「姉と妹、再会の間に──そして、荒れた大地」
ベルナン王国──
かつて「緑の王国」と呼ばれたその地は、今や茶けた風が吹く、乾いた景色の広がる国へと変わりつつあった。
ルークたちが王都に到着した日、王宮では控えの間に通され、やがて謁見の間へと案内される。
玉座の間、厳かな空気の中で、王と数名の王族たちが立ち並んでいた。
その中の一人、端正な表情に柔らかな気品をたたえた女性が、歩み寄ってきた。
「……まさか、ほんとうにあなたが来るとは……レイナ」
静かな声とともに、彼女は目を細めた。
レイナは一歩前に進み、ゆっくりと微笑んで頭を下げる。
「お久しぶりです……姉上」
第四王女・エレナ。
かつては城内の学び舎でレイナに読み書きを教え、誰よりも妹を大切にしていた存在──
だが時が流れ、ふたりは別の道を歩み、王宮で再び向き合った。
「あなたが……“あの人”と共に姿を消したとき、私は……」
エレナの声が少しだけ揺れた。
レイナは何も言わず、ただ静かに、その手を取った。
「……ごめんなさい。でも、私は……この子たちと出会って、幸せでした」
その言葉に、エレナは微かに瞳を伏せた。
ルークは少し離れてそのやりとりを見ながら、(姉……?)とやや困惑気味にセレナに尋ねる。
「第四王女エレナ様。かつては政務を支え、女王候補とも言われた方よ。
レイナ様は……王家最年少の姫だった。誰にとっても、“宝石”のような存在だったのよ」
「ホントに王女様だったんだなぁ
……なんか、そのへんの貴族より全然すごい家系だったんだな……うち……」
猫たち:「にゃー(庶民じゃなかった)」
数日後──
ルークは王国の農政官に同行し、荒れ果てた農地へと足を運んでいた。
そこには、かつて作物が実っていたであろう大地の名残だけが残っていた。
枯れた茎、かさついた土、崩れた用水路。
いまやその姿は、豊穣の面影さえ残っていなかった。
「……風で表土が飛んでる。雑草も生えてない。水が巡ってねぇ。
作付け以前に……これは“土地”として死にかけてる」
ルークはしゃがみこみ、手にとった土を指の間でふるう。
「……でも、根の深いところにまだ水脈が残ってる。
土も、ほんのわずかだけど、呼吸してる。ギリ……間に合うかもしれねぇな」
農政官たちの顔に驚きが走る。
「その判断を……見ただけで?」
「見て、触って、嗅いで、聴いて、感じた。
農家はな……毎日、土と会話してるんだよ」
──この青年はただの“土いじりの男”ではない。
本物の「再生者」だ。
ルークは立ち上がり、ベルナンの空を仰ぎ見た。
「やるよ。条件が整えば、全部やってやる。」
風が吹く。
かつて緑に包まれた大地が、再びその姿を取り戻すかどうかは──
今このときに、かかっていた。




