猫カフェ開店計画! 〜猫集めできず、イザベル嬢がミーナに泣きつく〜
ミッション1:構想あれども予想通りの壁
ある朝、レーヴェンクロイツ分家の大広間で、ソファにふんぞり返るイザベル嬢が、お気に入りの羽扇子をくるくる回していた。
「ギャリソン――――猫カフェ開店計画、進捗はいかがですの?」
貴族令嬢の声は、いつになく真剣だった。執事ギャリソンが尻すぼみながら一礼する。
「はい、お嬢様。ただし……『猫集め』が、全く進んでおりません」
イザベルの目がぱっと見開く。
「な、何!!!?」
「お隣の町も、馬車道沿いの高級住宅街にも、“繁華街の猫”というような存在はほとんど見えません」
「なぜ? なぜあの子猫たちはわたくしに懐かないのですか!?」
イザベル嬢は、文字通り妖艶に歯を食いしばった。完璧な顔に細かな皺が寄るほどの怒りと焦りだった。
ミッション2:猫カフェは甘くなかった
数日間、ギャリソンは猫捜索に奔走した。
・朝の市場裏…猫影なし
・城壁付近…野良猫に警戒されまくり
・教会のクレイン…猫じゃらし渡すも逃走事件
すべて空振り。執事は疲労で顔色が冴えず、猫アレルギーを覚えてしまったかもしれない。
「ギャリソン、どうして失敗なのですか?」
「……猫が、お嬢様の威厳と香水に警戒している節があるかと」
イザベルはむっとなり、「フン……」と振り返るが、決意は固かった。
ミッション3:泣きつく相手は誰?
最終兵器として思い浮かんだのが、グランフィード家の“ミーナ”だった。
「どうしても猫を呼び寄せる力が欲しい…そう思って、あの子なら…!」
ギャリソンは馬車を手配し、「失礼でござりますが…」と頭を下げながらグランフィード邸へ。
ミッション4:グランフィード家でのやりとり
庭先、ミーナは猫のしろと遊びながら野いちごを摘んでいた。
「ミーナ様、突然お願いなのですが」
ギャリソンが切り出すと、ミーナは驚いて立ち止まる。
「な、なにかご用ですの?」
「イザベル嬢が“猫カフェ”を開きたいそうですが、猫をどうにか集められないかと…?」
ミーナはしばらく考え、ニコッと笑った。
「わかったのです。いっしょにきましょう! みんなで猫ちゃんを見つけるのです!」
猫たちもピョンピョンと喜び、猫いっぱい大捜索隊が結成された。
ミッション5:3丁目から大冒険
ミーナ、ギャリソン、猫5匹の珍道中が始まった。
・茂みを探してみる…猫が逃げる
・工房前で声かけ…職人が笑って通報
・小川付近…しろが水遊びで猫の興味を削ぐ
それでもミーナは前進する。
「しろちゃん、静かに! びっくりさせちゃうのです!」
結果、猫0匹。ギャリソンは暗鬱な表情を浮かべる。
ミッション6:ミーナの魔法の一言
「どうしても見つからないですの…。でも―」
ミーナは突然、ふっと目を輝かせた。
「そだ! 町の子どもたちに“猫好きさん”って声かければいいのです!」
ギャリソンは驚くが、ミーナはどこか嬉しそう。
ミッション7:声かけ作戦、大成功!?
近くの広場にミーナが大声で呼び掛けた。
「猫好きさんいませんか〜っ!」
数分後、ちびっ子達と数匹の猫が出現した。ギャリソンも慌てて招集。
「これは…すごいですの…」
イザベル嬢が礼服姿で馬車から現れると、猫たちが逃げてしまった。
それでも、子ども達の手には猫がしっぽを立てていた。
ミッション8:猫カフェ、ついに開店!
開店初日、イザベルが自ら用意したパステルのクッション、猫専用おもちゃが並ぶ。ギャリソンも紅茶と焼き菓子を並べた。
「いらっしゃいませ!」
子どもと保護猫がくつろぎ、笑顔の和やかな空間――まるでおとぎ話のようだった。
イザベル嬢は静かに椅子に座り、満足げな微笑を浮かべた。
「出来ましたわね…『猫カフェ』…」
「はい。お嬢様のおかげです」
「ありがとう、ギャリソン」
ギャリソンは心底安堵のため息をついた。
ミッションコンプリート:幕は閉じても—次なる冒険は?
夕暮れ。猫たちは眠りこけ、子ども達は笑顔で帰る。
イザベル嬢はミーナに小さな花飾りを手渡した。
「ミーナ、あなたがいなければ、今日の成功はありませんでしたわ」
「えへへ、うれしいのです!」
ギャリソンはそっと馬車に紅茶用具を積み込みながら、
「次回は…屋敷の一室で“猫図書館カフェ”でもいかがでしょうか?」とつぶやいた。
イザベル嬢はニヤリと笑い、
「賛成ですわ。あなたと、ミーナとなら、どんな計画も叶えられそうですもの…」
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こうして『猫カフェ開店計画』は成功。
しかし、それは新しい“バカかわいい物語”の幕開けだったのでした。