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「 ミーナ、帰らず──兄、森へ」

日が傾き、畑に影が伸びる頃。


兄ルークは手を止め、空を見上げた。


「……遅いな」


 


ミーナが「探検に行く!」と飛び出したのは、朝のこと。

とっくに昼を越え、村の鐘も夕刻を告げているのに、まだ戻らない。


 


にゃふぇが、さっきから落ち着かない様子でうろうろしていた。


「お前も心配か」


にゃふぇ「……にゃあ」


 


「……わかった。行こう」


ルークは帽子をかぶりなおし、肩に小さな袋をひっかける。

中には干し肉と水筒と、ミーナの好きな木苺の飴がいくつか。


 


「……まったく。ひとりで出てって、戻らないなんて……」


 


森の入り口は、暮れかけの空に照らされて、どこかぼんやり明るい。


小道には、かすかにミーナの足跡──それに猫の肉球──が続いていた。


 


「にゃふぇ、ついてこい。足音立てるなよ」


にゃふぇ「にゃふぇ(ドヤ顔)」


 


そうして、兄の“静かな追跡”が始まった。


 



 


森の中はひんやりして、風が葉を揺らしていた。

ところどころに、ミーナの落としたと思われるリボンや、なぜか小枝で作られた“にゃふぇマーク”の道標。


「……ふふ、やっぱり置いてってるんじゃないか。お前、ちゃんと迷子対策はしてるのかよ……」


ルークの口元に、ほんの少し笑みが浮かぶ。


 



 


しばらくして──森の奥の丘の上。


 


ルーク「……ミーナ!」


 


ミーナ「……あっ、おにぃぃぃぃーーっ!!」


 


猫たちといっしょに草むらでうずくまっていたミーナが、ぱぁっと顔を上げる。


「ご、ごめんねっ! はちみつのおばあさんにもらったの! でも帰り道がちょっとだけわかんなくて……!」


「……はあ。おまえな……」


 


ポン、とルークはミーナの頭に手をのせた。


「大丈夫だ。ほら、水飲んで。戻るぞ」


 


「うんっ!」


 


ミーナのリュックから、ほんのり甘い香りがする。

森のはちみつの瓶──まだあたたかい。


 


 


その帰り道、ミーナはずっとにゃふぇと“スイーツ案会議”をしていた。

ルークは、ただ静かにそれを聞きながら、少し後ろを歩いていた。


「……ま、無事でよかった」


 


にゃふぇ「にゃふぃ(お兄、にやけすぎにゃ)」



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