「姉妹の再会、」
王宮の東の離宮。
陽の光が差し込む小さな応接間で、静かに再会を果たすふたりの王女がいた。
第一王女ミリーナ。
そして、末の第五王女──レイナ。
「……顔色は良さそうね、レイナ。遠く離れた地でも、元気にしていたようで何より」
「姉上こそ……相変わらず凛としていて、誇らしいです。あの頃の私には眩しすぎたけれど」
ミリーナはかすかに微笑んでから、テーブルの上の茶をひと口。
「あなたが“王族”を捨ててまで選んだ生き方……その意味が、今ようやく、私たちにも見え始めたのかもしれないわ」
レイナは頷き、静かに目を伏せる。
「私は──王女である前に、母になったの。ルークの母として、あの子の歩む道を信じていたい」
「……だからこそ、私は“王”としてその道に応えなければならないのね」
ミリーナはそう言って立ち上がり、レイナの手をそっと取った。
「王家の姉妹として、民を守る。──一緒に、やってみましょう」
「はい、姉上」
姉妹の手が重なった瞬間、かつてのベルナンの“緑の誓い”がふたたび芽吹きはじめた。
-畑のはじまり、土と誓い
そのころ、ベルナン郊外の農地跡地では──
「まずは一枚目の畑からだ。段階的に地力を戻す。水脈の確保も……必要だな。んー、こっちに小さな貯水池作って……」
ルークがしゃがみこんで地図に指を走らせると、猫のクロがしっぽでそれをなぞる。
「にゃー(ここ掘れニャ)」
「ん? ……お、こっちの土、まだ生きてるな。よし、最初の試作はここにするか」
「ルーク様。資材と労働隊、準備整いました!」
「王族の参加も確定したそうです!」
「王子殿下と姫様方が、交代で農地に顔を出されるとのこと!」
「……本当に、やる気になったんだな。なら、こっちも応えねぇと」
ルークがにやりと笑い、スコップを肩に担いだ。
「ベルナン再生農地プロジェクト、始動だ──!」
そして、その空の向こうでは──
王都で芋を見守る小さな妹が、今日も笑顔でお水をあげていた。




