表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

234/260

王都に忍び寄る影と農園の午後 漆

救出成功と黒幕の影


 ──倉庫街の夜は、激しい戦いの末に静けさを取り戻しつつあった。

 クラウスの圧倒的な力と、ギャリソンの冷静な采配、そして猫たちの機転により、賊たちは完全に制圧された。


 ルークとミーナの導きで子供たちは外へと救い出され、怯えた顔に安堵の色が差し始めていた。


「もう大丈夫だよ。怖かったね」

ミーナは子供の一人の手を握り、優しく微笑んだ。

「にぃにがいるし、みんなもいるから」


 その言葉に泣きじゃくる子供たち。ルークは妹の背を撫でながら、「立派だったぞ」と小さく囁いた。


***


 そのとき、猫たちが一斉に鳴き声を上げた。

 シロが何かを咥えてクラウスのもとへ駆け寄ってくる。


「ん……これは?」

クラウスが受け取ったのは、豪奢な刺繍が施された紋章入りの布切れだった。

「グランデール伯爵家の紋章……なぜこんなものがここに」


 ルークは息を呑む。「ってことは、今回の事件の裏に……」

 クラウスは険しい目を向けた。

「子供を攫って金に換えるような下衆な真似を、ただのチンピラができるはずもない。背後には、確実に“貴族の影”がある」


 ギャリソンが静かに頷き、すでに懐中時計を開いた。

「丁度良い頃合いかと。王都警備隊が間もなく到着するはずです」


 言葉の通り、間もなく甲冑の音が夜を裂き、松明の灯りが近づいてきた。

「そこにいるのはクラウス殿か! 子供たちを保護するために参上した!」


 重厚な声を上げて現れたのは、王都警備隊の隊長であった。

クラウスは深く頷き、子供たちを彼らに託す。

「この者たちを安全に保護せよ。王家の名の下に、命を最優先とするのだ」


 隊長は胸に手を当てて敬礼し、子供たちを守るように部下を配置した。


***


 その後、ギャリソンが指揮を執り、ルークとミーナも警備隊に伴われて移動した。

疲労と緊張から解き放たれた二人は、ようやく一息をつくことができた。


「にぃに……助かってよかったね」

「そうだな。怖かったけど……お前が一番頑張ったよ」


 ミーナは照れくさそうに笑い、隣で丸くなった猫たちを撫でた。

「猫さんたちも……ありがとう」

クロはにゃあと一声鳴き、まるで「任せろ」とでも言うように胸を張った。


 ルークは妹の笑顔を見つめ、静かに思う。

──平穏な日常を守るために、自分はもっと強くならなくては。


***


 数日後。

 王城のとある書斎にて、クラウスは国王の前に立っていた。

背後にはギャリソンも控えている。


「グランデール伯爵が……黒幕、か」

王の声音は重く沈む。


「確証はまだですが、証拠の一部は押さえました。猫たちが拾った紋章入りの布が決定打となるでしょう」

クラウスの言葉に、王の眉間に皺が寄る。


「民を守るべき貴族が、子供を犠牲にするとは……決して許されぬことだ」


 クラウスの眼光が鋭く光る。

「陛下。私は必ず、この陰謀の根を断ち切ります。背後に潜む“意志”を暴き出すために」


 王はゆっくりと頷き、重々しく告げた。

「……任せるぞ、クラウス・グランフィード。王国の未来のために」


 こうして、子供誘拐事件は一応の解決を見たが、背後にはなおも深い闇が潜んでいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ