『旅する案山子と、ミーナ姫騎士!〜時空を超えて守るのです!〜』
ミーナが登場していないのです。“元気すぎて時空を超える姫騎士”が活躍するはずなのです!?
仕方が無いので・・・。
♦♦♦
むかしむかし、
どこかの畑の真ん中に、赤いマントを着た案山子がひとりで立っていました。
案山子は風に揺られながら、ぽつりとつぶやきます。
「ぼくも、旅をしてみたいなあ……どこか知らない場所へ行って、だれかを守ってみたいなあ……」
そのとき!
\ずどーん!!/
天から、空から、なんと……ミーナが降ってきました。
「──着地、成功なのですっ!!」
案山子は、びっくりして麦の穂がぴょんと跳ねました。
「だ、だれ?」
「わたしはっ、ミーナ姫騎士! 元気すぎて時空を超えてしまったのです!!」
どうやらミーナは、洗濯物のシーツで風にあおられ、空に舞い上がった末に、どこかの“物語の世界”に落っこちてきたようです。
ミーナはくるりと身をひるがえし、案山子を指さして言いました。
「そなた、どこか寂しげな顔をしているのです!」
「えっ、そうかな……。ぼくは旅をしてみたかったけど、足もないし……」
「ならば、わたしが案内してあげるのですっ!! 名付けて──ミーナと旅する案山子、涙と友情と、ちょっとだけトマトの物語!!」
「な、長いよ!? あとトマト関係ある!?」
\しゃきーん/
ミーナは腰の木の枝(=剣のつもり)をかまえ、案山子のわらの手をぐいっと引っ張りました。
「いくのです、冒険へっ!!」
こうして、動けないはずの案山子が、ふわりと浮きました。
ミーナの元気に、世界がついてきたのです。
♦ 第一の試練:風の谷
風が強く吹きすさぶ谷にさしかかると、案山子はふらふら。
「うわ、うわぁあぁ〜〜!」
「だいじょぶですっ! トマトで重しをつければ飛ばされないのです!!」
ミーナは荷物からなぜか出てきたトマトを案山子にしばりつけました。
「……なんかちょっと、むなしいけど、ありがとう」
♦♦ 第二の仲間:猫の騎士団!
森を抜けると、そこにはミーナを知っている、もふもふの猫たちが待っていました。
「にゃー!(姫! 無事ご帰還!)」
「にゃにゃー!(トマト臭い!)」
「にゃふっ!(旅のにおいです!)」
案山子はびっくりしました。
「猫がしゃべってる……!?(※ミーナにはそう聞こえる)」
ミーナはうなずきました。
「この子たちは、猫の騎士団なのです! ちょっとドジだけど、頼れる仲間たちなのです!」
猫たちは案山子のまわりをくるくる回って、
たてがみのような藁をおしゃれに整えてくれました。
「ちょっとカッコよくなったかも……!」
♦♦♦最後の試練:眠れる塔
旅の終わりにたどり着いたのは、空にそびえる塔。
そこには、旅に出たことのない本好きの少年が閉じこもっていました。
「旅なんて、危ないし、意味ないし……」
ミーナは言いました。
「わたしも、最初はただの“村のミーナ”だったのです。でも、にぃにや猫たちと出会って、畑を耕して、時空を越えて、今では姫騎士なのです!」
「たしかに無茶苦茶だけど、ちょっと……うらやましいかも」
そのとき案山子が、やさしく言いました。
「旅ってね、足じゃなくて、心でするものなんだよ」
その少年は、塔から出てきました。
「僕も……歩いてみたい。自分の足で」
♢ ──そして──
帰り道。
案山子はふと、空を見上げました。
「……ぼく、本当に旅をしたんだね」
ミーナはにっこり笑って言いました。
「もちろんですっ。いまや、伝説の旅案山子なのです!」
「いやそれは言いすぎでは!?」
猫たちは「にゃふふふっ」と笑いました。
こうして、
元気すぎる姫騎士ミーナと、旅する案山子と、猫の騎士団の大冒険は、
きょうもどこかの空想の国で語り継がれているのです。
めでたし、めでたし──
つづく!?