「さつまいも vs くり! 秋の味覚戦争、まさかの開幕!?」
「ミーナちゃん、こっち、すっごいホクホクだよー!」
「うにゃ~! このくり、モフい! 甘い! モフい!(にゃふぇ談)」
秋晴れの広場に、小さな子どもたちと猫たちが集まって、即席・味覚バトル大会が開催されていた。
発端はミーナの一言だった。
「とまと終わっちゃったし……今の“いちばんおいしいもの”、決めようよ!」
こうして始まった、“秋の味覚まつり”番外編――「さつまいも vs くり」。
村の子たちがそれぞれのチームに分かれて、芋を焼いたり、くりを剥いたり、にゃふぇはどちらのチームにも出たり入ったり。
「いもチーム、バターとシロップつけて焼いてみた~!」
「くりチーム、ミーナちゃんの家のはちみつで“くりペースト”作った!」
「ちょっ、ずるい! それ反則スイーツじゃん!」
「いいでしょ~ふふふ~♪」
――と、にぎやかな子どもたちの声を少し離れて聞きながら、兄・ルークは畑の隅でしゃがみ込んでいた。
「……なんで……この芋、こんなに甘いんだ……」
さっき試しに掘った**“なんか丸くて大きいさつまいも”**は、
皮をむかなくてもほんのりバターの香りがして、
焼いたら勝手に蜜が出てくるという、いかにも怪しい芋だった。
「別に、変な肥料まいてないんだけどなぁ……」
少しだけ、彼の中で何かの予感が膨らむ。
“育てた作物が、妙に美味しくなってる”
“栽培速度も少しずつおかしい”
“トマトのときもそうだった”
……でも今は、それよりも。
「まあいいか、楽しそうだし」
妹の笑い声と、子どもたちのにぎわいに包まれて、
ルークはスコップを手に、また新しい芋を掘り始めた。
甘い香りが、秋空の下にふわりと広がっていく。




