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ミーナの冒険―――猫たちに会えるのか!?―――

「にぃに、わたし……猫たち、待ってるのです!」


その声は軽やかで、けれどどこか不安を含んでいた。ルークはその声を聞きながら、彼女の背中に手を置き、柔らかく微笑む。


「そうだな、待っていよう。でも、猫たちもきっと無事だと思うよ」



しかし、数日が過ぎても、猫たちは帰ってこなかった。最初は楽しい冒険をしているのだろうと想像していたミーナも、日に日に表情が曇りがちになり、口数も少なくなっていく。干し草の上に残された足跡書状を握りしめ、窓の外をじっと見つめる姿に、ルークの胸も痛んだ。


「ミーナ……もう少し待ってみような……。」

ルークは言葉をかけるが、彼女の小さな肩はふるえて、まだ不安を拭いきれない。


その様子を見ていたギャリソンは、静かに部屋に足を踏み入れる。背筋をぴんと伸ばし、黒いマントの裾を揺らしながら、落ち着いた足取りでミーナの近くに立った。

「どうやら、そろそろ行動を起こす頃合いのようですね」

ルークは驚きながら。

「ギャリソンさん、また来てくれたんですか?」


ミーナはふと顔を上げ、ギャリソンに小さな声で言った。

「ギャリソンさん、猫たち……大丈夫ですか……?」


ギャリソンは軽く首をかしげ、穏やかな笑みを浮かべる。

「猫たちは冒険心旺盛ですから、きっと無事でしょう。ただ、道に迷うこともあります。そういう時は手助けが必要です」


その言葉に、ルークは立ち上がり、胸の内のもどかしさを抑えきれなくなった。

「ギャリソンさん、お願いします! 猫たちを探したいのです! どうしたらいいか分からないけれど、手伝ってください!」


ギャリソンは静かに頷いた。

「わかりました。私の方でも少々調べておきましたので、道筋はおおよそ把握しています。準備が整い次第、二人を案内しましょう」


その言葉に、ミーナの俯いていた顔がぱっと明るくなる。小さな手でルークにしがみつき、目を輝かせて声を弾ませた。

「にぃにぃぃ~! 探しに行くのです! 」


ルークは微笑みながら、そっとミーナを抱き上げた。

「よし、二人で行こう。ギャリソンさんが居れば大丈夫だ」


ギャリソンは一礼し、部屋の扉を開ける。

「では、行きましょう。」


アベルとレイナも納得した様子で頷き、ミーナとルークの出発に目を細めた。

「道中は気をつけるんだぞ」アベルが声をかけ、レイナも「怪我をしないように、でも楽しんでいいのよ」と付け加える。


小さな農家を出た三人は、風に揺れる草の間を軽やかに歩く。ミーナは嬉しそうにぴょんぴょんと跳ね、ルークの手を握ったまま、あちこちをきょろきょろと見渡す。ギャリソンは少し距離を置き、後ろから付いてくる二人を見守る。


「にぃに、ここはあのときの小川のそばです!」ミーナが指差す。

「そうだね、少し匂いを嗅いでみよう」ルークは柔らかく答え、草むらの匂いを嗅ぎながら歩く。


道中、ミーナは小さな声で何度もつぶやく。

「猫たち、元気にしてるのですか……?」

ルークは微笑みながら、手をぎゅっと握り返す。

「きっと元気だよ、ミーナ。だって冒険が大好きなんだから」


ギャリソンは前方を見据え、低い声で呟いた。

「無事に見つける、そして帰る……それが我々の仕事です」


途中で小さな丘に差しかかると、ミーナは目を輝かせた。

「にぃに、あそこに行ったら、もしかして猫たちに会えるかもなのです!」

ルークは頷き、ギャリソンも「可能性は十分にあります」と答える。


三人は丘を越え、細い森の小道を進む。ミーナは軽やかに枝をよけながら、くるくるとルークの周りを回る。ギャリソンは少し苦笑しながら、渋く見守る。


日差しが柔らかく、草の匂いが風に乗って漂う。ミーナは何度も立ち止まり、耳を澄ませる。

「にぃに、もしかして……あそこに……」

ルークはそっと彼女の肩に手を置き、視線を合わせる。

「焦らなくていいよ。少しずつ確かめながら行こう」


その後も三人は川沿いの小道を進み、倒木やぬかるみを避けながら、コミカルに互いの歩調を合わせる。ミーナは時折、笑いながら枝に引っかかり、ルークが手を差し伸べて助ける。ギャリソンは背筋を伸ばしたまま、「慎重に……しかし迅速に」と心の中で指示を出す。


途中で小鳥に驚いたミーナが跳び上がり、「きゃっ!」と声を上げると、ルークも笑いながら手を握る。ギャリソンは静かに首を振りつつも、その微笑ましい光景に目を細める。


夜が近づくにつれ、三人は川のせせらぎを頼りに進む。ミーナは小さな手でルークの手を握り、嬉しそうに言った。

「にぃに、もう少しで猫たちに会えるのです!」

ルークは頷き、ギャリソンも「もう少しです」と短く答える。


道中、森の中で小さな野ウサギやカエルに出会うたび、ミーナは「わぁ!」と跳ね回り、ギャリソンは落ち着いたまま観察する。ルークはその様子を見ながら微笑み、疲れた表情は見せない。


空が茜色に染まりだした頃、三人は川沿いの小道の分かれ目に立つ。迷いながらも、ミーナはくるくると回り、ルークに小さな声で「にぃに、きっともうすぐなのです!」と囁く。


ギャリソンは背筋を伸ばし、静かに二人を見つめる。

「無事に、見つけられるでしょう。もう少しです」


ルークは小さく頷き、ミーナを抱きしめながら、「さあ、行こう」と声をかける。

ミーナは小さな声で「はい、にぃに!」と返し、二人でさらに川沿いの道を進む。


道中のコミカルな迷走や小さなハプニングも、今は二人の冒険心をかき立てるスパイスとなる。ミーナは何度も「にゃん、にゃん!」と小さく喜びを口にし、ルークは優しく彼女を支えながら進む。ギャリソンは背後で静かに監視し、時折、「落ち着いて、慎重に」と低く指示を出す。


こうして、三人は猫たちを探しながら、軽やかに川沿いの道を進む。疲れも気にせず、互いに声をかけ、笑い合い、少しずつ前に進むのだった。



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