「ミーナ、にゃにゃふぇ農園をはじめる?」
「兄ー! これうえたい!」
ミーナが畑に駆け込んできた。手には、近くの市場で拾ったというちいさな球根のようなものが数個。
まるっこくて、土のにおいがして、それを頬ずりしているミーナは、どう見てもバカかわいかった。
「……ミーナ、それ多分、にんにくとかそのへんのやつだな」
「にゃふぇが、冬は“あったかいの”がいいってー!」
「おまえ、猫に農業方針決めさせるのか」
と、言いつつルークは膝をついて球根を受け取る。
手に取ったそれは、たしかに冬植えに向いていそうな品種だった。
(……育ててみるか)
「にゃにゃふぇ農園、はじめまーす!」
「お前もう店じゃなくて農園なのか」
ミーナはすっかりその気だった。
小さな看板まで自作して、にゃふぇたち猫族とともに、畑の一角に縄で区画を作り始める。
「ここは“あたたかゾーン”! こっちは“あまゾーン”!」
「おう、気候と関係なくゾーン分けるのやめろ。あと“あまゾーン”ってなんだよ」
そんな調子で、兄と妹と猫たちの“冬支度”が始まった。
あいかわらずのんびりした農家ライフ……だけど、どこか、ほんの少しずつ。
ルークの手が土に触れるたび、
ミーナが笑うたび、
畑には、見たことのない芽が顔を出しはじめる──




