表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/276

「ミーナ、おすましスイーツ嬢になる!?」

朝。


村の空気はすっかり秋めいて、冷たい空気にほんのり甘いトマトの香りが混じっていた。

裏庭では、今日もミーナがにゃふぇ(猫の長)たちとごそごそと何やらやっている。


「にゃふぇ、こっちにテーブル! それから、カップを三つ並べて……そうそう、おすまし顔でにゃ!」


「……また何やってんだ?」


ルークがのぞきに行くと、そこには小さな“即席カフェ”が広がっていた。

木箱をテーブルにして、布をかけて、ちょっとだけ貴族っぽいティーセット(実はおもちゃ)が並べられている。


ミーナは、赤いリボンをきゅっと結び、にこーっと笑った。


「いらっしゃいませっ、おにーさま! 本日は“ミーナのとまとしゅいーつかふぇ”へようこそ~♪」


「お、おう……!?」


「こちら、本日おすすめの“きらきらトマトゼリー”でございます♡」


見れば、ちょっと溶け気味のゼリーが木の皿に盛られている。

味見用にと摘んでみれば──


「……おっ? ちゃんと甘い。ていうか、うまい」


「えへへ~、すごいでしょ! ミーナ、がんばったの!」


そう、それは数日前、ミーナが言い出したことだった。


「ミーナも、みんなに“おいしい”って言ってほしい!」


にゃふぇたちと一緒に、兄の育てたトマトをすりつぶし、はちみつとゼラチンの代わりに採れたばかりの“ねば草”の液を使って固めた。

失敗もしたけど、今日はちゃんと“成功”の味がする。


「……やっぱりお前はすごいな、ミーナ」


「えへっ、ミーナ、かふぇじょーになるの!」


「カフェ嬢!?」


兄はなんとも言えない表情で笑った。


その日、ミーナの“スイーツカフェごっこ”は、村の子どもたちに大人気となった。

途中で通りかかったセレナ(領主の娘)や、猫たちも参加し、即席カフェはいつの間にか“ミーナ食堂”に格上げされていた。


兄ルークは、それを遠巻きに眺めながら、手帳を開く。


(……やっぱり、収穫時の糖度が上がってるな。去年の2.4倍? これ、明らかに“農業スキル”入ってるだろ……)


だけど、それをわざわざ騒ぎ立てることはしない。


この小さな幸せを、静かに育てていきたい。

ミーナの笑顔がある限り、ルークの“農家ライフ”はまだまだ続くのだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ