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ついにきた!! 「ミーナと猫たちの秘密作戦」 

 その日の昼下がり、ミーナは庭先で小さな椅子にちょこんと座り、両手を膝の上に置いて真剣な顔をしていた。

 その様子を、周囲の猫たち――クロ、シロ、トラ、ブチ、その他もろもろ十数匹がぐるりと取り囲む。


「みなのもの!! 聞くのです!!」


 ミーナの声に、猫たちは「にゃあ」「ふにゃ」「ぬぅ」と勝手気ままに返事をする。

 だが、その瞳はきらきらと輝いており、どうやら彼女の言葉に耳を傾ける準備は万端のようだった。


「にぃにのために、なにかしてあげたいのです!」


 そう、これが今回の議題である。

 ミーナは胸を張って宣言した。


「にぃにはいつもわたしを助けてくれるのです。野菜を育てるのも、勉強をみてくれるのも、遊んでくれるのも! でも、わたし……ぜんぜんお返しできていないのです!!」


 猫たちが「にゃー」「ふむ」「なるほどにゃ」と相槌を打つ。

 (実際はたぶん「おやつはまだか」とか「魚くれ」と言っているだけなのだが、ミーナにはなぜか“立派な返事”に聞こえているらしい。)


「だからっ! わたしとみんなで“秘密作戦”をするのです!!」


 そう言って、ミーナは立ち上がり、どこから持ってきたのか棒切れで地面に図を描きはじめた。



■ 作戦会議の始まり


「まず、にぃにがいちばん喜ぶものを考えるのです!」


 棒で大きく「にぃに」と書き、その下に線を引く。

 そこから「野菜」「お肉」「お勉強」「ミーナ」と枝分かれの図を描いた。


「うーん……にぃには野菜が大好き。でも野菜はもういっぱいあるのです」

「にゃー(たしかに)」

「それにお肉はこのまえ狩猟大会で父さまとにぃにがいっぱいとってきたのです」

「ふにゃー(そうだったそうだった)」


 ミーナは悩んだ末、胸に手を当ててぽんっと言った。


「やっぱり――にぃにがいちばん好きなのは、わたしなのです!」


「にゃにゃー!!(わかってた!)」

「ふにゃにゃ!(そのとおり!)」


 猫たちが一斉に同意して盛り上がる。

 そこへアベルの声が遠くから聞こえた。


「ミーナー、なにやってるんだー?」

「ひみつですー!!」


 父の声をばっさり切り捨て、ミーナは再び猫たちに向き直った。


「それなら! にぃににサプライズをするのです! “ありがとう作戦”開始なのです!!」



■ 秘密作戦の準備


 秘密作戦の第一歩は「にぃにのお手伝いをする」ことだった。

 ミーナは猫たちにそれぞれ役割を与える。


「クロは畑の見張り番! トラはお水を持ってくるのです! ブチは……えっと……応援するのです!!」


「にゃにゃああー!(おうえんならまかせろ!)」


 だが、実際にやってみると、クロは畑の大根を掘り返して寝床にし、トラはバケツをひっくり返して水浸しにし、ブチは応援と称してルークの後をついて回り、畑をぐちゃぐちゃに荒らすだけだった。


「ちょ、ちょっと!? ミーナ、これは……」

「うぅぅ……だいじょうぶです! 作戦はまだ続くのです!」



■ 料理大作戦(失敗)


「にぃににごはんをつくるのです!」


 ミーナは猫たちと一緒に台所に立った。

 クロが魚をくわえてきて、シロが玉ねぎを転がし、トラが肉を床に落とす。


「よし! これでカレーなのです!」


 なぜか「魚と玉ねぎと肉」を鍋に放り込み、ぐつぐつ煮る。

 匂いが漂い、家中に怪しい香りが広がっていった。


 そこへルークがやって来て、鍋をのぞきこんだ。


「……お、おいミーナ、これは何を作ってるんだ?」

「にぃにのための愛情カレーなのです!!」

「いや、魚と肉と玉ねぎが丸ごと入ってるカレーは聞いたことないぞ……」


 猫たちが「にゃー!」「ふにゃー!」と拍手するように鳴いた。

 ルークはため息をつきながらも、その姿に思わず笑みをこぼす。


「……ありがとな、ミーナ。でも、これは俺が作り直すからな」

「えへへ……」



■ サプライズプレゼント


 作戦は二転三転し、最後は「にぃににプレゼントをあげる」ことになった。


「みんな! にぃにが大好きなものを集めるのです!!」


 猫たちは一斉に散っていった。

 クロは庭の花をくわえてきて、ブチはどこからか靴下を持ち出し、シロは魚の骨を誇らしげに置いた。

 ……なぜかどれも微妙に不用品である。


 そんな中、ミーナが用意したのは――自分で描いた絵だった。

 大きな紙にクレヨンで「にぃにとミーナと猫たち」を描き、にこにこ顔でルークに差し出した。


「にぃに! これがわたしからのプレゼントなのです!!」


 ルークは驚いたように目を丸くしたあと、優しく受け取った。


「……ミーナ。ありがとな。すごく嬉しい」


 その言葉にミーナの顔がぱあっと輝いた。

 猫たちも「にゃー!」「ふにゃー!」と大合唱して祝福する。



■ 父の乱入とオチ


 そこへアベルがやって来て、腕を組んでにやにや笑っていた。


「なるほど、これが“秘密作戦”ってやつか」

「えっ!? 父さま、なんで知ってるのです!?」

「全部声が聞こえてたぞ」


 猫たちが「にゃあ!?」「にゃにゃ!?」と慌てる。

 だがアベルは優しく頭をなでて言った。


「いいじゃないか。ルークのためにこんなに考えて、ミーナも猫たちも頑張ったんだ。立派だぞ」

「……えへへ。父さまも褒めてくれるのです」


 ルークはちょっと照れながらも、ミーナと猫たちをぎゅっと抱き寄せた。


「ありがとな。ミーナも、猫たちも」


 猫たちは「にゃー!」と叫び、まるで作戦成功を宣言するかのように尾を高く振った。


 ――こうして「ミーナと猫たちの秘密作戦」は、騒がしくもハートフルな大成功(?)で幕を閉じたのであった。


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