本格ファンタジーって何ですか?
どうも、はんぺんでございます。
今回は『本格ファンタジー』なるモノについて軽く考えてみたいと思います。
ことの発端はいつものTwitter創作界隈における戯れでございました。
何かこう、アレです。
「なろう系があーだこーだ、本格ファンタジーがどーのこーの」
みたいな、アレです。
詳細はよー知りませんけども、まぁ、いつものっぽいです。ええ、いつもの。
なろう系なんかファンタジーじゃねーや。
本格ファンタジーってのはアレでコレでソレであーでこーで、とか。
そういうこと、なんじゃない、かなぁ?
すいません、この辺は自分も細部はよーわからんのです。
何か、Twitter見てたらそんな流れになってたんで、観察しておりました。
しかしまぁ、毎度毎度よくも色んなことを話題にしてやり合えるモンですね。
しかしそれも仕方のないこと。
何せ、一応は私含めて『創作界隈』なワケでございまして。
そりゃあ、自分の内面を言語化し、活字としている有象無象共ですから。
自分の紡ぎ出す言葉、文字、主張、思想なんかにわプライドが宿りますわ。
これはもう、話題がどうこう、正誤がどうこうという話ではない。
何故なら、論を戦わせる者同士、互いに『己の考える真実』に拠っている。
だったら相手の言い分に抗うしかないのでございます。
抗弁、なんて言葉通りに、論戦、なんて言葉通りに、はい。
それが創作者ってヤツです。
厄介にしてめんどくさい、しかしながら、それでこそ創作者とも言えましょう。
でもね、思うんです。
Twitterで喧々諤々やり合うエネルギーがあるなら、何故作品にしないのか。
そういう余剰エネルギーを創作に回せば、ほら、エッセイ一本錬成完了です。
ってなワケで、今回は自分がそれを実践しようと思い立ったワケでございます。
いやぁ、回りくどくてごめんなさい。
それでは、ここから本題です。
今回のお題は『本格ファンタジーとは何ぞや』ということでございます。
これについて、自分が思う結論を真っ先に述べさせていただきます。
Q.『本格ファンタジー』って何ですか?
A.そんなものはない。
以上です。
はい、そうなんです。別にそんなものありゃしないんですよ。
あってたまるかって話です。
いや、あるかな? あるかも? 『ない』よりは『ある』寄りの概念かも?
でもどっかの用語としての『本格ファンタジー』は特にないです。
あ、私が知らないだけかもしれません。
もしもあったらごめんなさい。
私が知らないだけで、世界のどこかには誰しもが認めざるをえない正統性と絶対的な論拠を有した『本格ファンタジー』という一般大衆にも通用する用語があるかもしれないですね。
それこそ『スペースオペラ』、『スチームパンク』、『密室トリックモノ』並の認知度を誇るジャンル用語として確固たる強度の概念を伴った『本格ファンタジー』っていう言葉があるのかもしれません。私は今日までそれを見たことはありませんけど。
あれ、でもどうなんだろう? どうなんでしょうね?
例えば『スペースオペラ』は『宇宙を舞台とした壮大な規模のSF』。
例えば『スチームパンク』は『蒸気機関を軸としたレトロフューチャー世界』。
例えば『密室トリックモノ』は『密室トリックの謎を主眼に置いたミステリ』。
と、はっきりと言語化できるだけのイメージがあるじゃないですか。
では『本格ファンタジー』はどうなんでしょうね。
何かありますか?
少なくとも上記三つに肩を並べるほどの確固たるものは自分の中にはないです。
それが自分の勉強不足と言われれば、それについては返す言葉もございません。
けれども大半の方々はこの辺は自分と同じなのではないでしょうか。
仮に『本格ファンタジーとは何ですか?』という質問をした場合を考えます。
それに対する回答は、十人十色になってしまうんじゃないかなー。って。
いや、漠然としたイメージはあるんです。
本格というくらいなんだから、本格的なファンタジーだろうなー。みたいな。
でもそれって『漠然』なんですよ。
曖昧としていて、はっきりとした輪郭を持たない。そういうモノなんですよ。
フワッフワで実態を持たず、そのクセ『あるかもしれない』と思わせる。
いや~、厄介ですね。
それが存在する可能性をにおわせてる辺り、特に。
さて、上記の質問に対しての返答の一例を考えてみましょう。
それは『全てのファンタジーの祖ともいうべき『指輪物語』のような話だ』と。
そういう返答があったとします。
もうこの時点ですでに『~のような』という部分で曖昧なワケですよ。
こっちはその曖昧な部分を取り除いた定義が欲しいっつってんですけど???
要するに上記は『答えになってない』という話になってしまうのですねー。
もっと突き詰めると『本格って何よ?』って話に行き着くんですよね、これ。
そう、ここです。
この話のキモはまさにここなんです。
人によってはこの『本格』に確かな定義を見出してる人もいるかもしれません。
しかし、不特定多数が納得できるモノでなければ『定義』とは呼べません。
別ジャンルの例を挙げます。
おそらくは『本格』という言葉が最初に使われたジャンル。ミステリです。
まずは大味な解説になることを先に謝ります。
その上で、日本における『本格ミステリ』について語らせていただきます。
日本における『本格ミステリ』は『トリックと謎解きが主眼のミステリ』です。
これはウィキペディア先生がいってるので、大筋では間違いではないでしょう。
本稿では上記を仮に『本格ミステリの定義』とさせていただきます。
さて、ミステリにおいて『本格』という言葉が出てきたのには理由があります。
ただしそれは『今のところ私がそう思っている程度のこと』でしかないです。
でも、筋は通っていると思うのでそのまま語らせていただきます。
ミステリにおいて『本格』という言葉が必要とされた理由。それは何か。
――『社会派ミステリ』の存在です。
江戸川乱歩。
横溝正史。
そういった巨人達が示し続けたミステリの形態とは別の形を持ったミステリ。
それが松本清張を始めとする新時代の巨人達が著した『社会派ミステリ』です。
両者は必ずしも対立するジャンルではありません。
しかし、同じジャンルの中に違う形のものが二つ存在する。
するとそこには必ず派閥が形成され、比較が発生し、対立構造が築かれます。
ミステリにおける『本格ミステリ』は『本格的なミステリ』じゃないんです。
あくまで『社会派ミステリ』登場以前の『古い形のミステリ』のことなんです。
その『古い形のミステリ』を『本格』という言葉で形容しているだけです。
そもそも『社会派ミステリ』だって『本格的なミステリ』ではあるでしょうに。
つまりジャンル名なんですよ、ジャンル名。
それが証拠に、ミステリにはその後、80年代に新たな波が起きます。
それが綾辻行人のデビューに端を発する『新本格』の潮流です。
これは『本格ミステリ』の流れを汲みつつ一線を画した新たな『本格』でした。
で、ここで『新』がついてる時点でわかるでしょう?
ミステリにおける『本格』とは『ジャンル名』の一端をさす言葉なのです。
つまりミステリの『本格』は『社会派』あっての『本格』ということです。
では、別ジャンルではどうでしょうか。
例えばSF、上にも記しましたが『スペースオペラ』と『スチームパンク』。
どちらもSFという大枠に入っていますが、対立はしてないように思います。
いや、私が知らないだけで深い因縁とかあるかもしれませんけど。
あっても私は知らんので本稿では触れようがないんですけど。
次にSFにおける『本格』とは何か。
これは明確にミステリにおける『本格』とは違うと明言していいと思います。
だって『本格SF』なんて言葉、作品の売り文句とかでしか聞いたことないし。
ジャンル名としても『本格SF』なんてジャンルはないですし。
一応『ハードSF』ないし『ハードコアSF』がそれに相当するのかな?
これの対義語として『ソフトSF』があるらしいですね。
ただ、どっちにしろ用語としては一般的ではないかなって思いますね。
SFファンからしたら一般的なんでしょうけどね。
今回は主題がファンタジーなんで、勘弁していただければ幸いでございます。
ちなみに『ハードSF』は相当ガチガチに造り込んだSFを指すらしいですね。
ハードというくらいなんですからねー。
それはもう、白色矮星並みの設定密度が要求されるのでしょう。怖。
でも、そこから見えてくるものもあります。
仮に本格ファンタジーの『本格』とハードSFの『ハード』が同じとします。
そこにあるのは要約すると『排他的なまでのこだわり』です。
硬派で骨太で質実剛健な、まさに『本格』の名が示す通りのものなのでしょう。
でもそれってモロに主観が働く部分なんですよね。
何が『本格』で、どこまでが『ハード』なのか、それこそ十人十色でしょう。
こだわり、なんてものはどこまででもこだわれるモノです。
しかし忘れてはならないのは『結局、それは主観に過ぎない』という点です。
人によって『どこからどこまで』という尺度が違っているんです。
その尺度の違いを考慮せずに『本格』という言葉でまとめてしまったら、ねぇ?
発音は同じ。
意味も同じ。
ただし、その意味に含まれる尺度だけは大違い。
そんなもので一体何を表せられるんですか?
そんなもので一体何を定義づけられるんですか?
ミステリと違ってファンタジーの『本格』には対抗馬となる言葉がありません。
つまり『本格』という言葉だけが独り歩きしている状態なのです。
それなのに声高に『本格ファンタジー』を主張する人がいる。
巷で話題に上がる作品を『本格ファンタジー』の名のもとに見下す者がいる。
特に意味も定まっていない、ただイメージが先行しているだけの単語を用いて。
今日もがんばって物語を執筆している創作者を下に見ている者がいる。
そんな者達に、自分はこう言いたい。
――あなたが使ってる『本格』って単語、差別用語とどう違うんですか?
結局それは、自分の価値観を正当化するための方便でしかないのです。
理論武装にすらなってない、イメージに頼っただけの無様な決めつけです。
それは『自分の考えるファンタジーこそが本物で他は偽物』という宣言です。
剥き出しのエゴを『本格』という言葉で糊塗して繕っているだけなのです。
Q.つまり?
A.負け犬にすらなれない方々の遠吠えにもなれないノイズ。
いや~、この結論を出すまで、長くなりました。
誠に申し訳ごさいませんでした。あと、読んでくれてありがとうございました。
あと『本格ファンタジー』を声高に謳う方々。
今後もがんばって『本格ファンタジー』について訴え続けてください。
それは『あなたにとっての『本格ファンタジー』』でしかないんですけどね!
さ~、自分も自作の執筆がんばるぞ~!