「妹と、バカかわいい朝」
「兄〜〜〜っ!」
朝、俺が畑に出ようと扉を開けた瞬間、どこからともなくミーナが飛びついてきた。
「お、おぉっと!?」
バランスを崩しかけた俺の胸に、ミーナの小さな体がぎゅっとしがみついてくる。
ふわふわの金髪が俺の顎に当たって、くすぐったい。
「どした、ミーナ。まだ眠いんじゃないのか?」
「ん〜、兄がいないと寒いの」
そんなこと言って、もう夏だぞ。気温25度あるぞ。
「……布団に戻って寝てなさい。ほら、日が昇ったら鶏も起きるぞ」
「やだ。兄と一緒がいいの。畑、手伝う!」
「お前、クワ持てないだろ」
「持てるもん! 昨日、ちょっとだけ持てたもん!」
……俺が手を添えてただけだ。
だが、口を尖らせて「ふんっ」と胸を張る姿があまりに必死で、つい笑ってしまう。
「わかった、わかった。じゃあ一緒に行こう。ミーナには“かかしの見張り”を任せよう」
「やったぁ! ミーナ、世界一のかかし番になる!」
張り切って玄関を飛び出していく妹。
……だが次の瞬間。
「に゛ゃっ!!」
「おい、転ぶなよ……って、言ってる側からこけたーッ!」
段差に足を取られ、顔から草に突っ込むミーナ。
でもすぐにムクリと起き上がり、鼻に草つけたままキラキラ笑顔。
「兄ぃ、ミーナがんばるから、見ててねっ!」
……ああもう、可愛すぎる。
「風邪ひくなよ。こけるなよ。あと虫には気をつけろよ」
「うんっ!」
今日も、俺の“平凡な”農家ライフは、妹のおかげでぐらぐらと揺れ続けている——。