここだよ……たぶん、あの蜂蜜のおばさんと会ったの」


ミーナが振り返り、そっと口にした。


その声に、全員の表情が引き締まる。


「じゃあ、もう少しこの辺を探してみるか」


朝の光が、静かにその丘を包んでいた。



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