猫たちの大冒険 ~幻を越えて黄金の猫草へ!~
あの“幻の猫じゃらし事件”から、しばらく時が流れた。
猫たちは再びルークやミーナと穏やかな日々を過ごしていた。
だが――。
「……にゃ」
夜な夜な、畑の片隅で月を見上げる猫がいた。
かつて幻の猫じゃらしに囚われ、夢心地で転げ回ったあの日。
あの“ふわふわ”の感触を、忘れられるはずがなかったのだ。
「……もう一度、あれにゃ……」
「にゃん……ぼくも……」
「わたしもにゃ……」
数匹の猫が互いに顔を見合わせ、静かにうなずき合った。
「行くにゃ」
「探しに行くにゃ」
「幻の猫じゃらしを!」
こうして――猫たちの“第二の冒険”が始まった。
◆◇◆◇
猫たちは夜明け前に屋敷を抜け出した。
畑を飛び越え、野原を駆け抜け、風のように草むらを抜けていく。
「にゃふふふ! 旅に出るにゃ!」
「ごはんは大丈夫にゃ?」
「あとで考えるにゃ!」
行き当たりばったりである。だが猫たちは不思議と胸が高鳴っていた。
――野を越え。
――山を越え。
――谷を越え。
時にカラスに追いかけられ、時に村の犬に吠えられ、時におばあさんの干していた魚を盗み食いして叱られ……。
それでも猫たちはめげずに進んでいった。
◆◇◆◇
やがて、山の向こうに白い湯けむりが立ちのぼるのを見つけた。
「にゃ? あれは……」
「温泉にゃあああ!」
猫たちは歓声を上げ、すぐさま駆け寄った。
そこは小さな岩場に湧き出す天然温泉だった。ぽかぽかと湯気が漂い、心地よい硫黄の香りが漂っている。
「にゃふーん……極楽にゃ……」
「こんなにあったかいの初めてにゃ……」
「もうここで暮らすにゃ?」
「ダメにゃ! 目標は幻の猫じゃらしにゃ!」
だらけそうになる仲間を必死に引き止め、猫たちは再び旅を続ける。
◆◇◆◇
そして、ついに――。
谷を抜けた先の草原に、ひときわ輝く草むらが広がっていた。
そこに風に揺れる一本の草。
「……にゃ! あれは!」
「見つけたにゃあああああ!」
猫たちが駆け寄ると、その草はまばゆい黄金の光を放っていた。
形は猫じゃらしに似ているが、穂先は金色に輝き、揺れるたびに小さな音色を奏でる。
「こ、これは……」
「幻の猫じゃらしを超える、黄金の猫草にゃ!」
猫たちは一斉に飛びついた。
「にゃっはー!」
「ふわふわきらきら最高にゃ!」
「音まで鳴るにゃあああ!」
草原いっぱいに転げ回り、金色の光に包まれる猫たち。
◆◇◆◇
……その頃、屋敷では。
「ミーナ、猫たちが見当たらないんだけど」
「えっ!? どこ行っちゃったの!?」
必死に探し回った末、帰ってきた猫たちを見つけた時には――。
全員、体に金色の草をくっつけて、きらきらと輝いていた。
「……にぃに。なんだか猫さんたち、金ぴかになってるのです」
「……また妙なのに取り憑かれてきたな」
猫たちは胸を張って言った。
「これは黄金の猫草にゃ!」
「幻よりもすごかったにゃ!」
「もう一生分遊んだにゃ!」
その誇らしげな顔に、ルークもミーナも思わず笑ってしまう。
「……まあ、楽しそうだからいいか」
「うん! 猫さんたち、無事に帰ってきてくれてよかった!」
こうして――。
猫たちの“幻を越えた冒険”は、黄金色の笑い声とともに幕を閉じたのだった。
――つづく―――かもしれない……