「ミーナの蝉取り大作戦 ~作戦決行!? 夏の朝の大騒動~」
夏真っ盛り。
お日様は朝からギラギラと元気いっぱいで、蝉たちも負けじとミーンミンミン、ワシャワシャジージーとうるさいくらいに鳴いている。
「……うう、にぃにぃ。セミが……うるさいのです……っ」
朝の静けさを打ち砕く音に、ミーナはむくりと布団から起き上がった。
ふわふわ髪を指でとかしながら、猫たちの方を向く。
「これはっ、セミ退治作戦を立てねばならないのですっ!」
いつも通りミーナのとなりで寝ていた猫たちが、のそのそと起き出してくる。
白い猫のグリ、しましまのグラ、黒猫のクロ、三匹ともやる気まんまん(?)である。
「よろしい、みなさん! 本日の任務は『セミ取り』です! 成功したらスイカのごほうびもあるのですっ!」
猫たちの目がきらりと光る。
──そう、スイカと聞けば本気になるのがこの猫部隊。
◆第一作戦:静かに近づけ!
畑の脇にある大きな樫の木に、蝉たちはたくさん止まっていた。
「まずは音を立てずに、そぉ~っと、近づくのです……」
ミーナは帽子をかぶり、手には虫取り網。
猫たちはそれぞれ草陰に隠れ、低く身構えている。
しかし──
「ミーナ、もうちょっとで……あっ」
「ニャッ!」
バサッ!
グリが本能に従って一気に木に飛びかかり、蝉が一斉に飛び立つ。
その音と動きに反応して、他の猫たちも大騒ぎ。
「にゃあ!」「ふぎゃっ」「ジィーーー!!」
あっという間に、辺りは蝉と猫とミーナの大乱舞に。
「作戦失敗っ!! 撤退なのですーーーっ!!」
◆第二作戦:おとり大作戦!
「にゃーにゃー鳴いて、セミをおびき寄せるのです! わたしが後ろから……こう!」
……が、猫たちは鳴くどころか、途中で草むらのカエルを見つけて遊び始めてしまった。
「そ、それは後回しなのですーーー!!」
ミーナの叫びも虚しく、猫たちは草むらでくるくると転がりながらじゃれている。
その間に、蝉たちはどこかへ。
◆第三作戦:空から急襲!?
「ならば、ミーナが木に登るのですっ!」
流石にルークに怒られそうなので、脚立を持ってきて、帽子をぎゅっと被りなおす。
ミーナ、木の上から狙いを定める! 網を構える!
──ジィィ……バサッ!
あと一歩のところで飛ばれてしまう。
「ぬああああっ、セミ、すごいのですーーっ!!」
そのままバランスを崩しそうになったところを、猫たちが下から支える。
「にゃっ」「ミーナ、ふにゃっ」
「ありがとなのです……」
◆結論:セミはすごかった
午前中いっぱい、ミーナと猫たちは大奮闘したが、結局セミは一匹も捕まらなかった。
木陰に戻って、全員でぐったりと座り込む。
「作戦……失敗なのです……。でも……」
ふと見上げた空に、蝉たちの飛ぶ影がきらきらと光を反射している。
「なんか……きれいなのです」
猫たちも、静かに風に吹かれながら目を細めていた。
◆おひるねタイム
そのあと、みんなで冷たい麦茶を飲んで、スイカを食べた。
結局、蝉は取れなかったけれど、がんばったごほうびなのです。
「にぃにぃ、セミって、やっぱりすごいのです」
「まあ、うるさいけど……夏って感じするよな」
「うるさいけど、元気で、自由で……」
「ああ、ミーナにちょっと、似てるな」
ルークは笑って頭を撫でた。
「それは、褒めてるですかぁ……」
猫たちはごろごろとのどを鳴らしながら、ミーナの隣で丸くなった。
──今日もまた、ミーナはとびきり可愛かった。