アニーとミーナの“野菜でスイーツ大作戦!”
グランフィード家の朝は、いつも静かな鳥のさえずりと、畑をなでる風の音から始まる。
……の、はずだった。
「にゃあああああっ!?」
「こっちは甘いのか辛いのか分からないのですっ!!」
「ひぃいいい〜〜〜〜!!!」
この朝、調理小屋は、叫びと粉まみれの大騒ぎだった。
◆
「きゅうりで……ケーキ、つくれますか?」
アニーがそう言ったとき、ルークは無言で固まった。
「つ、作れるのです!! ミーナにまかせるのですっ!!」
自信満々なミーナの後ろで、猫たちはすでにサンドイッチ用の食パンを山ほど持ってきていた。
「おまえら、それはケーキじゃないぞ……」
◆
ことの発端は──
数日前、村にやってきた新しい住人、赤毛のみつあみ少女アニーと、その家族。
アニーはしっかり者のように見えたが、ミーナにとっては「おともだち」枠。すでに仲良しである。
「この前、ルークさんが“野菜の甘みを活かせばスイーツになるかも”って言ってて……やってみたくて!」
「それなのですっ!!」
二人はお互いに手を取り合い、すでに“野菜スイーツ研究会”を発足させていた。
◆
【第1実験:スイートにんじんケーキ(のようななにか)】
「まずはにんじんをすりすりして……」
「まぜて、まぜて、猫の毛がっ!!」
「にゃーっ!?(失礼な!これは飾り毛だ!)」
泡立て器の中でにんじんが粉とともに舞う。
なぜか途中で猫のしろが中に飛び込み、粉まみれになる。
「ふわふわなのです……でもなぜしろが……」
とりあえず焼いてみる。見た目は……まあまあ?
味は……「うん、甘い。野菜っぽい……でも微妙!」
ルーク「正直でよろしい」
◆
【第2実験:トマトジャムのカップケーキ】
「トマト、煮詰めて甘くしたら美味しいかも?」
「にゃ!(その発想はなかった)」
トマトと砂糖を鍋に入れ、グツグツ。
猫たちが鍋の周りに群がる。
「焦げ臭いのですっ!ああああ、にゃにゃが鍋に手を!!」
結果、トマトは“べっこう飴のような焦げジャム”に変身。
「……カップケーキが真っ黒です」
「にゃあ……(香ばしい)」←前向き
◆
【第3実験:コーンとミルクのプリン……?】
「これはいける気がするのです!コーンは甘い!ミルクも甘い!」
混ぜて、加熱して、冷やして──できあがったのはぷるぷるの……謎。
「見た目はプリン。でも、匂いが味噌汁っぽいのです」
ルークが恐る恐るスプーンを口に運ぶ。
「……あれ?意外とうま……いや、やっぱり変だな」
「にゃ……(これには賛成できない)」
◆
夕暮れ。畑の風がやさしく吹いていた。
しょんぼりするミーナとアニー。
「やっぱり、むずかしいね……」
「うぅ、ミーナ、スイーツ職人にはなれないのです……」
そこへ、ひょこっと現れたのはレイナ(ミーナ母)だった。
「ふふ。ふたりとも、よくがんばったわね。でも、スイーツって“甘くてやさしい気持ち”が一番の材料なのよ」
「やさしい気持ち……?」
◆
【そして──】
ミーナたちは、最後の挑戦を決めた。
野菜はほんの少しだけ使って、リンゴやミルク、はちみつなども足しながら、
“食べやすく、かわいく、美味しく”を目指すことに!
できあがったのは──
「“にんじんとりんごのしゅわしゅわゼリー”!」
野菜はすりおろしでちょっぴりだけ。でも、ほんのりした甘さと、しゅわっとする舌触りがミーナらしい。
猫たちも大満足。
「にゃー!(これは売れる!)」
「にゃーにゃー!(次はお店出す!?)」
「うふふ、にぃににも食べてもらうのですっ!!」
◆
ルークは夕飯前に、そのゼリーを一口食べて、言った。
「……これは、ちゃんと甘くて……ちゃんとミーナらしいな」
「えへへ、そうなのです〜〜!!」
アニーも笑ってうなずいた。
こうして、ミーナとアニーの“野菜スイーツ大作戦”は、ハチャメチャながらも成功に終わったのだった。