ルークはフォースを信じるか?
赤い案山子の下──
夏草の匂いが混ざる中で、ルークは改めて、二人の姿を見た。
男は、シャツにジーンズ。女の子のほうは、Tシャツ、花柄のスカートにスニーカー。
ルークの記憶にこびりついている、あの世界──かつて自分がいた「日本」という場所でよく見かけた、ごく普通の格好だった。
(まちがいねぇ……この二人、俺と同じ世界から来たんだ)
ミーナは草の上にしゃがみ込み、猫たちと一緒に二人をじっと見ている。
スノーがぴょいっと男性のジーンズを嗅いで、にゃっと一鳴き。
クロとトラ吉も、少しだけ警戒を解いた様子で、ミーナの足元に戻ってくる。
「おにぃ、えっとね、この人たち、ここがどこかって訊いてたの」
ミーナはそう言って、どこか誇らしげに胸を張った。
「だから、ミーナ、ちゃんと教えてあげたよ!」
「……教えた? なんて?」
「『お兄ちゃんとミーナの村』だよ! えへへっ!」
「……俺、村長じゃないけどな……(笑)」
苦笑しながら、ルークは肩をすくめる。
「まぁ……たいした名前のあるような村でもないしな。地図にもたぶん載ってない」
すると、女性のほうがふんわりと笑いながら言った。
「そっか」
その声はどこか安心したような響きだった。
そして、背の高い男性が名乗った。
「俺の名前は、風間亮。こっちは──」
「美月! あたしは美月!」
「……あぁ、佐倉美月っていうんだ」
(風間亮……カッコいい名前だなぁ、外人部隊にいそうだな、いやあれはシンか(笑)。それと美月、か。……ミーナの方が百万倍かわいいけどな!!)
ルークはそんなことを思ったが、もちろん口には出さなかった。
「俺の名前はルーク。で、こっちの可愛い天使がミーナ、妹だよ」
「て、天使ぃ?」
亮がぽかんとしている横で、美月がキラキラと目を輝かせながらミーナを見つめた。
「ミーナちゃん、すっごく可愛いね……! 先輩先輩、男の子も可愛いけど、女の子、すごくかわいいですよ……!」
「いや、分かるけど落ち着け美月。ちょっと距離感が……!」
美月はミーナのほっぺたを指でぷにぷにし始める。
「にゃふ……おにぃ〜、なんかこのおねえちゃん、ほっぺた触ってくるぅ〜」
「まぁまぁ、害はないから大丈夫だぞ、ミーナ。……たぶん」
猫たちもすっかり警戒を解き、トラ吉が亮の足元でごろーんと転がっていた。
「それにしても……ルーク君というんですねぇ……」
美月がニヤニヤしながら、ちょっと前のめりに寄ってくる。
「フォースを……信じていますか?」
「おい! なにぶっ込んでんだよ、おまえ!」
亮が即座にツッコミを入れる。
「え? ちがうの? だってルークって言ったら、あの──」
「スターウ○ーズの話はいいから!!」
(あぁぁぁ……まちがいねぇわ。完全に、あの世界の住人だ)
ルークは内心でうなずきながら、二人に向き直った。
ミーナは首を傾げて、不思議そうに三人を見比べている。
頭の上には“?”マークが浮かんでいそうだった。
「とりあえず……話はあとだ。暑いし、うちに来いよ。冷たい麦茶と、トマトあるぞ」
「麦茶……! あるんですか!?」
「すごい……本当に、異世界にも麦茶あるんだ……!」
テンションの高い美月と、それに振り回される亮。
その横で、ミーナはそっとルークの手を握りながらぽそっと言った。
「おにぃ……ミーナね、ちょっとだけ……この人たち、ほっとけない気がするの」
「……そうか。じゃあ、うちで少し休ませてあげような」
「うん!」
──赤いかかしが見守る中、新たな客人を連れて、ルークとミーナは家へと歩き出す。
新しい出会い、新しい謎、でもなにより──
やっぱり、今日もミーナは世界一可愛かった。
亮と美月は「温泉地で異世界転移-ジムニーに謎の力が宿っていた」で異世界でオトボケしている二人です。そちらの方も時間が有りましたら、のぞいてみてください。




