「兄の畑、どうなってんの……?」
◆きっかけは、土
ある朝、いつものように畑に出たルークは、
異常に葉の色が濃いズッキーニを見て眉をひそめた。
「……ん? 肥料、変えてないよな……?」
試しに引き抜いてみると、根がまるで“菌根”とでも言いたげに、
土と強く絡まり、まるでネットワークのように広がっていた。
「……こんなの、普通じゃ……」
そして気づく。
──自分がスコップを入れた場所だけ、土壌の微生物バランスが“極端に整っている”ことに。
◆誰も気づかない「手入れ」
「お兄~、ここのミニトマト、またすごく甘いよぉっ!」
「ちょっと前に苗を植え直しただけなんだけどな……」
気づいているのはルークだけ。
たとえば、彼が「軽く手を入れた」畝だけ、
異常なほど生育が早い。
虫がつかない。
病気にならない。
しかも味は格別。
──まるで、作物が“ルークの願い”に沿って育っているかのように。
「俺……何かやってるのか? いや、やってるんだけど……」
◆ひとつの仮説
その夜、セレナがこっそり畑を見に来た。
「この土……いや、“この畑”自体が、生きてるみたい」
驚いたルークに、セレナが静かに告げる。
「ルークさん、あなたの“魔素”の流れ、普通の人と違います。
もしかして……気づいてませんか?
この村の“畑の気配”が、全部あなたの方に向いていることに」
──ルークの農業スキル、それは単なる知識や経験ではなく。
“無意識の魔力供給”によって、
「土地」そのものを、理想の形に調整してしまう能力だった。
◆本人、まだ自覚なし
「いや、そんな馬鹿な話……だって俺、魔法なんて習ったことも……」
「無意識でできてるのが一番危ないんですよ!?」
「やめろよ、プレッシャーかけんな……!」
──けれどその“農業魔法”のチートぶりは、
次第に“スイーツ素材の品質革命”として王都に伝わり始めることとなる。




