表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

57/275

「緋陽草の芽、そして始まりの市──王都を照らす芋の光」(後半)

王都エルデン──王宮裏庭。


「お兄ぃ~~っ!」


ミーナが駆け寄ると、ルークはもう我慢できないとばかりに彼女をむぎゅっと抱きしめた。


「ミーナ~~~!! 足りなかった……ミーナ成分が圧倒的に足りなかった……!!」


「ふにゃ!? え、ええっ!? どうしたの!?」


「畑がさ……うまくいかねぇんだ。育たねぇ、土が泣いてんだよ。俺も泣きそうでさ……いや泣いたわ」


「ええ〜!? でも、じゃあ……うちの芋、持ってく? 緋陽草も咲いてるし!」


ミーナはそう言って、裏庭の芋畑を指差した。

そこには、芋の葉の間に、赤く小さな花──緋陽草が風に揺れていた。


「うん……これだ。お前の芋と花が、俺を支えてたんだ。間違いねぇ」


ミリーナが静かに歩み寄り、そっと芋畑の土をひと握りする。


「……まるで、ここだけ別の空気が流れているみたい。この土と芋、そして……ミーナちゃん。あなた自身も、希望なのね」


「えへへ……ほめられた〜!」


ルークは決意を込めて妹を見つめる。


「──ミーナ、ベルナンに一緒に来てくれ。お前がいないと、本当にダメかもしれん」


「えっ……わ、わたしが!? え、うんっ、いいよ! 行くーっ! お兄のために、いもバッグにいっぱい詰めてくね!」


猫たち:「にゃー!(遠征メンバー追加だ!)」


ミーナはリュックいっぱいに芋を、そして木箱に緋陽草の苗を詰め、麦わら帽子を被り直した。


王妃がそんなミーナの肩をそっと抱く。


「行ってらっしゃい、ミーナちゃん。王都の希望も、あなたに預けるわね」


「うんっ! ぜーったい、ベルナンも笑顔にするよ!」


──こうして、王都の小さな畑で育った芋と緋陽草、そして笑顔の妹が、再び旅立つ。




ベルナン──再生農地。


「……土の匂いが、変わってきた。空気まで軽い。これって……」


「ミーナの“ぬくもり”だよ。あの子と芋は、セットで魔法だからな」


「うわ〜! この土、ふかふかだ〜! おいも、きっとよろこぶ〜っ!」




数日後──


「発芽しました! 緋陽草、根付きました!」

「芋のつるもすごい勢いで伸びてます!」

「ミーナちゃん、こっちこっち! 水やりお願い!」


「はぁ〜いっ! にゃーたちも、がんばろーっ!」


ミーナが笑うたび、畑がやさしく揺れる。

そして──その地に“命”が戻ってくるのを、人々は目の当たりにしていた。


──“小さな命”が、国を変えようとしている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ