「おかし会、ひらくのです!」
ある日の午後。
ミーナは、森からもらってきたはちみつの瓶を机に並べて、腕を組んでいた。
「にゃふぇ……わたし、これを“おかし”にしたいのです……!」
にゃふぇ「にゃふ?」
「おにぃのお野菜と、お花と、果物と……このはちみつ! ぜんぶ使って、“すてきなおかし”作るの!!」
にゃふぇ「にゃふぇえ……!(まさかの構想力)」
それを横で聞いていたルークは、ちょっとだけ笑う。
「また急に言い出したな。……で、誰が作るんだ? お菓子」
「……え?」
◇
そして数時間後──
村の広場。小さなテーブルに並ぶ、焼きかけのクッキー、こねかけの生地、謎の材料たち。
ミーナ「みんなで作れば怖くない!!」
猫たち「にゃあああ!!」
なぜか猫たちまで小さなエプロンを身につけ、やる気満々。
その中に、こっそりと──
「……まさか本当に、呼ばれるなんて……」
フードをかぶった小柄な少女。
セレナだ。
「はちみつ入りの焼き菓子……作るのははじめてだけど……楽しそう」
にゃふぇが彼女にタオルを差し出し、そっと尻尾を振る。
◇「おかし会」スタート!
ミーナは、生地をこねては砂糖をこぼし、はちみつを入れすぎて猫の毛にくっつけ……
「うにゃあ!? にゃふぇがねっちょりになったああ!!」
セレナは、そんなミーナを横目に、静かに作業を進める。
「……このくらいの火加減で、じっくり焼けば……」
ルークはというと、後ろでボウルを洗いながら、
「……俺は手伝いじゃない、保健要員だ。あくまで…(怪我すんなよ)」
と、言いつつ、気づいたら甘さ控えめの“にんじんケーキ”を仕込んでいる。
猫たちは、途中でクッキー生地を運び、完成品を整列。
まるで一流のパティスリー。
◇夕暮れ、小さな“おかし会カフェ”が完成。
村の子どもたちが集まり、大人たちも覗きに来る。
テーブルの上には、ほんのり温かいはちみつクッキー、花の香るゼリー、にんじんケーキ、ハーブティー。
「これ……本当に手作り? おいしい!」
「ミーナちゃん、すごい!」
「えっへん!」
ミーナは手を腰に当てて胸を張る。
隣でにゃふぇも誇らしげ。
セレナは、小さく笑って──ふと、言った。
「……また、やろうね。こんどは“ミーナカフェ”って名前にして」
ミーナの目がまんまるになる。
「ほんとっ!? じゃあ次は、ふわふわパンケーキにしよう!」
ルークは、静かに座って子どもたちを眺めていた。
(……ま、悪くない。こんな日も)
その手には、はちみつとミントの効いた一杯の温かいお茶。
──少しずつ、“のどかな革命”が始まっている。




