表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

165/257

ミーナ、畑に巨大スイカを作るのです!  〜でも……割れないのです!?〜

ある夏の日、グランフィード家の畑で――


「にぃに! ミーナ、今年はでっかいスイカを作るのですっ!」


突如ミーナがそう宣言したのは、朝食の最中だった。

麦パンを頬張ったまま、猫の“しろ”が「にゃっ」と驚く。


ルークはカップを置きながら、片眉を上げた。

「スイカ……? まぁ、夏だしな。いいんじゃないか」


「でもただのスイカじゃないのです! ミーナすぺしゃるで、どーん! って大きくて、まるくて、おどろくスイカを作るのですっ!」


「……“どーん”って何だ」


やる気まんまんのミーナに、猫たちがぞろぞろと集まり、なぜか三角巾を頭に巻いてやる気ポーズ。


「にゃー!(栽培班、配置にゃ!)」

「にゃにゃ!(水まき係、出動っ!)」



◆スイカ育成、開始!


こうして始まった“でっかいスイカ計画”。


ミーナは毎朝、トマトの横に並ぶスイカの苗に愛の声をかける。

「おおきくなってね、すいかちゃん……!」


肥料の代わりに野菜の皮をせっせと埋める。

「にぃにが言ってたのです。土が元気になるって!」


猫たちも草むしりや見回りをしてくれた(たまに昼寝を挟む)。



◆そして伝説のスイカ、実る!


やがて――


「にぃに! 見てくださいっ! すいかちゃんが……すごいのですっ!」


畑の真ん中に、どんと鎮座する巨大スイカ。

大人が両腕を広げても足りないほどのサイズ。

丸くつやつやとしたその姿に、猫たちも大興奮。


「にゃー!(すいか!)」

「にゃっ!(祭りだーっ!)」


「これ、どう見ても普通じゃないな……。で、食べるの?」


「はいっ! スイカ割りなのですっ!!」



◆だが、割れない


ミーナが布を巻き、竹の棒を手にスイカに立ち向かう。

「くらえなのですっ!!」


――がつん。


「……いてっ」

棒が跳ね返ってミーナの額にぽこり。

猫たちも交代で挑むが、スイカはピクリともせず。


「にゃー(固い)」

「にゃにゃー(中身入ってる?)」


「これは……やりすぎたな」ルークが渋い顔をする。


しょんぼりと座り込むミーナ。

「おにぃ……せっかく、頑張ったのに……」


そのとき。



◆父、現る!


「ふむ。どうやら盛大にやったな」


重々しい声が畑に響き、草むらの向こうから現れたのは、

グランフィード家の父・アベルだった。


「ちょっと目を離したすきに、家の畑が予想外の光景でな……」

笑いながらアベルはスイカの前に立つ。


「にゃっ!(誰!?)」

「にゃー!(においがルークっぽい!)」

「にゃ!!(出番の少ない人にゃぁ)」


「ちちぃ! 久しぶりなのですっ!!」


「おう、ミーナ(久しぶりって…悲しいな)。……これはお前が育てたのか」


「はいっ! がんばったのです! でも……割れないのです……」


アベルは黙ってスイカを手で叩く。

こつん、こつん……やがて、腰のナイフを取り出し、

ふっと息を吐くと──


「……せいっ!!」


パカッ!!


スイカの上部がきれいに開いた。

中から、甘い香りと共に鮮やかな赤い果肉がぎっしり。


「わ、われたのですっ!! ちち!!流石なのです、すごいのですーっ!!」



◆スイカパーティ!


ルークも驚きながら、アベルに頭を下げる。

「父さん、ありがとう。さすがだよ」


「フッ。このくらいは父の威厳としてな」


スイカは切り分けられ、庭で即席のパーティが始まった。

猫たちは種飛ばしに興じ、ミーナはスイカに顔を突っ込む勢いで食べる。


「ミーナ、顔ベタベタだぞ」


「でもおいしいのですっ! がんばった味なのですーっ!」


アベルも笑いながら、静かにその様子を見守っていた。


「……まったく、にぎやかな娘に育ったな」


「えへへっ。ミーナ、すいか姫なのですっ!」



◆夏の終わりに、伝説の思い出


こうして、グランフィード家に刻まれた“巨大スイカ事件”は、

家族の笑顔とともに、甘く瑞々しい記憶として残るのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ