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王都のマダムを救え! 〜野菜が世界を変えるのです〜 その四

【第4話】「お野菜サロン、開幕!そして広がる奇跡

王都エルデン──社交界でも特に格式高い婦人たちが集まる“白薔薇の午後サロン”。


その一角で、今までにない話題が花開こうとしていた。


「本日は特別に、“グランフィード農園”より直送された野菜を使った試食会を行いますわ」


主宰のイザベル・フォン・レーヴェンクロイツ嬢が、つややかな声で宣言した瞬間──

サロンの貴婦人たちが、一斉に身を乗り出す。


「まあ!あの、今話題の……!」


「ほうれん草のポタージュ、ですって?」


「焼きダイコンに……ミーナ特製のキャロットマリネ!?」



◆ギャリソンの手腕、再び


裏方では、例によってギャリソンが完璧な段取りで動いていた。


「奥方には、少し冷ましたポタージュを。胃への刺激を和らげますので」


「こちらはミーナ嬢による“にんじんとリンゴのはちみつ和え”。お肌によく、そしてお腹にもやさしい一品でございます」


執事界のファンタジスタ、ギャリソンの言葉は魔法のように婦人たちの心をとらえて離さない。


そして──


「まぁ……おなかがぽかぽかしますわ……」


「肌が……なめらかに……?」


「ちょっと、見て! 頬の色が明るくなってない?」


イザベルはその様子を見ながら、そっと胸に手を当てた。


(──ありがとう、ルーク。そして……ミーナ)



◆一方その頃、村では


「にぃにぃぃぃぃ!! ミーナも王都に行きたいのですーっ!!」


ミーナが畑の真ん中で大の字になって訴えていた。


「サロンって、お紅茶とかケーキとか食べるところなのですっ! ミーナ、そういうのだいすきなのですっ!」


「いや、お前が行ったら“全部食べる人”になるだけだろ!?」


「おいしそうなのですぅぅぅぅぅ!」


猫たちも「にゃーっ!」と叫びながらミーナに続く。


「……にゃっ(オレたちもケーキがいい)」

「にゃにゃっ(ついでにサーモンも)」

「にゃー(あと牛乳な!)」


ルークは頭を抱える。


「……もう、“お野菜サロン”じゃなくなるだろ、それ……」



◆貴婦人の輪、さらに拡大!


「イザベル様……これ、本当に野菜だけで作られているんですの?」


「はい。しかも、子どもにもやさしい。体にいいことばかりなの」


「ぜひわたくしの娘にも……。偏食で困っていたのですが……」


その声に、イザベルは少しだけ目を細めてうなずいた。


「わたくしも、かつては“美しさのためには苦しい節制こそ命”と思っておりました。けれど、違ったのですわ」


「楽しく、健やかに食べること。それが一番、美しさへの近道だったのです」


その言葉に、婦人たちの胸が打たれた。


「……それ、記録しても?」


「もちろん。今日から“お野菜日記”をつけてくださいな」


かくして、“グランフィード農園 野菜サロン支部”は王都に次々と増設されていくこととなる──!



◆ルークとミーナの夕暮れ


その夕方。

畑の一角でルークは収穫かごを整理していた。


「……本当に、こんな野菜で人が笑顔になるなんてな……」


その背後から、いつもの声。


「にぃにーっ!」


ミーナが猫たちを引き連れて走ってきた。


「今日のミーナ農園、できすぎトマトが6個もとれましたのっ!」


「よしよし、王都へのお届けに加えような」


「ふふふ、次はミーナ特製の“にんじんケーキ”を作って……王都で売るのですっ!」


「……なあ、それって“お野菜サロン”じゃなくて、“ミーナ喫茶”じゃないか?」


「にぃにが食べてくれるなら、ミーナはなんでもいいのですーっ!」



◆◆◆


王都の婦人方の間で、「健康と美しさと愛情の味」が静かに広がっていく頃。


その原点となった小さな畑では──


ミーナと猫たちが、にんじんを洗いながら「これはおいしいやつですのっ!」と満面の笑みを浮かべていた。


そしてルークは、彼女たちの姿を見つめながら、また一歩、新しい収穫の夢を見るのであった。


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