表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

130/257

ルークのコーヒーバカ一代 その…

第四話「焙煎の真髄と猫の手間てま


朝露が消えかけるころ、ルークは一人、調理小屋の裏で腕を組んでいた。

目の前には平たい鉄鍋と、焼かれる前の赤い果実(生豆入り)──。


「……やっぱり、焙煎って奥が深いよなぁ……」


前回の焙煎は、なんとなく「焦げる寸前で止めた」みたいな結果だった。

だが、もっと香りを引き出すにはどうしたらいいのか。

豆の色、音、匂い──すべてを見極める必要がある。


「ここが……俺のコーヒー道の“真髄”なのかもしれん……」


目を閉じ、拳を強く握る。


「にゃー(何してんの?)」


突然後ろからのぞき込む猫にビクッとなる。


「お、お前ら……驚かすなよ……今、精神統一中だったのに」


「にゃっ(むしろ怪しかった)」


ルークは無視して、豆を取り出す。

赤い果実を剥き、粘りのある果肉を洗い落とした種──つまり生豆。

これを「きっちり乾燥させた状態」にしなければ焙煎はできない。


「さて……今日は、均一に、ゆっくり、ムラなく焼くことが目標だ!」


鍋を温め、豆を投入。木べらで絶えずかき回す。



──パチッ


「……来た、ファーストクラック!」


豆がはぜる音。

中の水分が気化して豆の構造が変わる、この“瞬間”を逃してはならない。


「こっからは……一気に来るぞ……!」


豆の色は次第に薄茶から深いブラウンへ。

香ばしい香りに、猫たちがぞろぞろと集まり出す。


「にゃぁぁ~(うまそう)」

「にゃーん(焦げるなよ)」


「黙って見守ってくれ……この時間は神聖なんだ……!」


ルークの額には汗。

鍋を揺らす手は真剣そのもの。だが──


「……っとと!」


足元にまとわりついた猫の尻尾を踏みそうになり、体勢を崩す。


「おいっ、危ないってば!!」


豆がジャラッと鍋から少しこぼれる。


「……やば……ムラになったかも」


ルークは急いで火から鍋を下ろし、豆を広げて冷ます。


「これが……セカンドクラック前の、フルシティロースト……うん、いい色してる……」


「にゃっ……(ちょっと焦げてない?)」


「焦げじゃない! 褐色の美! これは“深み”なのだ!!」


猫たちはどこか納得してない表情をしていたが、

ミーナがやって来て雰囲気が変わる。


「にぃにぃー、焦げたにおいがしますの!」


「それは香ばしい香りって言うんだよ!?」


「ふふっ、でも、いいにおいなのです」


そう言ってミーナは、焙煎された豆を手に取り、

「なんだか宝石みたいですの」とにこにこ。


ルークは内心、すこし照れていた。


「……そうか、だったら、この豆は“ミーナ・ブレンド”って名前にしようか」


「えへへっ、それなら飲んであげてもいいですの!」


「こら、まだ早──いや、まあ……ごく薄なら……」




その夜。


「──ということで、セレナ嬢! 焙煎に成功しました!!」


ルークはドヤ顔で豆を見せる。


セレナはその香ばしさに目を細めながらも、どこかふわっと微笑む。


「お豆の香りが一段と濃くなりましたわね……まるで、秋の森の香り」


「それ褒めてる? まあいいや、とにかく、明日から“焙煎三段活用”いくぞ!」


「……ルークさん、最近ちょっと熱が入りすぎてませんこと?」


「俺の“情熱の一杯”はこれから始まるんだ……!」


その横で、猫たちは焙煎豆を描いた地面アートを完成させていた。

火と鍋と豆──そしてルークのぐるぐる目。

妙に味のある似顔絵に、ミーナが大爆笑していた。


「にぃにぃ、変顔ですのっ!!」


「違う! それは真剣な表情だ!!」




そんな感じで、グランフィード家の一角には、

本格焙煎の香りが漂い始めていた──。



このところなんか 桃が食べたくて食べたくて・・・桃で書いていたら

 『ももたましい!〜桃の王国と十二品種の姫君〜』

こんな話になってしまった。相変わらず、乗りと勢いで書いています。

もし桃が食べたいと思ったら(食べたくなくても) 一度読んでみてください。


[ボソッと、また桃狩り行きたいなぁ 中込○園とか…]

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ