表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

199/260

ルーク再び暴走!? 狩猟大会とリックの背格好事件

「ん? ……ん…うぅん?」

ルークが畑の脇を歩いていた時のことだった。


視線の先で、アニーが洗濯物を干している。そのそばで、彼女の弟――リックが木陰にしゃがみ込んで猫と遊んでいた。


「リックって……ミーナと同じくらいの背格好じゃないか?」


ルークは、ふと立ち止まる。

アニーの弟リックは確かに少年だ。十歳に近いはず。けれど背丈はミーナとほとんど変わらず、華奢そのもの。


(おかしい……! 肉が足りていないのではないか!?)


脳裏にかつての事件がよみがえる。――そう、ミーナが妙に元気がないときに「肉不足だ!」と大騒ぎして、村じゅう巻き込んだあの悪夢である。


「まさかリックも同じ……いや、それ以上かもしれん!」

ルークの瞳がぎらりと輝く。


 


「えっ、ルーク?」

アニーがきょとんと振り向いた瞬間、ルークは彼女に詰め寄った。


「アニー! お前、弟にちゃんと肉を食わせているのか!?」

「へっ!? い、いや……その……普通に食べてますけど」

「普通ではダメだ! 肉は男の成長を左右する重要要素なのだ! このままではリックが……いや、村の未来が危うい!」


「村の未来!?」

アニーはぽかん。だがその後ろでリックは小さく「えっと……ぼく、べつに元気ですけど……」と呟いた。


しかし、ルークの耳には届かない。


「これは大問題だ! すぐに肉を調達しなければ!」

「で、でも畑の仕事もありますし……」

「そんなものは後回しだ! 肉だ! 肉を狩るぞ!」


 


こうしてルークの暴走が始まった。


 


◆狩猟大会、開催!?


翌日。

なぜか村の広場には人だかりができていた。


「えー、本日、ルークの発案により――“第一回・村人総出の狩猟大会”を開催します!」

「おおおおおっ!」


なぜこうなったのか村人も分からない。けれど祭り好きの彼らは「面白そう!」でまとまってしまったのだ。


「優勝者には豪華賞品――アニーお手製の“肉料理一年分券”が贈られます!」

「おおおおおおおおっ!!!」


「って勝手に賞品決めるなぁぁぁ!」

舞台裏でアニーが悲鳴を上げたが、もう遅い。群衆は盛り上がっている。


 


「よし、リック! お前も出場だ!」

「え、ぼくも!?」

「当然だ! 肉はお前のために用意するのだからな!」

「……あの、べつにそんなに欲しいわけじゃ……」

「遠慮するな! これは兄としての義務だ!」

「兄!? ルーク何言ってんの!?」


アニーの必死のツッコミも、ルークの耳には届かない。


 


◆親子の因縁対決!?


やがて大会が始まった。

弓や槍を持った村人が森へ散り、獲物を追う。


ルークも当然参戦していた。

「見ていろ! 俺がリックのために肉を狩りまくってやる!」


そこへ――。


「おいルーク」

低い声が背後から響いた。


振り返れば、剣を担いだ父・アベル。


「父さん!?」

「お前……また妙な騒ぎを起こしたな」

「ち、違う! 今回は村のためだ!」

「ふん……お前一人で暴走させるわけにはいかん。俺も出る」


こうして父子そろっての参戦が決定した。

村人たちがざわめく。


「アベルさんが出るなんて……」

「これはもう優勝候補決まりだな」


 


◆大会の顛末


その後の展開は語るまでもない。


ルークは猪を追いかけ、鹿も追い、うさぎと取っ組み合い……。

やはり、狩猟は下手だった。

そして、大会は父アベルが圧倒的な力量を見せつけた。


「ふんっ!」

アベルの剣が一閃。巨大なイノシシが倒れ伏す。


「優勝――アベル様!」

「おおおおおおおおっ!!!」


会場は大歓声に包まれた。


 


◆レイナの鉄槌


「ふぅ……まあ、これで肉は十分だな」

「父さん、すごかったな! さすがだ!」

「うむ。だが――」


その時、静かな声が響いた。


「……あなたたち」


ぎくり、と父子の背筋が凍る。

そこに立っていたのは、腕を組んだ母・レイナ。


「畑を放って何をしているのかしら?」

「い、いや、これはリックのためで……」

「そうそう、村の未来のためで……」

「――言い訳無用」


次の瞬間、父子は仲良くレイナに正座させられていた。


「まったく……あなたたちはどうしてこう、似るのかしら」

「す、すみません……」

「す、すみません……」


 


◆そして、可愛いミーナ


「でもでも!」

その時、小さな声が響いた。


ミーナが両手いっぱいに肉を抱えて駆け寄ってくる。


「ミーナ、お肉もだいすき! リックもいっしょに食べよ!」

「えっ……あ、ありがとう……」

リックは頬を赤らめた。


ミーナが嬉しそうに笑うと、周囲の空気が和らいでいく。

村人もレイナも思わず苦笑い。


「……ほんと、ミーナが可愛いから許すけれど」

「……助かったな、ルーク」

「まったくだ……」


こうしてまた一つ、グランフィード家の騒動は可愛いミーナによって丸く収められたのだった。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ