アロエ加工品、王都デビュー!?ミーナと猫たちの大冒険
アロエ収穫大作戦から数日後――。
村の広場に、見慣れない馬車が入ってきた。
艶のある黒い塗装、銀色に光る取っ手。窓からは、細身で品のある服を着た若い商人が顔を覗かせている。
「失礼ですが、この村で“アロエ加工品”を作っているのは……」
と尋ねられ、村人全員の視線が一斉にルークの方を向いた。
「……あ、はい。僕です」
商人はにこやかに笑い、話を続けた。
「噂を聞きつけまして。王都の市場でも扱わせていただきたいのです」
その夜、ルークは家族会議を開いた。
「王都に出すとなると、もっとたくさん作らないといけない。保存方法や梱包もちゃんと考えないと」
「おおきくなるってこと?」
ミーナは床に座って、干し魚を猫たちと分け合いながら首をかしげる。
「そう、大きくなる。お店も、作る人も、責任も」
ミーナはぽかんとした顔をしたあと、ぱっと笑顔になった。
「じゃあ、ミーナもいっぱいお手伝いする!」
「……うん。でも、怪我だけはしないように」
ルークはやや心配そうに、ミーナの頭を撫でた。
翌日から、村はちょっとしたお祭り騒ぎになった。
広場の一角には大きな木製テーブルが並べられ、アロエの葉が山積みになっている。
おばあさんたちは包丁で葉を切り分け、若者たちはジェルをすくって桶に集める。
ミーナは猫たちと一緒に葉の運搬係。
茶トラ猫は葉の上にどっかり座り、黒猫はその端を咥えて引っ張る――が、なぜか反対方向へ進んでしまう。
「そっちじゃないよー!」
ミーナが笑いながら駆け寄り、二匹をひょいと抱き上げた。
加工場の片隅では、ルークが試作品作りに没頭していた。
「このジェルに蜂蜜を少し混ぜて……あとは……」
そこへミーナが顔を出し、
「にぃにー、これなに?」
「これは王都用の特別仕様。見た目も香りも良くしてあるんだ」
「ふーん……あ、なめてもいい?」
「だめ」
「ちぇー」
ミーナはほっぺを膨らませたが、その表情があまりに愛らしく、ルークは笑って肩をすくめた。
数日後、王都行きの馬車が出発する朝。
広場には村人たちが見送りに集まり、アロエ加工品の詰まった木箱が積まれていく。
ミーナは猫たちを両脇に抱えて、馬車のそばで飛び跳ねていた。
「にぃにー、王都でもミーナのこと宣伝してね!」
「……うん、でもメインはアロエだからね」
そう言いながらも、ルークは彼女の頭を軽くぽんと叩いた。
馬車がゆっくりと村を離れ、やがて小さな点になるまで――ミーナは両手を大きく振り続けていた。
猫たちも、しっぽを高く掲げて「にゃあああ!」と声を上げる。
その日、村はなんだかそわそわしていた。
「王都で売れたらどうなるかな?」
「また買いに来るんじゃないか?」
そんな話をしながら、みんなで畑を見に行くと――。
畝の端で、ミーナと猫たちが何やら真剣な顔でアロエを見つめている。
「……これ、もっとピカピカにしたら売れるかな?」
ミーナが濡れ布巾で葉を拭くと、茶トラ猫も真似して前足でこすり、黒猫は葉の影から「どう?」という顔を覗かせた。
ルークはその光景を見て、くすりと笑った。
「うん……きっと王都でも、このアロエは気に入ってもらえる」