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王都での評判編 ギャリソンの暗躍

それは、数日後の王都にて――。


イザベル・フォン・レーヴェンクロイツの執事、ギャリソンは、令嬢イザベルの用事で王都に滞在していた。とはいえ、その目的は単なる買い物や社交界の顔出しではない。彼が密かに動いていたのは、あの“黒い飲み物”――ルークの手で生み出された新たな嗜好品、「コーヒー」の評判を探り、あるいは広めるという密命のためであった。


分家の館を出て、ギャリソンは仮住まいの王都の下宿先を後にする。


「……さて、少し騒がしくなってきたようですな」


彼は懐から取り出した一枚のメモを見る。王都の料理人や貴族の若手たちが「黒い香り高い飲み物」について興味を抱いているという情報がいくつも並んでいた。


「静かに、そして確実に。広めるのです、あの“奇跡の液体”を」


彼の手には、ルークの焙煎した豆が収められた小瓶があった。



一方そのころ、セレナ・フォン・レーヴェンクロイツ嬢は、王都にある本家の屋敷で、文通の返事を片手に、じっと考え込んでいた。


「……ミーナさんの家でいただいた、あの“コーヒー”とやら……もう一度飲んでみたいですわね」


そうつぶやく彼女の耳に、控えていた侍女の報告が届いた。


「セレナ様、ギャリソン様が王都で動いておられるとの噂がございます。例の“コーヒー”関連とのことかと……」


「まあ、あのギャリソンが? イザベル抜きで? ……ふふっ、これは何やら面白いことになりそうですわね」


セレナは優雅に微笑み、椅子から立ち上がった。


「では、私も少し王都を歩いてみようかしら。あの香りが再び味わえるなら、いくらでも足を運ぶ価値がありますもの」



同じくその頃、王都のとある貴族のサロンでは、ひとつの話題で持ちきりだった。


「聞いたか? レーヴェンクロイツ家から出た、あの黒い飲み物の噂を」

「飲めば目が覚めるどころか、心まで研ぎ澄まされるとか」


「ギャリソンという執事が関わっているらしいな……ただの嗜好品じゃない、“革命”だという話まである」


その場にいた若き料理人のひとりは、真剣な眼差しで口にした。


「……ならば、自分の舌で確かめるしかあるまい。噂に踊らされるのはまっぴらだ」


ギャリソンの影は、確かに王都の中で着実に“黒い波紋”を広げ始めていた――。



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