前世で死ぬ直前に深く愛し合った恋人が今、目の前にいる
久しぶりにリハビリも兼ねて勢いで書いた短編です。
緩い感じでお読みください。
尚、作中に『交わる』『睦み合う』『ちちくりあう』などのR指定っぽい言葉が出てきますが、行為自体の描写はございません。
(それを彷彿させる描写はありますが……)
ですが、そういう言葉や表現が苦手な方は読まれる際は、お気を付けを。
そして読まれる際は、自己責任でお願いいたします。
新緑の季節特有の爽やかな風がそよぐ中、アドワース伯爵家の令嬢リゼルは、いかにも爽やか青年というオーラを無駄にまき散らしている見合い相手に柔らかな笑みを向けながら、非常に焦っていた。
青年の名はパトリス・シュレイド。
リゼルよりも二つ年上で、彼女の二番目の兄ディアンとは士官学校時代からの親友である。今回はその縁もあり、シュレイド伯爵家が所有するタウンハウスで、リゼルとパトリスの見合いの席が設けられていた。
現在十八歳のパトリスは、三カ月前に士官学校を卒業しており、今はリゼルの兄と共に城下町の警備を担っている第二騎士団に所属している。
そんなパトリスだが二年後には領地に戻り、家督を継ぐ予定だそうだ。
黄色味の強いハニーブロンドの髪に淡い水色の瞳を持つパトリスは、どこからどう見ても王子様のような容姿をしている為、優男にしか見えない。
だが、兄ディアンの話では、同期内では一番えげつない攻撃を繰り出せるほど、犯罪者に対して容赦がないらしい。
その為、入団してすぐに『死神天使』というあだ名をつけられたそうだ。
しかし現状、目の前で煌めくような甘い微笑みを浮かべているこの青年からは、そのようなあだ名がつけられてしまう要素など微塵も感じられない。
だが、リゼルはこの青年なら、それぐらいの制裁を犯罪者に加えるだろうと確信していた。何故ならリゼルは、パトリスがこの世に生を受ける前に歩んでいた人生をよく知っていたからだ。
ようするにリゼルには前世の記憶があり、その際、生まれ変わる前のパトリスと多くの時間を過ごす間柄だったのだ。
しかし現状のパトリスは、前世の姿とかなりかけ離れた容姿と雰囲気である。
前世の彼は、サラリとした黒髪に常に無表情なことが多かった。現在のパトリスのような華やかな雰囲気などなく、生真面目でどこか影のある印象が強かったのだ。
では何故、リゼルはそのことに気づけたのか。
実は先ほどから、ふとパトリスが見せる仕草や動きが、前世でリゼルがよく知る人物と全く一緒だったからだ。
その瞬間、彼女はあることを確信したのだ。
この青年の前世は、自分に仕えてくれていた護衛騎士のウォルフであると……。
その決め手となったのが、パトリスの瞳だ。
彼の瞳は色や目つきだけでなく、瞬きの間隔や視線の動かし方などの癖が前世の頃と全く変わっていなかったのだ。
だが、そんな細かい部分だけでは、彼が自身の護衛騎士の生まれ変わりだということには、普通は気づけない。しかし前世のリデルはそんな細かすぎる彼の癖を知りつくしているほど、生まれ変わる前のパトリスとは深い関係だった。
リデルの前世は、今から二百年程前に滅んでしまったラインベイルという国の第三王女だった。前世の名前はユディット。ちなみに享年十八歳である。
そしてパトリスの前世は、その第三王女ユディットの専属護衛騎士のウォルフという青年だった。ちなみに彼も若死にしており、享年二十二歳である。
これは前世の記憶がよみがえったリゼルが、二百年程前に滅んでしまったラインベイル王家について詳しく書かれている歴史書を片っ端から読み漁り、調べたことで判明した。
では何故、主従関係だった二人が揃って若死にしているのか……。
それは、死ぬ直前まで二人は共に行動をしていたからだ。
そして二人が命を落とした時、このラインベイル国は隣国からの襲撃で、今まさに滅ぶ寸前という時代背景でもあった。
要するに前世の二人は国外逃亡中に敵兵に見つかり、命を落としたのである。
その際、パトリスの前世である護衛騎士のウォルフは、主君であるユディットを守りながら、たった一人で十五人近くの敵兵相手に果敢に応戦していた。
しかし敵兵の一人がウォルフに向かって一本の矢を放つ。
その矢からウォルフを庇おうと躍り出たユディットは心臓に矢を受けて、そのまま死んでしまったのだ。
だが、その直後にウォルフが自分を追い、自害していたとは思わなかった。それを生まれ変わった後にとある歴史書で知ったリゼルは、その日は一日中涙が止まらなかった。
前世のユディットが、生きて欲しいと願いながら身を挺して庇ったウォルフは、すぐにその命を捨て、彼女の後を追ってしまったのだ。
そのウォルフの選択に少なからず怒りを覚えたリゼル。
しかし自分が彼と同じ状況に陥ってしまったら、恐らく同じ選択をしていたことは確実なので、彼のことを強く責めることはできない。
では何故、前世のリゼル達は王女と護衛騎士という主従関係でしかなかったのに、こんなにも互いに対して献身的だったのか……。
実はこの二人は歴史学者達の間で、恋人関係であったのではという仮説が囁かれており、現在でもこの二人をモデルや題材にした悲恋物の創作物が作られるほど、親密な関係であった可能性を彷彿させる記録が一部残されているのだ。
そして前世が第三王女ユディットだったリゼルは、その仮説が事実であることをよく知っている。すなわち前世の二人は、主従関係でありながら身分差ゆえの秘密の恋人同士という関係だったのだ。
前世の記憶がリゼルの中でよみがえった切っ掛けが、今から二年前に見た夢である。その夢から覚めたと同時に前世の記憶がリデルの中へ一気に流れ込んできたのだ。
ならば、今のこの状況は大手を振って喜べる状況のはず。
現状の二人は、二百年程前に悲劇的な死別をした恋人同士であり、再び来世で巡り合い、今まさに婚約を交わそうとしている奇跡のような状況である。
しかしリゼルは、この状況を素直に喜ぶことができなかった。
その原因となっているのが、記憶がよみがえる切っ掛けとなった夢の内容だ。
この夢を見た当時のリゼルは、十四歳になったばかりの多感な年頃の少女だった。だが、そんな少女が見た前世の記憶の夢は、とんでもない一場面を抜粋した内容だったのだ。
リゼルが見た夢のその内容とは……。
目の前で逞しい体躯を惜しみなく見せつける美丈夫な黒髪の青年と、激しくむつみ合っている状況を彷彿させる自分視点の光景だったのだ。
十四歳の穢れを知らないリゼルが、一度も体験したことがない情熱と快楽に溺れていくような感覚。そして夢とは思えないほどの生々しい互いの汗の匂いと荒い息づかい。
さらに限界を超えても尚、激しく互いを求め合おうとしてしまう底知れぬ欲望。
純潔の乙女であるリゼルでは、到底想像がつかないほどのリアルな男女のむつみ合いが、その夢の中では展開されていたのだ。ようするに多感な年頃なのに前世の自分視点の絶賛濡れ場中な夢を見てしまったという何とも耐え難い体験をしたのである。
その瞬間、跳ね起きたリゼルの頭の中に前世ユディットだった記憶が一気に流れ込む。そんな前世の自分達は歴史学者達の仮説通り、清らかな関係を維持した秘密の恋人同士の期間が長かった。
しかしその密やかな関係と平穏な日常は、前世の兄であったラインベイル国の王太子によって、壊されてしまう。愚かな王太子は自身の想い人の令嬢と結ばれたい一心で、政略的な意味合いで結ばれ婚約者となっていた隣国の第二王女を毒殺したのだ。そのことが火種となり、ラインベイル国は隣国から攻め入られ、王族だったユディットは追われる身となる。
ちなみに両親の国王夫妻と第一王女は早々に敵兵に捕まり、その後は幽閉生活。
たまたま別国へ留学していたもう一人の姉の第二王女は、そのまま亡命。
元凶である兄の王太子は最後まで交戦する姿勢を貫くが、敵将に打たれ死亡。
そして第三王女ユディットと護衛騎士ウォルフは、逆側の隣国へ亡命しようと逃亡していたが、あと少しというところで敵兵に見つかり、そのまま命を落としたのだ。
そんな二人は明日も生きられるか確証もない絶望的な状況から、せめて愛する人と身も心も深く結ばれたいという想いを互いに打ち明け、敵兵に見つかり命を落とす二時間前に情熱的な契りを交わしていた。
つまり二人は、死ぬ直前にちちくり合っていたのである……。
その際、二人は理不尽すぎる悲劇的状況下を覆そうと、あがくように『もっと生きたい』『もっと幸せを感じたい』『もっと愛する人と一緒にいたい』と懇願するように互いに激しく求め合った。
状況は話だけであれば、何とも切なく情熱的なエピソードとして聞こえる。
だが前世に当事者だったリゼルからすると、その時の自分達は、どう見ても男女が獣のように我を忘れるほど一心不乱になって、激しく交わりあっている濡れ場としか思えない状況であった……。
そんな記憶のよみがえりと共に前世の自分の濡れ場を疑似体験してしまった当時十四歳のリゼルが真っ先にとった行動は、悲劇の第三王女と忠義心の厚い護衛騎士が、死ぬ直前に体を重ね合っていたという不名誉な記録が残されていないか確認することだった。
幸いなことにそのような記録や仮説を唱えている歴史学者は一人もおらず、それどころか二人の遺体はラインベイル国だった土地に丁重に運ばれ、同じ墓地に埋葬されていた。
どうやら隣国のほうでも、バカ兄の王太子が引き起こした戦争に巻き込まれる形となって命を落としたユディット達に対しては、同情的な考えを持つ者が多かったのだろう。
現在その隣国だった国は、この大陸一の大国になっているが、旧ラインベイル国の所有だった土地にある第三王女ユディットと護衛騎士ウォルフの墓は、恋愛的なご利益がある観光スポットとして、現在でも恋人達の間で人気となっている。
しかし、いくら悲劇的な死別をしたからといっても、前世のこの記憶を持ったまま来世に生まれ変わったというこの状況は、かなりきついものがある。
しかも記憶がよみがえった切っ掛けが、よりにもよって濃厚なラブシーン真っ最中というあの記憶なのだ。
そして前世で激しく求め合った相手の生まれ変わりが、今目の前で満面の笑みを浮かべて、こちらの様子を窺っているこの状況も全てを知っているリゼルにとっては、非常に気まずい。
そもそもパトリスに前世の記憶があるかどうかは、現状では確認ができない。
同時にリゼルが前世では恋人関係であった主君ユディットの生まれ変わりだと気づいているのかも、非常に気になった。
現状のリゼルは前世のユディットの頃の面影が、ほぼない。
ラインベイル国の第三王女ユディットの姿絵は何枚か残されており、その容姿は透けるようなプラチナブロンドの真っすぐな髪が一番目を引く。それに加え、華奢で小柄な体形も印象的なのだが、意外なことにユディットは胸囲には恵まれていた。
対して現在のリゼルの髪は、ミルクティーのような薄茶色のふわふわヘアーで、身長は前世よりもさらに低い。しかも胸囲はユディットだった頃と違い、残念な結果を叩き出していた。
唯一、前世と同じなのはパトリスの場合と同じ瞳部分だけだ。
だがリゼルの場合、色は前世と同じでも視線の動きや瞳の大きさ、目の釣り上がり加減などは微妙に違っていた。前世のユディットでは、ふわりと微笑むような儚げな印象を感じさせる瞳だったが、現在のリゼルは、天真爛漫で元気いっぱいという印象が強いパッチリとした大きな瞳なのだ。
恐らくこの見た目では、たとえパトリスに前世の記憶があったとしても目の前にいる少女が、秘密の恋人関係であった王女ユディットの生まれ代わりだと気づくのは難しい。むしろ、気づかないでいてほしいと、リゼルは切実に願った。
すると、先程まで満面の笑みでこちらを見ていたパトリスが、リゼルの手元に視線を向けた後、不安そうな表情を浮かべてくる。
「リゼル嬢……。先程からお手が止まっているように見えるのですが、もしや当家が用意した焼き菓子が、お口に合いませんでしたか?」
見捨てられそうな子犬のような表情で、そう確認してきた見合い相手にリゼルが慌ててそれを否定する。
「い、いえ! 大変美味しくいただいております!」
「そうでしたか! それはよかった!」
リゼルの返答にパトリスが、背後で花を咲き誇らせているような雰囲気で破願する。それは前世で無表情が多いと周囲に言われていたウォルフが、唯一ユディットだけに見せていた微笑み方によく似ていた。
その為、リゼルは思わず息をのむ。
「実は本日のタルトは、私が直々に指示を出してパティシエに用意させました」
「まぁ、パトリス様が直々に……。そのようなご配慮をいただき、ありがとうございます」
「いえいえ。実は何故かリゼル嬢が、フルーツがふんだん使われたタルトがお好きなのではというイメージが、ふと頭の中に湧いてきまして……。その瞬間、すぐにパティシエに指示を出し、私が勝手に本日のメニューを変えてしまったので、もしお口に合わなかったらどうしようかと一瞬、焦ってしまいました」
そう言って少々気恥しげなパトリスの表情が、またしても前世でウォルフがよくしていた表情と重なり、リゼルの警戒心を少しだけ和らげる。
すると、何故かパトリスが自信満々という笑みで、ある事を断言してきた。
「リゼル嬢は、特にオレンジのタルトがお好きですよね? ですので、今回はオレンジを多めに盛りつけるようオーダーしました」
その瞬間、オレンジを目掛けてフォークを進めようとしていたリゼルの動きが止まる。
「次にお好きだった果物は、確かイチゴだったかなぁ。あっ、でもベリーのタルトもよく好んで召しあがっていましたよね?」
パトリスのその言葉でリゼルがフォークをタルトが乗った皿の上に取り落とす。すると、カシャーンという金属音が、二人の間でやけにくっきりと響き渡った。
その音は、何故かリゼルに危機的状況だということを訴えてくる。
「あ、あの……わ、わたくし……」
「どうかされましたか? 何やらお顔の色が優れないようですが……」
心配そうにリゼルの顔を覗き込んできたパトリスだが、その際にテーブル越しでちゃっかりリゼルの手の上に自身の手を重ねてきた。ちなみにこれも前世でよくウォルフが行っていた密やかな愛情表現の一つである。
だが、今はそんなことにときめいている場合ではない。
一刻も早く、この場を去るべきだと瞬時に感じたリゼルは、先程の顔色の悪さを理由に撤退を試みる。
「じ、実は先程から少々気分が優れなくて……。大変申し訳ございませんが、本日は早めにお暇をさせていただ――――」
「それはいけない!!」
そう叫んだパトリスは席を立ち、テーブルを周ってリゼルの前で跪く。そしてその姿勢のまま、優しくリゼルの右手を取って顔を覗き込んできた。
「不調に気づかず、申し訳ない。ああ、本当に顔色が真っ青だ……」
「こ、こちらこそ、折角お招きいただきましたのに申し訳ございません。ですので、少々予定より早めに本日はお暇させていただきた――――」
「いけません! このような状態で馬車に乗ってお帰りになるなんて! ますます気分を悪くされてしまいますよ!?」
すると、パトリスは「少々、失礼を」と言い、片方の腕をリゼルの両膝裏に、もう片方の腕をリゼルと椅子の背もたれの間に差し入れ、軽々とリゼルを抱き上げる。
「パ、パトリス様!! い、一体何を!?」
「このような顔色の悪い状態で馬車に乗せるわけにはまいりません……。本日はこのタウンハウスに宿泊し、明日体調が回復されてからお帰りになられたほうがよろしいかと思います」
パトリスの提案にますますリゼルが貞操の危機を抱く。その為、必死で辞退しようとした。
「そ、そんな! 急に泊めていただくなどご迷惑になってしま……」
「ご心配には及びません。当家のタウンハウスの使用人達は、急な来客や宿泊客の対応には慣れております。ですが、見知らぬ人間ばかりの邸に急遽、宿泊されるこの状況はリゼル嬢にとって、不安を感じてしまいますよね……。そうだ! 宿泊時は私の隣の部屋をご用意いたしましょう! もし何か不安なことがあれば、すぐにお声がけください!」
「と、隣ぃ!? い、いえ! そのようなお気遣いは結構です! 通常の客室に……ではなくて! 本日はこのままお暇させていただきたいと思います!」
すると、パトリスが表情を曇らせ、抱きかかえているリゼルの顔を心配そうに覗き込んできた。
「ですが……あなたは馬車などの乗り物は酔いやすい体質でしたよね? 現状ただでさえ気分が優れぬ状態で乗ってしまわれると、ますます体調が悪化してしまいますよ?」
「な、何故そのようなことをパトリス様がご存知なのですか?」
確かに前世ユディットだったリゼルは、馬車酔いをよく起こしていた。
それをさも知っているかのような口ぶりをされ、思わず探りを入れるようにリゼルが聞き返す。
すると、何か含みのあるような満面の笑みを返された。
「何故と言われましても……。何となく、そうではないかと思ったので!」
爽やかにそう言い放ったパトリスの反応から、リゼルは自分が一番懸念していた状況に陥っていることに気づきはじめる。
「あの! 本当に大丈夫なので! 馬車酔いは幼少期にすでに克服しておりますので!」
必死でパトリスに抱えられている状態から抜け出そうと、リゼルがもがきはじめる。しかし、彼女の抵抗とは裏腹にパトリスは、さらに深くリゼルを抱き込み、その耳元に唇を寄せた。
「遠慮なさる必要はございません。私とあなたの仲ではありませんか……ユディット殿下」
そう囁いたパトリスは、ゆっくりと顔を離しながら、前世で散々向けてきた甘さをたっぷり含んだ笑みでリゼルの顔を再び覗き込んできた。その瞬間、記憶を取り戻した切っ掛けとなった例の夢の内容が、リゼルの中で脳内再生される。
「嫌ぁぁぁぁぁー!! 今日はもう帰るぅぅぅぅー!!」
令嬢らしからぬ叫び声をあげた前世王族のリゼルだが、この後パトリスに強引に抱きかかえられ、彼の隣の部屋に運ばれてしまった。
結局この日のリゼルは、シュレイド伯爵家所有のタウンハウスの使用人達から丁重なもてなしを受け、豪華な客室に一泊する。
ちなみにこの時、彼女が懸念していた貞操の危機的状況は一切起こらなかった。
そんな二人が前世の続きを堪能できるようになるのは、リゼルが成人した二年後の挙式後である。
――――――【★オマケエピソード★】――――――
翌日、パトリスに付き添われながらアドワース伯爵邸に帰宅したリゼルと、その状況を目にした兄ディアンの反応。
「うわっ! パトリスが満面の笑みを浮かべている! リゼ! お前一体どんな魔法を使ったんだ!?」
「何をおっしゃっているのですか? お兄様。パトリス様はお会いしてから、常にわたくしに対して、このような気遣い溢れる微笑みでご対応してくださってますよ?」
「嘘だろ!? こいつ、職場だとニコリどころか常に無表情だぞ!?」
「ええっ!?」
「ディアン、君もしかして今すぐ死にたい?」
「すみません。余計なことを口にしました。妹をどうぞよろしくお願いいたします……」
「お兄様っ!? 何故、敬語っ!?」
お手に取っていただき、本当にありがとうございます!
パトリスの性格は、基本前世と変わっておりません。
甘い笑みは対リゼル(対ユディット)限定仕様となります。(笑)